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血液中にある甲状腺ホルモンが多すぎる時に甲状腺機能亢進症が起こります。これは普通、甲状腺または甲状腺結節が過剰な甲状腺ホルモンを分泌するために起こります。びまん性の甲状腺肥大と甲状腺ホルモンの作り過ぎがある患者はバセドウ病です。また、1個またはそれ以上の過剰な甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺結節のある患者は、単発性中毒性結節または中毒性多結節性甲状腺腫(プランマー病)です。バセドウ病は目が突き出す(眼球突出症)など他の病気も伴うことが多く、一方プランマー病は甲状腺以外の体のどこかに別の問題を伴うことは普通ありません。
平均的なバセドウ病患者に対しては、現在のところ放射性ヨード治療がいちばん多く勧められている治療法です。放射性ヨードは通常、無色の液体か、カプセルの形で経口投与されます。消化管で吸収された後に血液の流れに入り、甲状腺細胞内に集積します。甲状腺内に入った後で、“ベータ放射線”と呼ばれるタイプの放射線を発して細胞を破壊します。放射性ヨードは何日か、または何週間かの間にわたって尿中に排泄されます。
何週間か何ヶ月かの内に、甲状腺細胞は破壊され、6から12週間以内にほとんどの患者は正常になるか(甲状腺機能正常状態)、または甲状腺機能低下症になり、甲状腺機能亢進症の症状は消失します。
治療の結果は投与された線量によって異なります。例えば、高線量の放射性ヨードを投与された患者は低線量の放射性ヨードを投与された患者より早く正常または甲状腺機能低下症になります。一般的に、約20%の患者で2度目の放射性ヨードの投与が必要となり、少数の人(5%)でさらに治療が必要になります。
放射性ヨード治療のいちばん多い副作用は、甲状腺機能低下症です。非常に多くの甲状腺細胞が破壊されたり、損傷を受けるため、甲状腺がもはや十分な甲状腺ホルモンを作れなくなるのです。少なくとも50%の患者が治療後1年以内に甲状腺機能低下症を生じてきます。その後は毎年3%ずつの患者が新たに甲状腺機能低下症になります。10年経つまでに80%以上の患者が甲状腺機能低下症になります。
バセドウ病の放射性ヨードで急性の合併症が起こることはまれです。時に、患者が甲状腺の炎症(甲状腺炎)または頚部の軽い痛みや圧痛を生じることがあります<注釈:米国の場合は投与量が多く、最初から甲状腺機能低下症を狙って投与します。そのため、甲状腺機能低下症が多いのです。日本では、放射性ヨード治療10年後で大体50%が甲状腺機能低下症に陥ります。しかし、甲状腺ホルモン剤を飲めば、心配はありません>。
バセドウ病患者に投与される放射性ヨードの線量では、癌を生じるリスクが増加することはありません。また、放射性ヨードのために女性の不妊症が起きたり、放射性ヨード治療を受けた後に妊娠した場合、奇形児が生まれるようなことはありません。ある大規模な研究では、放射性ヨード治療を受けた患者に良性の甲状腺結節が生じる頻度が高いことが見出されましたが、これは他の研究ではまだ確認されておりません。
機能し過ぎの単発性、または多発性結節(中毒性結節性甲状腺腫)は、甲状腺機能亢進症の原因としてはもっとまれなものです。機能している結節のある患者は、バセドウ病患者より年齢が高いのが普通です。中毒性結節性甲状腺腫の患者は、結節に取り込まれる放射性ヨードの量がバセドウ病患者の場合より低いので、治療がうまく行くためにはより高い線量の放射性ヨードを投与する必要があります。
放射性ヨード治療は甲状腺機能亢進症がある妊婦すべてに禁忌となっております。
有害であるという証拠はほとんどないのですが、甲状腺機能亢進症の子供には放射性ヨードで治療することは普通ありません。ほとんどの子供は抗甲状腺剤で治療を受けます。甲状腺亜全摘または全摘も効果のある治療法です。
バセドウ病患者に対しては、患者の意向や甲状腺のサイズ、併存する甲状腺疾患、熟練した専門の外科医がいるかどうか、またそれ以外のファクターににもよりますが、抗甲状腺剤や放射性ヨード、または甲状腺亜全摘(約5g程度の甲状腺を残す手術)は効果的な治療法です。 |
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