39歳で、アイリーンは今日の活動的な働く母親の典型でありました。彼女は、いつも非常に忙しくしており、元気いっぱいの3人の子供と夫、そして郊外の大きな家の面倒をみながら広告会社の管理職として週に50時間以上働いていました。アイリーンは、いつも仕事と家庭の両立という困難なことに真っ向から取り組んでいました。彼女の生活の何もかもが完全であるように見える一方で、彼女は徐々に身体的感情的な落ち込みに気付き始めました。同じだけ睡眠をとり、仕事の量も変わらないのに、疲れて眠くてたまらなくなることが多くなり、体重も増えてきたように見えました。また、はっきりした理由もないのに気分の移り変わりが激しくなりました。でも、いちばんアイリーンを悩ませたのは、いつになく憂うつで、物事をはっきり考えることができなくなったことでした。アイリーンはこれらの症状の多くは、彼女が中年にさしかかり、更年期に向かっているためだろうと思っていました。アイリーンは、“何でもできる多才”な魅力たっぷりの女性でした。そのため、彼女は気分のむらは年齢による容貌の衰えと変化に付いていけないことへの欲求不満から来るのだと思いました。“たぶん、ちょっとした中年期の変わり目にはいったのよ”と彼女は考えました。 |
以下の事実が分かっています。 |
- 新しく母親になった女性全体の20%が妊娠の後に産後うつ病を経験します。“ベイビーブルース”
- 新しく母親になった女性の70%は、本格的な産後うつ病にはならずに、何らかの形のうつ状態を経験します。
- 5から8%の女性は産後に“甲状腺炎”として知られている一時的な甲状腺の炎症を経験します。
- 産後期に甲状腺の問題を生じる女性の約25%で、この状態が永久に続くようになります。
- 産後うつ病になったことのある女性は、その後の妊娠でもう一度産後に同じ症状が出る確率が50%あります。
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もちろん“ブルース(憂うつ)”になったり、ここに述べたような症状がある更年期間近な女性すべてに甲状腺機能低下症があるわけではありません。これを確かめるために、女性はグラス1杯の水と鏡を使って行うことができる
簡単な自己検査である甲状腺と頚部のチェックを行うことをお勧めします。 |
中年になるということは、自分の美しさと若さを保つだけでなく、社会からよい母親や成功したキャリアウーマンであることを求められる90年代の女性にとっては特につらいものです。皺や白髪から更年期の襲来まで、老化のプロセスを目で見、感じることで女性は“ブルース(憂うつ)”な状態になります。さらに、女性の多くは疲労や忘れっぽさ、体重の増加などを含む老化のためと思われる症状を経験します。しかし、幸いなことにこれらの物憂い気分のどれもが、本当の欝病のためではなく、不活発な甲状腺、つまり甲状腺機能低下症と呼ばれる病気に原因がある可能性があるのです。
甲状腺疾患、特に甲状腺機能低下症は女性に非常にありふれた病気です。最近1,000人の女性を対象に行われた研究では、7.5%に甲状腺ホルモンレベル(超高感度甲状腺刺激ホルモン(TSH)テストを通じて測定)の上昇が見られました。年を取るにつれて甲状腺の機能不全のリスクが高まるため、中年にさしかかった女性は自分がその犠牲者になるかもしれないということを知っておくべきです。ほとんどの医師がTSHレベルの上昇は、甲状腺機能不全の早期徴候であると信じています。これは、軽度の甲状腺機能不全のある人の20%が4年以内にさらに重篤な甲状腺機能不全症に進むためです。
中年にさしかかった女性の多くが、著しい身体的、感情的変化を経験し始めるため、自分達の症状が体の代謝を制御し、心拍数やコレステロールレベル、体重、エネルギーのレベルや月経周期に影響を与えている甲状腺に問題があることに気が付かないことが多いのです。これらの症状は、クライアントの期限に間に合わなかったとか娘のサッカーの試合を見そこなったとかいうような働く女性の日常的なストレスとは関わりがなく、夫に対するいわれのない怒りや、いつもの3マイルの道を走ることができないといったこととは違う理由があると思われます。
もちろん“ブルース(憂うつ)”になったり、ここに述べたような症状がある更年期間近な女性すべてに甲状腺機能低下症があるわけではありません。これを確かめるために、女性はグラス1杯の水と鏡を使って行うことができる
簡単な自己検査である甲状腺と頚部のチェックを行うことをお勧めします。もし“ブルース(憂うつ)”を感じ、間違いなく甲状腺が大きくなっていると思う女性は、医師の診察を受けるべきです。医師は大抵の場合、まず甲状腺疾患の可能性を退けるため、簡単で感度の高いTSH(甲状腺刺激ホルモン)テストを行います。さらに、診断が簡単につくため、不活発な甲状腺は1日に1〜2錠の薬を飲むだけのごく簡単な治療ですみます。一度診断がつけば、甲状腺疾患があり、無用のブルース(憂うつ)に悩む女性は、もと通りの生活に戻ることができるのです。 |
体と精神の変化に対する理由が何かあるのではないかと思い、アイリーンは主治医にすべてを話し、TSHテストを頼みました。そして、彼女は不活発な甲状腺になっていたことがわかったのです。アイリーンは体内から失われた甲状腺ホルモンを補うため、1日にレボサイロキシンナトリウム錠<注釈:チラージンSのこと>を1錠飲むように勧められ、また体の中のTSHレベルが正常な範囲に止まっているかを確認するため、半年毎に来院するように言われました。まもなく、彼女は昔の自分を取り戻したように感じ、成功したキャリアウーマン、幸せな妻、そしてエネルギッシュな母親の役目を担っています。 |