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08
[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 10, No2

08:カルシトニン

質 問 N.M. Arlington Texas
閉経後の骨粗鬆症を気にかけている女性ですが、カルシトニンについて質問があります。読んだことですが、ホルモンであるカルシトニンは、普通甲状腺で作られ、骨を構築する骨芽細胞の刺激に関わっているようだということを書いてあったようです。また、甲状腺機能低下症の女性は、骨粗鬆症になるリスクが大きいということも読みました。これは、甲状腺機能低下症の人はカルシトニンの出来方が足りないということなのでしょうか。そのために甲状腺ホルモンだけでなく、カルシトニンも補わなければならないのでしょうか。もしそうなら、どのような製剤があるでしょうか。また、カルシトニンの不足があるかどうかわかる検査が何かありますか。

回 答
甲状腺の病気に罹っている患者さんにおけるカルシトニンの役割をめぐる疑問については、異論が多く、まだ見解の一致がありません。カルシトニンは甲状腺のC細胞で作られます。橋本甲状腺炎や甲状腺機能低下症の患者さんや放射性ヨードあるいは甲状腺の手術を受けた患者さんでは、実際にカルシトニンのレベルが低くなっています。
低レベルのカルシトニンを記録するには、不快な刺激試験(カルシウムまたはペンタガストリン注入剤の静注)が必要で、そのようなカルシトニン欠乏の検査は学術研究の場合にだけ適用されます。
カルシトニン欠乏のある患者さん全員に甲状腺機能低下症があり、甲状腺ホルモンを飲んでいます。そして、甲状腺ホルモンは骨の代謝に大きな影響を持っているため、カルシトニン欠乏症の影響を甲状腺ホルモンの影響から切り離して評価するのが難しいのです。未治療の甲状腺機能低下症には骨密度の増加が伴います。過剰な甲状腺ホルモン治療は、特に閉経後の女性に骨密度の減少を起こします。甲状腺ホルモンの補充量を注意深くモニターすることで、骨への副作用はないはずですが、副作用の可能性があることを示唆した研究が一つあるため、これには議論の余地があります。
カルシトニンは皮下注射で投与されます。骨粗鬆症の治療では大量投与が行われます。骨粗鬆症がなければ、甲状腺の病気から生じるカルシトニン欠乏状態のためにカルシトニンを摂取する必要はありません。さらに、動物を使った研究では、カルシトニンに甲状腺の病気に関連した骨喪失を予防する効果はありませんでした。反対に、閉経後の女性にエストロゲン補充療法を行うと、甲状腺の病気に関連した骨喪失が予防できることが最近の研究で示唆されています。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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