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18
[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 13, No4

18:甲状腺炎

質 問
私は甲状腺炎に罹っています。治療はどんなものですか?違うタイプの甲状腺炎にはどんなものがありますか?
私は甲状腺炎に罹っていて、甲状腺ホルモン補充療法を受けています。この薬は一生続けなければいけないのですか?

回 答
甲状腺炎という言葉には、数種類のまったく異なった臨床症状が含まれる可能性があります。
  1. 急性甲状腺炎
  2. 亜急性肉芽腫性甲状腺炎(デ.ケルバン病)
  3. 亜急性リンパ球性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎)
  4. 慢性リンパ球性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)
  5. 産後甲状腺炎
急性甲状腺炎は、甲状腺の細菌感染のことを言い、急に甲状腺の痛みと発熱が起こります。レンサ球菌性咽喉炎などのような咽喉の感染症の後に起こる頻度が高いのです。抗生物質が導入される前は普通に見られましたが、アメリカ合衆国では現在きわめてまれなものです。

亜急性肉芽腫性甲状腺炎(デ・ケルバン病)は、甲状腺の痛みと甲状腺機能亢進症を起こすウィルス性またはウィルス感染後に起こる症候群で、熱を伴うことがよくあります。上気道感染症(風邪やのどの痛み)の後に起こることが多く、甲状腺の痛みがいちばんやっかいな症状であるのが普通です。また甲状腺の肥大を伴います。イブプロフェンまたは同様の薬によってコントロールできると思われますが、ステロイド(プレドニゾンなど)が必要な場合もあります。4〜12週間続く炎症期の間に、損傷を受けた甲状腺から甲状腺ホルモンが漏れ出し、甲状腺機能亢進症が起こります。甲状腺機能亢進症の症状はベータ遮断剤(プロプラノロール、アテノロールまたはメトプロロール)で治療できます。甲状腺機能亢進期が過ぎ、痛みが治まれば、甲状腺ホルモンのレベルは普通、正常レベル以下に下がりますが、数ヶ月間下がったままで、一次的な甲状腺ホルモンによる治療が必要なことがあります。最終的にはすべて正常に戻ります。これは希な甲状腺の病気です。いちばん多い甲状腺の痛みの原因は、良性の甲状腺結節内の出血です。

亜急性リンパ球性甲状腺炎は、無痛性甲状腺炎とも呼ばれます。これは免疫系により引き起こされる急速に発現する炎症性の病気です(したがって、数種類ある自己免疫性甲状腺疾患−免疫系が正常な体の組織を攻撃するために起こる病気−のうちの一つです)。急にリンパ球(白血球)が甲状腺の中に侵入することで、痛みのない炎症が起こり、甲状腺濾胞が破壊され、甲状腺ホルモンが血液の中に漏れ出し、一次的な甲状腺機能亢進症が起こります。
亜急性肉芽腫性甲状腺炎と同じように、甲状腺機能亢進期は4〜12週間続き、甲状腺機能亢進症状にはベータ遮断剤が有効な場合があります。また、甲状腺機能亢進期の後に甲状腺機能低下期が続きますが、80〜90%の患者は回復します。一部の患者は永久的な甲状腺機能低下症を起こします。

慢性リンパ球性(橋本)甲状腺炎は甲状腺炎の原因として一番多いもので、これも自己免疫性甲状腺疾患です。炎症の進行はさらに遅く、時に何十年にもわたることがあります。甲状腺が肥大することが多く、最終的には永久的な甲状腺機能低下症になります。治療は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの薬を飲むことになります。リンパ球性甲状腺炎では痛みはめったにありませんが、甲状腺が大きくなると、まわりの組織が引っ張られて軽い不快感を覚えることがあります。

産後甲状腺炎は、産後期(普通出産後2〜9ヶ月)に起こる亜急性リンパ性甲状腺炎か、産後に橋本甲状腺炎が悪化したものかのどちらかをいいます。橋本甲状腺炎が産後期に再燃して、甲状腺機能低下症になった場合は、この甲状腺機能低下症は時間の経過とともに改善し、甲状腺ホルモンの服用を中止できることがあります。しかし、多くの患者では時間の経過とともに永久的な甲状腺機能低下症を起こしてきます。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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