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20人に1人の割合で、出産後2〜3ヶ月以内に甲状腺に炎症が起きる女性がいます。これは産後甲状腺炎と呼ばれる病気です。このタイプの甲状腺の炎症は痛みがなく、甲状腺腫大はほとんど、あるいはまったく起こりません。しかし、この病気は甲状腺が甲状腺ホルモンを作るのを妨げます。甲状腺ホルモンが炎症を起こした甲状腺から大量に漏れ出すことがあります。このために数週間続く甲状腺機能亢進症が起こります。この後、傷付いた甲状腺が十分な甲状腺ホルモンを作れなくなり、一時的な甲状腺機能低下症になることがあります。新しく母親になった人に起こった時、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症の症状に気付かない場合があります。その症状が単に睡眠不足や神経質、あるいはうつ病のせいだと思ってしまうことがあります。 |
【時に見逃されてしまう新しく母親になった人に起こる甲状腺の症状】 |
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産後甲状腺炎は、1ヶ月から4ヶ月で自然に治ります。ただ、活動期の間、甲状腺ホルモンの過剰または不足の治療が女性に利益をもたらすことが多いのです。震えや心悸亢進のような甲状腺ホルモンが多すぎることからくる症状のいくつかは、ベータ・ブロッカーと呼ばれる薬(例えば、プロプラノロール)ですぐに改善できます。抗甲状腺剤や放射性ヨード、および手術は、このタイプの甲状腺機能亢進症が一時的なものに過ぎないため、必要とは考えられません。甲状腺の不足が生じた場合、レボサイロキシンを1ヶ月から6ヶ月使って治療できます。産後甲状腺炎を起こしたことのある女性は、将来妊娠し、出産した後に同じ問題が起きる可能性が非常に高いのです。個々の症状の発現は、普通完全に治りますが、産後甲状腺炎のある女性の4人に1人は、将来永久的に不活発な甲状腺になります。もちろん、レボサイロキシンで甲状腺ホルモン欠乏は完全に治せますし、正しい用量が使われていれば、副作用も合併症もなく、安全に飲むことができます。 |