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甲状腺疾患健康ガイド

04:甲状腺機能低下症
01 臨床的特徴
02 新生児の甲状腺機能低下症
03 潜在性甲状腺機能低下症
04 治療法
05 他の形の甲状腺ホルモン
06 治療期間
07 脳下垂体性または視床下部性甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症、または不活発な甲状腺は甲状腺が十分な甲状腺ホルモンT4とT3を作ることができない時に起こります。主な原因は4つあります。
  1. バセドウ病による甲状腺機能亢進症を放射性ヨードで治療したか、あるいは甲状腺切除で治療した場合
  2. 慢性甲状腺炎、すなわち甲状腺の炎症過程の最終段階として起こる場合
  3. 生まれつき甲状腺を持たずに生まれてきた子供(先天性甲状腺機能低下症)
  4. 甲状腺癌の治療のため、甲状腺を手術で取ってしまった場合
甲状腺機能低下症は、脳下垂体または視床下部の病気によって起こる場合もあります。これは厳格に分泌が制御されている脳下垂体よりの甲状腺刺激ホルモン(TSH:サイロトロピン)や視床下部よりのサイロトロピン放出ホルモン(TRH)に甲状腺が依存しているからです。もう一つ、一過性ではありますが重要な形の甲状腺機能低下症がありますが、それは産後甲状腺炎に伴って起きるものです。

01 臨床的特徴 ↑このページのトップへ
おおよそ100人に2人は甲状腺機能低下症に罹っています。甲状腺機能低下症の症状は、ホルモンの分泌が足りなくなり、すべての代謝プロセスの「速度が落ちる」ために甲状腺機能亢進症とは対照的なものとなります。患者は食欲がなくなり、寒さに耐えられなくなり、皮膚が乾いてざらざらになり、髪も切れやすく、疲れや声のかすれ、便秘、筋力低下が見られます。検査で甲状腺の欠損や皮膚が冷たく、乾燥してうろこ状になっており、皮膚のその下の組織が厚くなっていたり(粘液水腫と呼ばれます)、反射や脈が非常に遅くなっているのがわかることがあります。患者は記憶力が低下していることがあります。甲状腺機能低下症の診断は血液中の甲状腺ホルモン(T4とT3)レベルが非常に低くなっていることで確かめられます。

02 新生児の甲状腺機能低下症 ↑このページのトップへ
新生児では「ヒールパッドブラッドスポットテスト(踵を針で突いて、ろ紙に染み出して来た血液を吸い取り、それを検査する方法)」を用いて検査を行います。理由は不明ですが、新生児甲状腺機能低下症は生まれてきた赤ちゃんに甲状腺がないために起こります。甲状腺ホルモンは脳の発達や成長に欠かせないものです。甲状腺機能低下症の新生児で治療を受けていない者は、クレチン病と呼ばれ、重篤な身体的、精神的障害があります。これには精神発達遅滞や視力低下、厚く乾燥した皮膚、突き出した大きな舌、筋力低下、ひどい嗜眠や疲労があります。生まれてすぐに診断され、治療を受ければ、成長と精神の発達は比較的正常に進みます。

新生児甲状腺機能低下症を早期に診断する研究は、Laval大学のJ. H. Dussault博士により、そのほとんどがカナダで行われています。

03 潜在性甲状腺機能低下症 ↑このページのトップへ
潜在性甲状腺機能低下症は非常に多く、臨床的に診断がつくことはまずありません。いちばんの特徴はTSHの濃度が上がっていることで、甲状腺ホルモンレベルは正常か、わずかに下がっている程度です。この病気には症状がないか、あっても非常にあいまいな場合があります。

治療を始めたら、もともとの診断が正しかったかどうか治療を止めて確かめることが非常に難しくなり、普通は生涯治療を続けることになるため、正しい診断をつけるのが極めて重要です。ごく軽度の甲状腺機能低下症であっても、血液中のTSHの測定で確かめることができます。

04 治療法 ↑このページのトップへ
甲状腺機能低下症の治療は、生涯甲状腺ホルモン剤の小さな錠剤を毎日飲むことです。今では、ほとんど不純物を含まず、副作用やアレルギー反応を起こすことはまずない合成甲状腺ホルモンであるサイロキシン(「エルトロキシン」または「シントロイド」)の形で投与されています。ほとんどの患者が必要とする量は0.125〜0.15mgの間ですが、それより少なくてよい人やもっと多く必要とする人が少数ですがおります。一度量が定まったら、普通は生涯あまり必要量が変わることはなく、患者は年1回血液検査を受けるだけでよいのです。大きなストレスを受けた時や、重病に罹った時は、甲状腺ホルモンの必要量が増すことがあります。乳幼児が必要とする量は少なく、ティーンエイジャーには大人の量を投与します。サイロキシンが多すぎると甲状腺機能亢進症の症状が出ますが、少なすぎれば甲状腺機能低下症の症状がいつまでも消えません。正しい量は甲状腺ホルモンレベル、特に総血清トリヨードサイロニンの血液検査とTSH検査、および診察により定められます。

05 他の形の甲状腺ホルモン ↑このページのトップへ
甲状腺ホルモンには他にも多くの形のものがありますが、そのどれかを処方することはまずありません。甲状腺抽出物やサイログロブリン、天然甲状腺製剤のような混ざりもののある製剤は、様々な量の甲状腺ホルモンを含んでいます。そのため、効き目も様々なですし、治療に対し思わぬ反応を生じることがあります。トリヨードサイロニン(T3)はサイロキシンよりはるかに効力の強いものですが、これも時たま投与されます。この薬は血液中での寿命が短く、心臓に不規則な刺激を与えます。したがって、T3(サイトメル)を心臓病患者や高齢者に投与してはなりません。

06 治療期間 ↑このページのトップへ
甲状腺機能低下症の診断が正しければ、かならず甲状腺ホルモン治療を生涯続けなければならないはずです。甲状腺機能不全の原因となる病気は進行性で、永久的なものである可能性が高いからです。

多くの患者が間違った理由でサイロキシンの投与を受けています(肥満や疲れなど)。したがって、血液検査を行い、甲状腺ホルモンのレベルが明らかに正常範囲より下がっていることを確かめることが大事です。それに加え、患者に甲状腺機能低下症の症状が出ていなければなりません。

甲状腺機能低下症患者は、甲状腺ホルモン剤の服用を止めてはなりません。甲状腺ホルモン治療は、薬の量が変わることがあるかもしれませんが、他の病気に罹った時にも続けなければなりません。

07 脳下垂体性または視床下部性甲状腺機能低下症 ↑このページのトップへ
脳下垂体または視床下部の機能不全により生じた甲状腺機能低下症の治療も、やはりサイロキシンで行われます。脳下垂体や視床下部の機能不全は、甲状腺の機能不全に比べると、きわめてまれなものです。このような場合は、他のホルモンの欠乏もある可能性があり、それも確かめて同じように治療しなければなりません。

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