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甲状腺機能亢進症は、老人ではありふれた病気です。多くの場合、症状は典型的なもので、神経質になったり、動悸が早くなったり、発汗、震え、体重減少などが起こります。しかし、老人の甲状腺機能亢進症でいちばん目立つ特徴は、患者にあまり症状が出ないということです。甲状腺が大きくなっていなかったり、神経質になったり、または暑さに弱くなったことを訴えないことが多いのです。また、食欲があるのにやせてくるといった普通の病像ではなく、むしろ老人では食べ物に対する欲求が薄れるため、体重が減少してくるというのがごく普通なのです。実際、甲状腺機能亢進症を持つ老人の多くが、正しい診断が下される前に鬱病または癌と見られているのです。
したがって、老人では、現れている特徴が、若い人に普通見られる所見と一致しないことがあるため、甲状腺機能亢進症が簡単に見逃されてしまうことがあるのです。医師は、情動性の病気であるように見える人だけでなく、息切れや心悸亢進、神経質、衰弱、食欲がなくなるなどの多彩な症状を訴える患者においては、甲状腺機能亢進症の可能性があることを考慮しなければなりません。幸いに、甲状腺機能亢進症のために問題が起きている患者は、簡単で安い血液検査を使って大体見分けることができます。 |
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