62歳になってベティーはついに自分が年を取ったということを認めました。何年もの間、彼女は非常に活動的な生活を送ってきました。ほとんど毎週のように週末はテニスをし、娘や孫と公園へ長い散歩を楽しみ、夫のジョンの面倒を33年間みてきたのです。しかし、最近になって疲労や食欲不振をおぼえるようになりました。また、電話番号のような簡単なことも思い出せなくなり、実際に彼女自身の記念日も忘れてしまったのです。このようなことはいつもジョンに起こることで、彼女にはなかったことなのです。ダンスやテニス、長い散歩など、今まで楽しんでいた趣味の多くに、彼女は興味を失ってしまいました。
友達はみんな、ようく考えてみなさいよ。年をとったためというだけなのよと言います。友達がいったことは本当に違いないと思いました。いつかこんな時が来るだろうということはわかっていたのですが、こんなに早くそうなるとは思ってもいなかったのです。彼女は、最近感じるようになった気分のむらや疲労感が嫌でたまりませんでした。しかし、これが、年をとるということなんだと思いました。 |
以下の事実が分かっています。 |
- 65歳以上の女性の5人に1人は血液中のTSH(甲状腺刺激ホルモン)レベルが正常値を超えており、これは甲状腺機能低下症、または不活発な甲状腺と呼ばれるものです。
- 60歳以上の女性の約17%と男性の約8%、すなわち女性570万人と男性270万人には甲状腺機能低下症の徴候があり、その内半数は診断が下されていません。
- アメリカでは、高齢者(60歳以上の人)の20%から25%は欝病を含む、精神病の症状を呈します。
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甲状腺疾患の発生率は、年齢が進むにつれ急速に増加し、もし治療されないままであれば、重大な合併症が起こる可能性があります。甲状腺疾患を除外するため、高齢者は鏡とグラス1杯の水を使って行うことができる、簡単な自己検査である甲状腺と頚部のチェックをなさるようお勧めします。 |
一部の高齢者にとっては、人生の黄金期が期待通りのものでなく、今日が何曜日か忘れたり、今日が何曜日かなどはどうでもよい程“ブルース(憂うつ)”になったりするのです。ほとんどのお年寄りは、このような気持ちと食欲が落ちたり、疲労感、不眠などは自然な老化の過程の一部だと思っています。これらの症状を医師に訴えるお年寄りは、欝病または軽い痴呆症などと診断されることがしばしばで、ほとんどの人が実は甲状腺機能低下症、または不活発な甲状腺が根底にあることに気付いていません。甲状腺機能低下症と欝病の症状は、かなりの部分重なり合っており、また特に高齢者では2つの病気が一緒に起こっていることが多いのです。残念ながら、老人の甲状腺疾患は徐々に発症するため、診断が難しいことがあります。また、アメリカでは高齢者の多くが別の健康問題を話さなければならないことを恐れて、医師とこれらの症状についてオープンに語り合うことがありません。
欝病に加え、高齢者の甲状腺疾患の症状は老化の症状とそっくりなことが多いのです。甲状腺機能低下症(不活発な甲状腺)と甲状腺機能亢進症(活発すぎる甲状腺)のどちらであっても、患者は錯乱や鬱病、歩行障害、心不全、腸の運動の変化、意欲がわかないなどの症状に遭遇します。これらの症状は、他の病気に普通に見られるものであるため、甲状腺疾患の可能性が見逃されてしまうことが多いのです。
甲状腺疾患の発生率は、年齢が進むにつれ急速に増加し、もし治療されないままであれば、重大な合併症が起こる可能性があります。検知されない、または診断の下されていない甲状腺疾患により、心機能の異常やコレステロールレベルの上昇、骨粗鬆症などが生じる可能性があります。甲状腺疾患を除外するため、高齢者は鏡とグラス1杯の水を使って行うことができる、簡単な自己検査である甲状腺と頚部のチェックをなさるようお勧めします。このテストは甲状腺疾患の可能性を示唆する肥大した甲状腺を見分けるためのものです。頚部のチェックで、肥大した甲状腺が見つかった高齢者は、医師の診察を受けなければなりません。医師は、まず甲状腺疾患の可能性を退けるため、TSH(甲状腺刺激ホルモン)のテストを行うはずです。一度診断がつけば、高齢者の甲状腺疾患の治療は簡単です。甲状腺疾患の治療で、お年寄りの“ブルース(憂うつ)”を吹き飛ばすことができるでしょう。 |
ベティーは、年1回の健康診断の時に、いつもの自分とは感じが違うことを医師に告げました。彼女の主治医は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)のテストを行い、彼女が甲状腺機能低下症、または不活発な甲状腺にかかっていることが分かりました。ベティーは、これらの症状の多くが年のせいではないことを知り、嬉しさに震えました。甲状腺ホルモンを補う投薬を受けた後、ベティーはすぐテニスコートに戻り、夫のジョンを相手にに連勝を続けています。 |