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サイログロブリンは甲状腺ホルモンの生合成に関わる蛋白質です。その一部は甲状腺から分泌されます。この蛋白質のレベルは血液で測ることができます。主に分化型甲状腺癌(乳頭癌および濾胞癌)の腫瘍マーカーとして使われます。甲状腺全摘術を受けた後は、サイログロブリンレベルが非常に低くなっているはずです。手術で取り残した分を放射性ヨードで破壊した後、サイログロブリンは検知できないレベルになっているはずです。いつまでもサイログロブリンが存在している場合は(甲状腺全摘術後)、癌がまだ残っているか、甲状腺組織が残っているかのどちらかを示しています。
甲状腺を全部取っていない場合は、サイログロブリンレベルを見てもあまり役にたちません。残っている甲状腺がサイログロブリンを作り出すからです。このような状況でのサイログロブリンレベルの解釈は難しく、あてになりません。
甲状腺癌組織のサイログロブリン産生は、甲状腺ホルモン剤投与によって抑えられます。甲状腺ホルモン剤を止め、血清TSHが上昇できるようにすると、高レベルの血清TSHがサイログロブリン産生を促します。サイログロブリンはヒト遺伝子組み替えTSH(サイロジェン)を筋注で投与しても刺激を受けます。刺激を受けた後のサイログロブリンレベルは、残存している甲状腺癌の組織の量にいちばんよく比例します。異なった時期に測ったサイログロブリン値を比較する時は、刺激サイログロブリンレベルか抑制サイログロブリンレベルであるかを確かめるため、サイログロブリン値を測定した時のTSH値がどうであったかを知る必要があります。
サイログロブリンの血液検査は難しいものです。そのため、すべての検査機関が質の高い結果を出すとは限りません。さらに、人口の約15%にはサイログロブリンに対抗する抗体があります。このため、誤って高い、または低い値が出ることがあります。大事なことは、医師が検査機関が使っている特定の方法やその限界を熟知していることです。一般的な問題は、HMO(健康保険組織)が品質の高いサイログロブリン検査に対する支払いをしないということです。このため、医師は抗体のスクリーニングを行なっていない検査機関、あるいは劣った試験方法を使っている検査機関を利用する必要が生じる場合があります。そのような場合は、保険に入っていない検査の費用を支払う方がよいでしょう。特に甲状腺ホルモン剤を中止した後に測定を受ける場合はそうしてください。
このような状況にある人は、医師にアドバイスを求め、正しい検査を受けられるようにしてください。
理想的には、サイログロブリンが検知できないレベル(測定できる最低値は1ng/mlですので、結果は「1ng/ml未満」と報告されます)であるべきですが、2ng/ml以下のサイログロブリン値であったからといって、病気が再発したり、まだ残っているというようなことはめったにありません。同時に行った首の超音波診断や放射性ヨードスキャン、胸部CT、あるいは骨スキャンではっきりした病気が認められないのに、患者のサイログロブリンレベルがわずかに上がることは珍しくありません。時には何年か経ってから病気がはっきりしてくる場合もありますし、出てこない場合もあります。サイログロブリンのレベルが高ければ高いほど、癌が残っていたり、再発している可能性が高くなります。したがって、サイログロブリンの産生源を突き止めるために注意深い診査が必要です。 |
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