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結論から述べますと、この病気のすべての患者さんを初回の手術で完全に治すことは不可能です。初回手術による治ゆ率は、欧米(この病気は欧米が日本にくらべ多い)の内分泌外科を専門にしている施設で最も成績の良いところで95%前後です。なぜ、100%ではないのかについて次の二通りについて詳しく説明します。 |
- 手術後でもカルシウムが十分下がらず、持続性に高カルシウム血症をきたす場合
- 術後数年あるいは数十年経過し、再度血液中のカルシウムが高くなる場合
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1. は手術がうまくいっていなかったと考えて良いでしょう。 |
カルシウムが十分下がらない理由は、 |
- 病的な副甲状腺を探し出すことができなかった。
- 病的な副甲状腺が複数個あり(2個の腺腫や過形成など)、その一部を取り残した。
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などが考えられます。 |
前に説明しましたが、副甲状腺は4個とは限らず、それ以上ある可能性も10%以上あることや通常副甲状腺は甲状腺周囲にありますが、甲状腺内、甲状腺から離れたところ、さらには胸のなかにあったりすることが、手術がうまくいかない理由になります。 |
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2. に関しては、 |
カルシウムが十分下がらない理由は、 |
- 病気が過形成であったが、十分な量が切除されていなかった。
- 移植した副甲状腺が必要以上にホルモンをつくるようになった。
- 病理検査で良性(腺腫、過形成)の診断であったが、実際は癌であり(癌と良性の鑑別が困難な場合もある)再発した。
- 腫大腺を切除する際に被膜をやぶり細胞をばらまいてしまった。
- 1つの副甲状腺の病気でそれを取り除いてうまくいっていたが、他の腺に新たに病気が発生した。
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などが考えられます。 |
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1. の“手術後も持続性に病気が続く”ことに関しては、 |
- 手術前の検査で、病的な副甲状腺の位置あるいは腺腫(基本的には1腺の病気)あるいは、過形成を鑑別する。精度の高い超音波検査やシンチだけでなく、当院独自の方法として、手術前に3箇所(左右の内頚静脈と手の静脈)より採血し、副甲状腺ホルモンを測定、検査結果より、上記の判断の材料にしています。
- 現在手術中に副甲状腺ホルモンの迅速測定(具体的には病気の副甲状腺を取り除いたのちに副甲状腺ホルモンを測る)で、ホルモンが十分下がることを確認、もし、十分下がらなければ、他の病的な副甲状腺を探し取り除く方針ですのでほぼ回避できています。これまでに約30例(平成11年4月より10月)に行いましたが、この方法ですべての方がうまくいっています。
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2. に関しては、新たに病気が発生した様な場合は非常に稀です。われわれは実際に経験したことはありませんが、理論的には可能です。他は病気の性質の理解や手術の習熟により避けることができると考えています。
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