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50年近く前のI-131の被爆線量の計算は複雑で、困難を極めました。それには次のファクターを考慮しなくてはなりません。 |
- I-131は継続的に崩壊するため、何年も前に採取した土壌サンプルを使って、現在測定するのが困難である。
- 1950年代に放射線被爆を評価するのに使われたテクニックは、現代のものと比べると限度があり、I-131のみを測定するものではなかった。
- 上層の大気中に放出されたI-131は風に乗ってアメリカ大陸全土およびアメリカ大陸以外の多くの地域に運ばれ、そのため推定値は天候の情報に大きく依存する。
- ほとんどの検査はすぐ周辺の地域でのみ行われており、国内の他の地域のデータがない。
- その人が被爆した時点の年齢により、受けた総線量が異なる。
- この時期に各個人が取り込んだ汚染されたミルクやその他の食品などの被爆源とその量を推定しなければならなかった。
- 被爆頻度および継続的被爆であるか、間欠的被爆であるかということは、推測にすぎない可能性があった.。
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NCIの推定では、1950年代におおよそ1,600万人のアメリカ人がI-131の被爆を受け、その平均線量は1人当たり2ラドとなっています(ラドとはヨード化放射線から吸収されるエネルギーの単位です)。
しかし、一部の人、特にモンタナ州とアイダホ州のある田園地域に住んでいた乳児や小児は、12から16ラドもの被爆を受けていた可能性があります。宇宙線やその他の環境からの線源としての1人当たりのI-131平均累積線量は1ラドになります。研究では、診断用甲状腺スキャン(1回のスキャン当たり110ラド)で被爆するI-131の線量では、患者が甲状腺癌を生じるリスクは増加しないことがわかっています。
しかし、1986年のチェルノブイリの原発事故に関連したフォローアップ研究では、もっと低い線量のI-131に被爆した子供達の間で相当の甲状腺癌の増加があることが示されています。この増加はI-131だけによるものか、あるいは降下物中に存在するかもしれない他のアイソトープや化合物との組み合わせによるものかをはっきりさせるためには、さらなる研究が必要です。
NCIの研究では、1950年代の核実験で出たI-131放射性降下物からもっとも高い線量を被爆したのは、実験が行われた時期に乳幼児であり、自分のところの庭や牧場に飼われている牛やヤギのミルクを飲み、モンタナ州とアイダホ州の様々な田園地域に住んでいた人であるという結論を出しました。 |