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[045]
甲状腺疾患健康ガイド

09:甲状腺疾患:妊娠と不妊症
01 受胎能
02 バセドウ病と妊娠
03 妊娠中のサイロキシン治療
04 授乳と甲状腺疾患
05 不 妊
06 月 経
07 男性側の不妊症
08 女性側の不妊症
09 甲状腺疾患と乳房の線維嚢胞性疾患に対するヨード治療との関係
妊娠中は、甲状腺疾患はそれほど多くありません。甲状腺もその一部である免疫系の働きが、発育中の胎児を保護するために抑えられるからです。しかし、妊娠中に未治療の甲状腺機能低下症があれば、ごくわずかであっても完全で正常な胎児の発育が損なわれる可能性があります。

妊娠が終了した時点でこの保護作用が失われるため、以前甲状腺疾患に罹ったことのある女性に甲状腺疾患が起きてくる傾向があります。

甲状腺炎は産後に特に多く見られるものです。いわゆる「産後甲状腺炎」は、ほとんどの場合、数週間で回復します。ただし、次に妊娠した際に再発してくる可能性は非常に高いのです。

01 受胎能 ↑このページのトップへ
バセドウ病または慢性甲状腺炎を治療した女性は妊娠できるようになります。治療後に受胎能が正常に戻るからです。バセドウ病は妊娠する前に放射性ヨードまたは手術で治療しておくべきです。ただし、放射性ヨード治療を受けた後6ヶ月間は妊娠を控えるようにしてください。

02 バセドウ病と妊娠 ↑このページのトップへ
バセドウ病による甲状腺機能亢進症の治療は、妊婦と妊娠していない女性では異なります。放射性ヨードを投与することはできませんし、手術も行うべきではないからです(特に妊娠の第1三半期と第3三半期は流産を誘発する恐れがあります)。妊娠の免疫抑制効果のため、妊娠していない女性よりも抗甲状腺剤の投与量を少なくすることができます。抗甲状腺剤による甲状腺機能亢進症の治療のやり過ぎが胎児の甲状腺に悪影響を与えることがあります。この薬は胎盤を通って胎児の血液中に入り、胎児の甲状腺に作用するためです。

03 妊娠中のサイロキシン治療 ↑このページのトップへ
サイロキシン<注釈:日本ではチラージンS>は母親の血液から胎盤を通って胎児にいくことはほとんどありません。したがって妊娠期間を通じてサイロキシンの禁忌症はありません。妊娠中はサイロキシンの必要量が増し、TSHが上がることが多いので、専門医はわずかに投与量を増やします。

04 授乳と甲状腺疾患 ↑このページのトップへ
放射性同位元素は母乳の中に出るので、放射性同位元素を使う検査やスキャンを授乳中に行ってはなりません。

授乳中は、プロピルチオウラシルを使うことができます。これは実際に母乳中に出る量はごく微量であるためです。サイロキシンも母乳中に出ますが、母親への投与量が生理学的範囲内であれば、授乳中にサイロキシンを飲んでいてもまったく安全だと思われます。

05 不 妊 ↑このページのトップへ
甲状腺機能亢進症、または機能低下症の患者は、これらの病気に罹っていても妊娠することは可能であるのに、不妊症になる傾向があります。病気を治療し、甲状腺機能が正常になれば、すぐに受胎能が回復するので、バースコントロールを再開(そう望む場合は)するようにしてください。さらに、甲状腺の病気に罹っている男性や女性はどちらも性的欲求(性欲)が減少していることがよくあります。

06 月 経 ↑このページのトップへ
月経は甲状腺機能低下症で増え、甲状腺機能亢進症で減る傾向があります。甲状腺ホルモンが月経期間や卵巣機能、全身の内分泌系に及ぼす影響は複雑ですが重要なものです。したがって、甲状腺ホルモンの欠乏や過剰が生殖器系に様々な影響を及ぼすことがあります。思春期に甲状腺機能亢進症または機能低下症になった女の子は、月経機能に遅れが出る恐れがあります。

07 男性側の不妊症 ↑このページのトップへ
甲状腺機能亢進症または機能低下症も男性側の不妊の原因となることがあります。精子の発育には正常な甲状腺レベルであることが必要だからです。

08 女性側の不妊症 ↑このページのトップへ
甲状腺疾患に罹っている患者が不妊症になる原因がもう一つありますが、これは原発性卵巣機能不全というまれな病気です。これはバセドウ病や慢性甲状腺炎と同じような自己免疫性疾患で、血液中のたんぱく質と白血球が患者の卵巣のたんぱく質にくっついてしまうのが原因でおこります。このために卵巣が縮んでしまい、排卵ができなかったり、早期に閉経が起きたりして不妊症になります。

09 甲状腺疾患と乳房の線維嚢胞性疾患に対するヨード治療との関係 ↑このページのトップへ
理由はわかりませんが、乳房も甲状腺と同じように血液からヨードを取り込みます。さらに、様々な乳房疾患に対しヨード治療を行うと、これらの異常が著しく改善されることがわかりました。例えば、中年女性に多い乳房にシコリ状の結節ができる線維嚢胞性疾患にヨードがしばしば投与されます。

通常量の範囲内であれば、ヨードは甲状腺ホルモンの産生に必要なものです。大量のヨードにより甲状腺腫ができたり、様々な甲状腺疾患が生じたりすることがあります。したがって、乳房の病気のためにヨードを飲んでいる女性は、甲状腺腫や甲状腺疾患が起きる可能性があるということを意識しておかねばなりません。特に以前甲状腺疾患に罹ったことがあるか、甲状腺の異常の家族歴がある人は注意が必要です。乳房の病気を治療している医師は、6ヶ月毎に甲状腺の血液検査と診察を行います。

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