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[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 14, No1

20:骨密度と甲状腺ホルモン補充療法

質 問 D.K., ニューヨーク州ニューヨーク
私は甲状腺機能亢進症でしたが、治療の後で甲状腺機能低下症になりました。今レボサイロキシンを飲んでいます。私の主治医は治療前に、もし私が甲状腺機能亢進症のままであれば、骨が失われることもあると言いました。今では薬を飲んでいるので、13%もの骨が失われることもあるでしょうと言われました。私は甲状腺機能低下症になったことで、骨が失われなくなると思っていました。何か他にも飲んだ方がよいのでしょうか?骨密度に及ぼす甲状腺ホルモンの影響についての最新の情報が何かありますでしょうか?

回 答
甲状腺機能亢進症は著明な骨密度の減少に関係しています。生涯のどの時期かにかかわらず、甲状腺機能亢進症の病歴がある場合、晩年になってからの股関節の骨折のリスクが増加します。甲状腺ホルモンは骨に直接吸収効果を及ぼします。

甲状腺機能亢進症の患者は、カルシウムバランスが大きくマイナスになっていることがあります。毎日、消化管で吸収する以上のカルシウムを尿から排泄してしまうことがあります。したがって、甲状腺機能亢進症患者は、甲状腺機能亢進症の病歴のある人もそうですが、適切な量のカルシウムを食餌か、栄養剤のどちらかから摂取することが大切です。十分なビタミンDもカルシウムがうまく吸収されるのに欠かせません。1,000〜1,500mgのカルシウムと400〜800単位のビタミンDを毎日摂るようにするのがよいでしょう。

ほとんどの研究では、甲状腺機能亢進症の治療後1年間で、ほとんどの骨のカルシウムは著しく回復することが示されていますが、全部元どおりになるわけではありません。

レボサイロキシン(シントロイド、レボキシル、レボトロイド、ユースロックス他)もまた、正常な補充療法の量を超えて投与された場合、骨からのカルシウムの喪失をきたすことがあります。レボサイロキシンの補充量、すなわち血清TSH濃度が正常になる量、そして甲状腺機能亢進症を放射性ヨードあるいは手術で治療した後に通常投与される量ということですが、それで骨密度の減少が起こることはありません。レボサイロキシンの量が多すぎる患者のみに骨密度減少の危険性があるのです。

医師は、甲状腺結節または甲状腺腫の成長を抑えたり、あるいは甲状腺癌の再発を防ぐためにレボサイロキシンの量をわずかに増やして投与することが時にあります(“TSH抑制療法”)。甲状腺ホルモンの軽い抑制量で、骨密度の減少が起こりうるかどうかについては、まだ議論の余地があります。ほとんどの研究では、エストロゲンの補充を受けていない閉経後の女性には著明な骨密度の喪失があることが示されています。しかし、エストロゲンの補充で、閉経後の女性の甲状腺ホルモンを介した骨喪失は防げるでしょうし、抑制量のレボサイロキシンを飲んでいる閉経前の女性では、骨の喪失は無視してよい程度のものだと思われます。ただし、これらの患者でも、レボサイロキシンの量が多すぎれば骨密度が失われることになるでしょう。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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