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第1部
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[010]
甲状腺機能亢進症に関してよく聞かれる質問

第1部:甲状腺機能亢進症の概要
第1部は、甲状腺機能亢進症の概要と以下の質問に対する答えです。
01 甲状腺機能亢進症とは何でしょうか?
02 この病気はうつりますか?
03 甲状腺機能亢進症の原因は何ですか?
04 甲状腺機能亢進症とグレーブス病は同じだと思っていたのですが、違うのですか?
05 グレーブス病とびまん性中毒性甲状腺腫はどう違うのですか?
06 グレーブス病は自己免疫性疾患だと聞きましたが、これはどういうことなどでしょうか?
07 ある種のタイプの甲状腺機能亢進症になる自己免疫性の病気はどれくらい多いのでしょうか?
08 免疫系に起こる病気の原因は一体何ですか?
09 環境がどのようにして免疫系をおかしくするのですか?
10 グレーブス病であることはどうしたらわかりますか?
11 グレーブス病はどのようにして目を冒すのですか?
12 グレーブス病はどのようにして皮膚を冒すのですか?
13 グレーブス病について他に知っておかなければならないことはありますか?

[01]甲状腺機能亢進症とは何でしょうか?
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺の機能が活発すぎることです。機能が活発すぎることで、甲状腺ホルモンの作り過ぎがおこります。甲状腺ホルモンは体の様々な機能をコントロールしているため、甲状腺ホルモンレベルが上がることで、心拍が増え、場合によっては血圧などが上がるなど、体の機能が増し、非常に危険なレベルにまでなることもあります。

[02]この病気はうつりますか?
いいえ。この病気は伝染性はないと考えられています(でもジョージ・ブッシュ大統領と夫人のバーバラさんが同時にグレーブス病(バセドー病)に罹った時、飼っていたイヌのミリーまで同じ病気になったのは不思議ですね)。

[03]甲状腺機能亢進症の原因は何ですか?
甲状腺機能亢進症の原因には次のようなものがあります。
  • 自己免疫性疾患であるグレーブス病(バセドウ病)
  • 甲状腺の中毒性結節または甲状腺腫
  • 甲状腺機能低下症患者に投与する甲状腺ホルモン剤の量が多すぎる場合
  • ヨードの過剰摂取<注釈:日本では起こりません>
  • 甲状腺炎(甲状腺の炎症)

[04]甲状腺機能亢進症とグレーブス病は同じだと思っていたのですが、違うのですか?
グレーブス病(バセドウ病)は甲状腺機能亢進症の中で一番多く見られるタイプです。グレーブス病(バセドウ病)では、甲状腺全体の活動が活発になり過ぎて甲状腺機能亢進症が起こります。グレーブス病は最初にこのタイプの甲状腺機能亢進症を記載した医師、ロバート・グレーブスの名前を取ってつけられました。

[05]グレーブス病とびまん性中毒性甲状腺腫はどう違うのですか?
違いはありません。同じ病気を違った名前で呼んでいるだけです。“びまん性中毒性甲状腺腫”という言葉は、以下に示すようなこの病気の状態を言い表しているだけのことです(発見者の名前ではなく)。
  • “びまん性”−甲状腺全体がこの病気に罹っていることです。
  • “中毒性”−ちょうど感染したように、患者が熱にうかされたように見えるからです。
  • “甲状腺腫”−この病気のために甲状腺が大きくなることがよくあります。

[06]グレーブス病は自己免疫性疾患だと聞きましたが、これはどういうことなどでしょうか?
これは、体の免疫系の機能がおかしくなって起きる病気のことです。免疫系は細菌や癌細胞などの好ましくないものから私達を守る働きもしています。この免疫系は抗体(免疫グロブリンまたはリンパ球としても知られています)を作ることで働くのですが、これが体の中の悪者、ウィルスや細菌などを攻撃し、やっつけます。問題は、このよくできた防衛システムが混乱し、よい細胞を攻撃し始めることが時々あるのです。グレーブス病(バセドー病)では、甲状腺細胞の表面にあるある種の蛋白質を攻撃する抗体が作り出されます。それに反応して、甲状腺細胞がたくさん甲状腺ホルモンを作り過ぎるようになり、そのため甲状腺が過剰な刺激を受けるようになります。

[07]ある種のタイプの甲状腺機能亢進症になる自己免疫性の病気はどれくらい多いのでしょうか?
この病気はあまり多いものではありません。人口の約10%が甲状腺に問題を引き起こす可能性のある免疫系を遺伝しており、実際に問題を起こすのはその中の10人に1人に過ぎません。

[08]免疫系に起こる病気の原因は一体何ですか?
免疫系がおかしくなるのには、環境が何らかの働きをしていると信じられています。この病気は家族内に遺伝することはありませんが、研究者にはそれがどうしてなのかまだわかっていません。一般的に言って、自己免疫疾患の解明は、研究者が大きく力を入れている問題です。

[09]環境がどのようにして免疫系をおかしくするのですか?
この点に関してはまだはっきりした結論は出ていません。ひどい情動性ストレスが犯人としていちばん疑われることが多いのですが、そのようなストレスを経験することなくこの病気になる人もいる可能性があります。それでも、生活上のストレスを減らすのは、間違いなく体によいことです。他にグレーブス病(バセドウ病)を起こす引き金になると考えられるファクターには、喫煙、頚部への放射線照射、薬(インターロイキン-2やインターフェロン-アルファなど)、そしてウィルスのような微生物の感染があります。

[10]グレーブス病であることはどうしたらわかりますか?
グレーブス病(バセドウ病)に罹っていたとしても、症状が非常にゆっくり進んでいくため、病気ではないかと気が付くまでに何週間、あるいは何ヶ月もかかることがあります。ただストレスがあるだけだとか、別に心配事があるだけだと思うかもしれません。あるいは、ごく短期間ですが、この甲状腺の病気の副作用の一つで代謝速度の亢進のため、体重が減ることがあるので実際に喜ぶ人もいるでしょう。しかし、長い間にはもっと望ましくない症状である筋肉の弱り、不眠症、震えなども起こってきます。暑さに耐えられないことや異常に汗をかくようになるのと共に、脈も速くなることがあります。髪が抜けたり、下痢をしたりすることが普通に見られるようになるでしょう。女性では月経の量が減り、次の月経までの間隔も長くなってくることがあります。うつ病も現れることがあります。そして、先に述べたように、血圧や心拍が危険なレベルにまで上がることもあります。しかし、グレーブス病(バセドウ病)でいちばん大きな目にみえる変化は、皮膚と目に現れます。

[11]グレーブス病はどのようにして目を冒すのですか?
グレーブス病(バセドウ病)では目の炎症、つまり目の周囲の組織の腫れや目が出っ張ってくることなどが起こります。しかし、99%でこの炎症が深刻な、または永久的なトラブルを生じることはありません。グレーブス病(バセドー病)により目が冒されている場合の最初の徴候には次のようなものがあります。
  • 眼球の後ろ側の組織の炎症のため、目が出っ張ってくる(医学用語で眼球突出症と言います)。
  • ものがぼやけて見えたり、視力が減退する。
  • 赤い、または炎症を起こした目。
  • 複視
抗体が目の筋肉を攻撃することによって腫れが起こると信じられています。光に過敏になったり、いつも目の中に何かがあるような感じがする場合もあります。このような症状はグレーブス病(バセドウ病)の診断がなされてから、大体6ヶ月以内に現れてきます。

[12]グレーブス病はどのようにして皮膚を冒すのですか?
希ではありますが、グレーブス病(バセドウ病)患者では時にすねの前側(脛骨前部皮膚)の皮膚が赤みがかって厚くなり、しこり状になることがあります。これは“前脛骨粘液水腫”(皮膚症と言われることの方がより一般的です)として知られており、痛みはなく、深刻なこともないのが普通ですが、甲状腺機能亢進症が始まっても、生じない場合があります。目に起こるのと同じように、この脛骨前部の腫れは、これらの組織を抗体が攻撃することによって起こると信じられています【前脛骨粘液水腫の写真】。
【前脛骨粘液水腫の写真】
前脛骨粘液水腫の写真

[13]グレーブス病について他に知っておかなければならないことはありますか?
  • 甲状腺機能亢進症に伴う目の合併症が起きたら、かかりつけの医師の他に眼科医にも診てもらいましょう。
  • 喫煙はグレーブス病(バセドー病)に付随する目の病気を悪化させる傾向があるため、−他の理由からもやめるようにしましょう。【手助けがいる場合は、マイニング社のクリスチーン・ローレイの素晴らしいウェブサイト禁煙しようを見てください】
  • 男性より女性の方が罹りやすく、その比率は8対1です。
  • 普通中年に起こります。

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