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産後の甲状腺機能亢進症は普通、無痛性甲状腺炎かバセドウ病によるものです。これら2つの病気を見分けるいちばんよい方法は、放射性ヨード取り込み試験です。バセドウ病では取り込みが上がっています(または正常)。無痛性甲状腺炎では取り込みはほぼゼロに近くなっています。甲状腺が炎症を起こし、ホルモンが血液中に漏れ出しているので、放射性ヨードのトレーサーを甲状腺内に取り込むよう刺激するTSHがありません。女性が母乳を与えている場合は、産後期に放射性ヨード取り込み試験を行うのがちょっと問題になります。1週間授乳を中止しなければならないからです。この場合、血清T4に対するT3の比率を見るのが役立つと思われます。この比は無痛性甲状腺炎では10(ng/dl:μg/dl)くらいで、バセドウ病では20を超えるのが普通です。したがって、母乳を与えており、甲状腺機能亢進症の状態に耐えることができ、なおかつT3/T4の比が高くなければ、診断がいくぶん不確実ではありますが、医師と患者は甲状腺機能亢進症が自然に治るかどうか様子を見ることにする場合があります。
同じように、患者が産後に甲状腺機能低下症を示していても、その甲状腺機能低下症が一時的なものか、永久的なものか前もって知ることはできません。ただ、甲状腺機能亢進期が先行していたことがはっきりしている場合は、一過性である確率が高くなります。無痛性甲状腺炎患者の90%は甲状腺機能が回復しますが、10%は甲状腺機能低下症のままになります。そして、10年後、もう10%が甲状腺機能低下症になります。産後期に慢性甲状腺炎で甲状腺の破壊を起こした患者では、甲状腺機能低下症が一過性のこともあるし、永久的な場合もあります。産後期に起きた甲状腺機能低下症が治った患者の多くは、何年も経ってから甲状腺機能低下症を起こしてきます。
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)のレベル(力価)が役立つ場合があります。力価が高ければ高いほど、甲状腺の損傷が永久的である可能性が高く、したがって患者が甲状腺機能低下症のままになる確率が高くなります。しかし、唯一確実な方法は、甲状腺ホルモン剤を中止、あるいはその量を減らしてTSHのレベルが上がるかどうかを見ることです。 |
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