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35
[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 14, No3

35:甲状腺腫に伴う症状について

質 問
甲状腺腫に伴う症状にはどのようなものがありますか?どの甲状腺腫が手術を必要とするのですか?

回 答
甲状腺腫には症状がなく、日常的な診察の際、あるいは他の目的で行ったレントゲン検査で見つかることがよくあります。例えば、結節性甲状腺腫は頚部MRIまたは頚動脈の超音波ドップラー検査中に見つかることがよくあります。甲状腺腫が急速に成長すると、患者が首のところにいくらか不快感を覚えることがあります。甲状腺組織内への出血ではもっとはっきりした不快感を生じることがあります。

しかし、甲状腺腫のために起こる症状のほとんどは、甲状腺組織の成長による圧迫性または閉塞性の症状です。甲状腺腫が気管を狭めることがあり、そのために呼吸困難が起こります。食道の圧迫により、ものを飲み込むのが困難になることがあります。喉頭(声帯)を通る神経を圧迫するためにしゃがれ声になることがあります。甲状腺腫がいびきや睡眠中の無呼吸の原因となることがあります。

胸骨下甲状腺腫は頚部に留まっている甲状腺腫に比べ、圧迫症状を起こす可能性が高いのです。胸郭口は胸骨、鎖骨および椎体(脊椎)で形作られる胸腔への入り口です。甲状腺腫がコルク栓のような働きをして、この入り口を塞ぎ、頭頚部から胸部を通る気管、食道、頸動脈、頸静脈を圧迫することがあります。胸郭口にある臓器をほとんど圧迫するくらい大きな甲状腺腫を持つ患者は、両手を頭上に挙げたら、圧迫症状が増強することがあります(ペンベルトンの徴候)。頚静脈の圧迫で顔が腫れ、紫色になることがあります。

閉塞症状を起こすような甲状腺腫、つまりほとんどの胸骨下甲状腺腫、およびその他の大きな、または成長を続けている甲状腺腫は、今のところ症状がなくても、手術の適応になります。さらに、穿刺生検で悪性が疑われる場合は、その甲状腺腫をとってしまわなければなりません。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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