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甲状腺ブルース【Thyroid Blues】

01:ベイビーブルース…甲状腺疾患と産後うつ病

最初の子供ジュリーを出産した後のクリスチーンの喜びは、言葉で言い表せないほどでした。彼女は、彼女の母親が子供を持って初めて“完全になるのよ”と言っていたことの意味をついに理解したのです。
彼女は家で過ごした最初の2〜3週間は幸せな気分で満たされていました。クリスチーンは母親であることが大好きでしたし、友達が訪ねてくる時はいつも顔に消えることのない笑みをたたえていたのです。その後、彼女が家に戻って1ヶ月程経ってから、クリスチンのあの言い表せないほどの喜びが言うに言えないほどの悲しみに変わってしまったのです。これは産後のうつ病でしょうか。
彼女は友達の何人かが産後うつ病について話すのを聞いたことがあり、そういうことが起こりうるということは知っていました。しかし、彼女はそれがこれほどひどいものだとは知らなかったのです。うつ病とともに、彼女は疲労や気分のむら、食欲の低下そして不眠を経験しました。
どのようにして最初の子を持つというような素晴らしいことが、彼女をそれほどひどい気分にさせることができたのでしょうか。彼女は何か間違ったことをして自分でこのように感じるようになったのでしょうか。
以下の事実が分かっています。
  1. 新しく母親になった女性全体の20%が妊娠の後に産後うつ病を経験します。“ベイビーブルース”
  2. 新しく母親になった女性の70%は、本格的な産後うつ病にはならずに、何らかの形のうつ状態を経験します。
  3. 5から8%の女性は産後に“甲状腺炎”として知られている一時的な甲状腺の炎症を経験します。
  4. 産後期に甲状腺の問題を生じる女性の約25%で、この状態が永久に続くようになります。
  5. 産後うつ病になったことのある女性は、その後の妊娠でもう一度産後に同じ症状が出る確率が50%あります。
産後ブルース(産後うつ状態)のある女性は甲状腺疾患がないことを確かめるために、グラス1杯の水と鏡を使って甲状腺と頚部のチェックを行うことをお勧めします。
気分の悪い日々、眠れない夜、何の値打もない感じ、そして“ブルース”、これらはただ新しい母親であることの一部に過ぎないのでしょうか。多くの女性は、クリスチーンのようにそう思っています。そして黙って耐え続けているのです。うつ状態になった女性は、産後うつ病と診断されるのが普通です。しかし、大抵の場合新しい母親は医者に自分達のうっとうしい気分をうまく伝えることができません。
実際、赤ん坊が生まれた後、数ヶ月してもまだ悲しい気分のままの新しい母親の多くは、ありふれてはいてもめったに診断されることのない、産後甲状腺炎(特に慢性甲状腺炎または炎症を起こした甲状腺)として知られている甲状腺疾患にかかっている可能性があります。この状態は赤ん坊が生まれた後最初の数週間<注釈:普通2〜3ヶ月後>に起こるのが普通で、1年程続くことがあります。この状態にある女性では、甲状腺が異常に大きくなり、うつ状態に苦しんでいる可能性があります。
甲状腺炎にかかっている女性は、体の中の甲状腺ホルモンのレベルと直接比例した、感情の浮き沈みを経験することがあります。最初、甲状腺は血液中に甲状腺内に貯えていたホルモンを放出し、甲状腺機能亢進症(活動の活発すぎる甲状腺)を引き起こすことがあります。この間、女性は動悸や不眠、不安またはうつ状態に苦しむことになります。2〜3ヶ月後に、血液中の甲状腺ホルモンレベルは正常に戻るか、低くなる(不活発な甲状腺<注釈:これを甲状腺機能低下症といいます>)かのどちらかになります。これは甲状腺が十分な量の甲状腺ホルモンを放出できなくなるために起こります。このために女性は衰弱感や疲労感、寒気そして忘れっぽさを感じるようになることがあります。また、生活に興味を失い、うつ状態になることもあります。
甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能が完全に回復するまで、長くて1年程続く続くことがありますが、ほとんどの女性では最終的に甲状腺の機能は正常に戻ります。しかし、この期間中に診断されていない甲状腺疾患とうつ病がある女性では、甲状腺ホルモンを補う治療を受けた人に比べ、回復が困難になる可能性があります。さらに、甲状腺の正常な機能が戻らない女性が最大で25%います。
産後に“憂うつ(ブルース)”状態にある女性のすべてに、欝病様症状の原因となる甲状腺疾患が見つかるわけではありません。これを確かめるために、女性はグラス1杯の水と鏡を使って行うことができる、甲状腺と頚部のチェックを行うことをお勧めします。この検査で、甲状腺の病気があることを示す甲状腺の肥大を見分けやすくなります。
頚部をチェックした後に肥大した甲状腺が見つかった女性は、医師の診察を受けなければなりません。大抵の場合、医師は甲状腺疾患の可能性を除外するために、TSH(甲状腺刺激ホルモン)のテストを行います。
甲状腺疾患に対する簡単な投薬で、“嘆きのブルースレディー”から“幸せな日々がまたここに”という具合に調子を変えることができるのです。
クリスチーンは、彼女が経験していた感情をついに医師に話しました。彼女の主治医はTSH(甲状腺刺激ホルモン)テストを行い、クリスチーンが甲状腺機能低下症、または不活発な甲状腺になっていることがわかりました。クリスチーンは彼女の症状に合わせた甲状腺の投薬を受け、2〜3週間の内に、“驚くほど”気分がよくなったのです。
1年後、クリスチーンはほぼ1日中1歳のジュリーの世話で忙しいながらも、正常で活発な生活を送っています。

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