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安静と鎮静のみが唯一の治療法であった1800年代の頃は、バセドウ病の死亡率は5割を越えていました。幸いにも、現在では3つのよい治療方法があります。 |
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プロピールチオウラシル(PTU)やメチマゾール(メルカゾールのこと)などの抗甲状腺剤はヨードを原料として甲状腺ホルモンを作るのを阻害する作用をもっています。結果として甲状腺ホルモンの生産は減少します。これらの薬は、甲状腺機能亢進症の症状をすばやく改善したいとき、甲状腺機能亢進症の症状の軽いとき、又は子供や若者などに使います。又、甲状腺機能亢進症がひどいとき、心臓の症状が悪化する可能性のある狭心症や不整脈をもつ年配患者では、抗甲状腺剤の一時的な治療は特に有用です。12ヶ月から18ヶ月間の抗甲状腺剤による治療で、20〜30%の患者で永続的な寛解がみられます。治療の初期に病気の程度が軽い人ほど、クスリで治りやすい。抗甲状腺剤を服用中患者の約5%で、アレルギー反応を起こします。普通みられる軽い副作用は、蕁麻疹、そして、時に発熱や関節痛です。最も重篤な副作用は、白血球の一種の好中球が減少することです。好中球が減ると抵抗力が低下し、細菌などに感染しやすくなることです。大変まれですが、白血球が完全に消失するかもしれません。もし重大な感染が起これば、極めて重篤で命に関わるような問題になります。この状態を無顆粒球症を言います。もし、あなたがそれらのクスリをのんでいて、喉が痛くなったら、直ちにクスリを止めなければいけません。そしてその日のうちに直ちに白血球の数を調べてもらいなさい。たとえ、クスリのために白血球が低下したとしても、直ちにクスリを止めれば白血球は正常に戻るでしょう。しかし、白血球の数が低いにもかかわらずそのクスリを飲み続けたら、より重篤な生命に危険を及ぼす感染症になる可能性があります。 |
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ほとんどの患者では抗甲状腺剤では治りにくいので、今日では多くの患者は放射性ヨード治療を受けます。この治療法に使用される放射性ヨードは小さなカプセルの形としてや、水に混ぜて飲みます。数時間で、放射性ヨードは胃から血液中へと入り、甲状腺細胞を破壊するのに十分な時間、甲状腺のなかにとどまります。それから数日で、尿中に排出されますが、放射能の半減期により非放射性の状態へと変化し、体の中から出ていきます。多くの患者は3〜6ヶ月後には良くなりますが、アイソトープの投与量が少ないと甲状腺機能亢進症は治りません。甲状腺機能亢進症が治らない患者は2回から3回の放射性ヨード治療を受けることもあります。患者の大半は、放射線治療後甲状腺機能低下症に陥ります。甲状腺機能低下症に対しては、甲状腺ホルモン剤をのむことで容易に治療することができます。
放射性ヨードは、1940年以来甲状腺機能亢進症の患者を治療するのに使われています。放射性ヨードが身体の中で他の細胞に損傷を与え、腫瘍ができたり、長期間の望ましくない効果がでるのないかとの心配のために最初、放射線治療を行った内科医は注意深く成人のみ治療し、彼らのその後の人生を注意深くフォローしました。運良く約50年間、患者をフォローしても放射線治療から危険な合併症はでてきていません。結果として、アメリカでは成人の甲状腺機能亢進症も70%以上がこの方法で治療されています。さらに今では子供も放射線治療を受けることが多くなってきています。これらの患者でさえもほとんどが、合併症を起こしません。 |
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バセドウ病は甲状腺の大部分を手術により切り取れば永久に治すことができます。バセドウ病をまず、以下に述べる如く抗甲状腺剤か、ベータ遮断剤でコントロールしないで手術することは危険です。プロピルチオウラジル(PTU:日本では商品名をチウラジールまたはプロパジールといいます)、タパゾール(日本ではメルカゾールといいます)で治療すると甲状腺ホルモン値は約6週間以内に正常へ低下し、手術前は、体調はほとんど正常な状態に戻ります。
通常、手術前に内科医は、ヨード剤(ルゴールといいます)を液として数滴投与するでしょう。この特別なヨードを与えることによって外科医は手術をより安全に行えます。
一旦、甲状腺を取り除くと、甲状腺ホルモンを作り出す量が減るために甲状腺の働きは正常になるでしょう。しかし、切除する量が多すぎると甲状腺機能低下症になることもあります。バセドウ病の放射性ヨード治療後と同じように、手術後も甲状腺機能低下症に陥ったとしても、甲状腺ホルモン剤をのんで健康状態を正常に取り戻すことができます。 |
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上記に述べたバセドウ病治療のどれを選んだとしても、その治療に加えて内科医は、アテノール(テノーミン)、ナドロール、メトプロロールか、プロプラノール(インデラール)などのベータ遮断剤を処方することがあります。これらのベータ遮断剤は身体の組織に対する血中甲状腺ホルモンの働きを弱めて、脈拍をゆっくりにし、イライラも軽減させます。これらのクスリは、上記の3つの治療が効いてくるまでの間、自覚症状を軽減するのに非常に役立つかもしれません。喘息や心不全をもつ患者では、これらのクスリは喘息や心不全の症状を悪くするので使用してはいけません。また、インスリン使用中の糖尿病患者では、ベータ遮断剤使用中の場合、低血糖の自覚症状が分かりにくくなることがありますので注意を要します。 |