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先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 13, No1

06:コレステロールと甲状腺機能低下症

質 問 MVH, インディアナ州マンシー
研究で示された高コレステロールと甲状腺機能低下症との間の関連性についてご意見をお聞かせください。

回 答
甲状腺機能低下症と脂質の上昇との間の関連性については、1960年代から認識されていました。実際に、甲状腺ホルモンの直接測定法が利用できる前は、コレステロールの上昇が甲状腺機能低下症を確かめるラボ検査の一つだったのです。コレステロールとトリグリセライドは、数種類の異なったリポタンパクを形成する特異的なタンパクと共に血液中を循環しています。脂質の概要を評価する際に、ほとんどの医師は総コレステロールとトリグリセライドに加え、低密度リポタンパクと結びついたコレステロール(LDLまたは“悪玉”コレステロール)と高密度リポタンパクと結びついたコレステロール(HDLまたは“善玉”コレステロール)の測定も行います。
甲状腺機能低下症患者の90%以上にコレステロールやトリグリセライド、あるいはその両方の上昇があります。甲状腺機能低下症では、LDLレセプターの数が減少するため、肝臓へのLDLの取り込みが減少し、血液中に残るLDLの量が多くなるので、LDLの上昇が起こります。甲状腺機能低下症では、HDLのレベルも上昇します。
そのような患者をレボサイロキシン(シントロイド、レボキシル、レボサイロイド、ユーサイロックス、またはその他の甲状腺ホルモン製剤<注釈:日本ではチラージンS>で治療すると、コレステロールやトリグリセライド、HDLコレステロール、およびLDLコレステロールのレベルが正常な方へ減少します。しかし、レボサイロキシン<注釈:日本ではチラージンS>が正常な甲状腺機能を持つ患者のコレステロール値を下げることはありません。
最近の研究は、ごくわずかな、あるいは“潜在性”の甲状腺機能低下症患者に焦点が当てられています。非常に多くの数の患者を調べない限り、ごく軽度の甲状腺機能低下症が脂質のレベルに及ぼす影響をはっきりさせることは困難です。メタ分析、以前発表されたいくつかの研究を結び付ける研究ですが、その研究では潜在性甲状腺機能低下症で、総コレステロールとLDLコレステロールのごくわずかな上昇と、レボサイロキシンで治療した後にわずかな減少が認められました。コレステロールの上昇は、心筋梗塞と脳卒中のリスクファクターであるため、患者の年齢にかかわらず甲状腺機能低下症を適切に治療することが重要であります。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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