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現時点では、産後甲状腺機能障害を起こしている女性を見分ける最良の方法はわかっていません。一つのアプローチ法としては、産後の女性全員を甲状腺の血液検査、TPO抗体レベル、あるいはTSHレベルのどちらかでスクリーニングする方法があります。症状が出たほとんどの女性がTPO抗体が陽性であるため、この検査で見分けられた女性は全員、カウンセリングを受け、産後最初の1年間は注意深く経過を見てもらうことができるでしょう。この検査の利点は、危険性のある女性のほとんどがわかるということです。ただ、不利な点が2つあります。まず5〜10%の抗体陽性の女性を見分けるために新しく母親になった女性全員を検査するとなれば相当な費用がかかります。2番目に、TPO検査では甲状腺機能に変化をきたした女性がわからないということです。それにはTSH検査が必要です。
もう一つのスクリーニング法は、出産後の女性全員にTSH検査を行うことです。残念ながら、PPTDはほぼ1年間にわたる期間を通じて出てくるため、出産後の検査に最適なこれという時期がないのです。ある時にTSHが正常であっても、女性が1,
2あるいは3ヶ月後に甲状腺の病気を起こしてこないというわけではありません。
現在はほとんどの医師がまちまちなアプローチ法でPPTDの診断を行っています。つまるところ、女性に気になるほどの症状が出て、医師の診察を受ける気になる程続くのを待つのです。医師は、それから甲状腺の病気を疑い、適切な甲状腺の血液検査(TSH)を行うのです。この場合の利点は、PPTDの診断にかかる費用がやすいことです。不利な点は、もっと軽い症状を持つ多くの女性が見落とされる可能性があることで、このような女性は治療を求めない場合があるからです。事実、2つの研究で妊娠中または出産後に甲状腺機能低下症になった女性の一部が数年間適切な治療を受けない可能性があることが示されています。この診断方法を改善する一つの方法は、PPTDの症状や身体的徴候に対する患者と医師の意識を高めることです。そうすれば罹患した女性がもっと早くTSH検査を受けるようになるでしょう。
現在のところ、もっとも理にかなったアプローチ法は、PPTDを起こしてくる危険性がもっとも高い女性に焦点をあてることです。甲状腺の病歴あるいは関連免疫疾患の病歴が本人または近い親族にある人には、家庭医や産婦人科医がPPTDの症状や徴候を教えるべきでしょう。理想的には、妊娠中にわかった甲状腺の病気を治療したり、PPTDを起こした人を見分けるために、この女性のサブグループにも妊娠前と出産後にTSHまたはTPO抗体検査を行うべきでしょう。そのような検査が本当に効果的で、経済的にも実行可能であるかどうかを見るのに必要な研究が現在数箇所の医療センターで行われております。 |
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