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甲状腺ブルース【Thyroid Blues】

05:甲状腺ブルース<新聞掲載版>
“ブルース(憂うつ)”状態にある何百万という人は、本当は甲状腺の病気にかかっている可能性がある。
Ryan Peal
kerry Daly

アメリカ臨床内分泌病専門医協会は、アメリカ人の甲状腺と頚部のチェック実施を推進
ニューヨーク、NY−1998年1月13日−アメリカ臨床内分泌病専門医協会(AACE)によると、説明できない感情の揺れ動きがあったり、空しさや悲しさを感じたり、またはただ何もかもどうでもよいと思うようなアメリカ人が何百万人もいますが、そのような人は頭ではなく、むしろ頚部のチェックを受ける必要があるのではないかということです。よく“ブルース(憂うつ)”と言われるこれらのうつ病様症状は、ストレスや老化、またはペースの速いライフスタイルによるものだとして片づけられることがしばしばですが、実は、首にある小さなチョウチョの形をした甲状腺に関係した徴候である可能性があります。それでも、AACEが今日新しく発表した研究では、過去2年間にそのようなうつ病様症状を経験した人の5人に1人しか甲状腺の検査を受けていないということが明らかになりました。全く医師の診察を受けていない人もたくさんいる一方で、その他の人は、問題はすべて頭の中にあるという判断のもとで、抗うつ剤が処方されています。甲状腺疾患が検知されず、また治療されないままになっていると、慢性的な合併症を起こすことがあります。甲状腺疾患により、結果的に心臓病につながるコレステロールレベルの上昇や不妊につながる生理不順が起こることがあります。
「人々は甲状腺疾患の症状をすぐに見逃してしまい、本当は異常な生理学的問題である何かに対して自分自身を咎めることが当たり前のようになってしまっています」とAACEの会長であるJack Baskin、M.D.,F.A.C.E.は言っています。
「ティーンエイジャーから出産後の女性や更年期前後の女性、また老人まで多くの人がブルースになっています。多くのケースでは、そのような気持ちが、甲状腺の病気によって引き起こされる体の中の正常な甲状腺ホルモンレベルの変化によるものであり、それは診断し、治療ができるものなのです」とDr. Baskinは説明しています。
甲状腺は甲状腺ホルモンを産生し、そのホルモンは体の代謝(体が栄養からエネルギーを生み出す速度)を制御します。比較的小さい臓器ながら、甲状腺は心臓や脳、肝臓、腎臓そして皮膚などの体の重要な多くの臓器の機能に影響を及ぼしています。甲状腺ホルモンは、また筋肉の強さや生殖機能、食欲などにも作用します。1,300万人以上のアメリカ人が甲状腺疾患罹っており、半分以上の人はそのことに気が付いていません。

ブルースが襲来する時
甲状腺疾患は年齢に関わりなく起こります。妊娠後に約10人に1人の女性が、産後甲状腺炎と呼ばれる病気を起こし、短期的な甲状腺機能の変化に悩まされることになります。産後の女性がうつ状態になると、産後うつ病と診断されるのが普通ですが、甲状腺疾患(特に慢性甲状腺炎または炎症を起こした甲状腺)にかかっている可能性もあり、それ自身は産後甲状腺炎として現れ、甲状腺機能低下症(不活発な状態)または甲状腺機能亢進症(活発すぎる状態)のどちらかを引き起こすことにより、うつ病が起きることがあるのです。これらのケースでは、治療の必要があるのはうつ病の方ではなく、甲状腺なのです。心理的影響を与える潜在疾患があり、それがうつ病を起こしていることがよくあるということを知っていれば、うつ病の治療はもっと簡単になります。
うつ病は、中年の女性ではありふれた出来事です。感情の揺れや疲労、不眠そして、なんとなく意欲や希望がもてなくなるというようなことを経験することがあります。しかし、これらの症状は甲状腺疾患の主要症状でもあるのです。多くの女性は、活動的なライフスタイルや年齢がこのような症状を招いたと思っています。実際は、甲状腺疾患、いわゆる甲状腺機能低下症、または不活発な甲状腺を起こす慢性甲状腺炎がうつ病の原因である可能性があります。
甲状腺疾患の発症は年齢が進むにつれて劇的に増加します。人生のこの段階で現れるうつ病様の症状(エネルギーの減退、睡眠パターンの変化、錯乱)は一般的に老化の過程の一部と考えられています。しかし、これらの症状の多くは、まだ診断されていない甲状腺疾患がある可能性をも指しているのです。事実、研究では60歳以上のアメリカ人の10%以上に甲状腺疾患があるということが見出されています。
わたしは、自分が自分でないように感じますし、物事に集中したり記憶することがとても難しくてと、52歳のJudith Campbellは言いました。主治医がわたしの問題は実は甲状腺が原因なんだよと言われたときにはびっくりしたけど、医者が甲状腺の治療を始めてから、ここ何年もなかったほど気分がよくなったのよ。甲状腺の症状はうつ病と混同されることが多いので、一部の患者に対しては症状を軽くするために抗うつ剤が処方されている可能性があります。実際に、AACEの研究では、これらの症状を経験した患者の3人に1人が医師の診察を受けており、抗うつ剤の投与が行われていますが、その時点で甲状腺の検査は行われていないことがわかっています。

AACEは、アメリカ人の甲状腺と頚部のチェック自己検査の実施を推進しています
AACEはこれらのうつ病様症状を経験していると思われる患者に甲状腺と頚部のチェックと呼ばれる簡単な自己検査を行うことを勧めています。頚部チェックを行うには、鏡の前に立って、グラス1杯の水を飲み、その間に大きくなった、または不整な形をした甲状腺があるかどうかを観察します。AACEでは、この簡単な自己検査法のやり方をステップ毎に説明したパンレットを用意しています。頚部チェックは、内分泌病専門医によるさらに詳しい検査やテストが必要な大きくなった甲状腺、または甲状腺結節を見分ける重要な最初のステップです。
自己検査で、大きくなった甲状腺、または甲状腺結節が見つかった場合は、数種類の甲状腺疾患の内のどれかになっている可能性があります。一番多い甲状腺疾患は、不活発な甲状腺、または甲状腺機能低下症を起こす慢性甲状腺炎です。これは甲状腺が十分なホルモンを作り出すことができないために起こるものです。それより頻度は少なくなりますが、甲状腺が必要以上のホルモンを作り出すと、活発すぎる甲状腺、または甲状腺機能亢進症が起こります。また、それ以外に甲状腺ホルモンに代わる薬を飲み過ぎている人もおり、そのような場合も甲状腺機能亢進症になり、うつ病を引き起こす可能性があります。適切な治療を受ければ、甲状腺疾患のある患者は正常で、活動的な生活を送ることができるのです。
「患者の気持ちを医師が解釈することに基づいて分析されることが多いうつ病の症状とは異なり、甲状腺疾患は簡単なTSH(甲状腺刺激ホルモン)テストを使って容易に診断をつけることができます。感受性の高いTSHテストにより、医師はごく軽い甲状腺機能の異常でも検知することができ、その異常がうつ病に普通に見られる症状の原因である可能性があります」と元AACE会長のStanley Feld, M.D.,F.A.C.E.は述べています。

1月、甲状腺啓蒙月間
今月、AACEは甲状腺疾患の症状に関して、医師と患者の双方の教育のための新しい公的教育に着手しました。この“甲状腺ブルース”のキャンペーンは、潜在的な甲状腺疾患の存在を示唆している可能性があるのに、うつ病や日常的なストレスによるものとして片づけられる可能性がある症状への知識を高めることを意図しています。アメリカ臨床内分泌病専門医協(AACE)は、我が国最大の臨床内分泌病専門医の専門的組織です。メンバーは、内分泌障害を持つ患者の治療の改善に臨床現場で打ち込んでいる2,700名の臨床内分泌病専門医からなっております。協会の使命は、一般の内分泌疾患への知識を高め、それらの疾患を治療する臨床内分泌病専門医の価値を高めることにあります。AACEに関する詳しい情報は、“甲状腺頚部チェック”のコピーも含め、協会のウェブサイト、http://www.aace.com/で入手することができます。

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