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抗甲状腺剤は普通に処方されます。これには2つあります。プロピルチオウラシル(PTUというニックネームが付いています<注釈:日本ではプロパジールまたはチウラジール>)とメチマゾール(商標名はタパゾールです<注釈:日本ではメルカゾール>)です。これらの薬は甲状腺が甲状腺ホルモンを作る能力を阻害します。数週間から2〜3ヶ月後に、血液中の甲状腺ホルモンレベルは減少して正常に向かいます。反応のスピードは数々のファクターによって決まりますが、それには薬の量、甲状腺の病気の程度、および甲状腺のサイズなどが含まれます。抗甲状腺剤はほとんど必ずと言ってよいほど効果があり、耐容性がよいのが普通ですが、約5%の人に皮膚の発疹やかゆみ、関節痛、発熱などの副作用がでます。
もっと深刻な問題は、血液中の白血球数が下がることです。これは直ちに診断と治療が行わなれなければ重篤な、あるいは生命を脅かすことさえある感染症を引き起こすことがあります。幸いに、この問題は抗甲状腺剤を飲んでいる人の400〜500人に1人の割合でしか起こりません。
その他のまれな副作用には、重篤な肝臓障害と味覚障害があります。副作用は抗甲状腺剤を使う際の大きな欠点ではありません。主な問題はこの薬では普通病気が治らないということです。薬を止めると、患者は数週間から数ヶ月の間に再び甲状腺機能亢進症になるのが普通です。“寛解”する患者もおりますが、そのような人は少数です(50%以下)。抗甲状腺剤を飲んだ後に寛解する“幸運”な人の1人になる確率は、甲状腺の活動し過ぎの程度が始めから軽度で、甲状腺の肥大がほんのわずかである場合に一番高くなります。1991年に、日本での研究で抗甲状腺剤を甲状腺ホルモン(サイロキシン<注釈:日本ではチラージンS>)と併用すると、寛解の確率が高くなることが示唆されていましたが、これはその後の研究では実証されていません。
一般的に、抗甲状腺剤は12〜24ヶ月間投与され、その後寛解が起こったかどうか見るため、中止するか、あるいは次第に量を減らしていきます。患者は数ヶ月毎に甲状腺の血液検査を受けて甲状腺の機能のチェックが行われます。“寛解”は抗甲状腺剤を中止してから1年後に正常な甲状腺機能が保たれているものと定義されています。再発が起きたら、患者は抗甲状腺剤をもう12〜24ヶ月飲むこともできますし、他の治療法のうちどれか一つを選ぶこともできます。 |
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