情報源 > 患者情報
[057]
[057]
インターネットと甲状腺疾患の診療:インターネットは甲状腺疾患の診療にどのくらい有用か
田尻淳一 田尻クリニック 熊本

実際の甲状腺疾患診療の場において、日本の保険医療制度下では個々の患者さんに十分な時間を取って納得のいく説明をすることは厳しいというのが現状です。そこで、限られた診療時間内では患者さんに伝えられない情報をインターネットで伝えられないものであろうか?結論からいいますと、インターネットはうまく利用すれば、甲状腺疾患の診療にとって有用になりうると考えています。

インターネットから甲状腺疾患に関する情報を得るには
例えば、患者さんが甲状腺の病気について知るためにインターネットを利用する場合、まず検索エンジンを使って目的とする病気についてのサイトを探します。例えば、一番内容的にも吟味された検索エンジンであるYahoo Japanで、検索項目に「甲状腺」と入力すると登録サイトとして32個出てきます。さらに、甲状腺をキ−ワードとして検索しますと、約29,700のページが出てきます。患者さんがこの全てに目を通すことは至難の業のように思います。具体的な病気として、バセドウ病と入力して検索しました。登録サイトとして11個出てきます。バセドウ病をキ−ワードとして検索しますと、約2,200のページが出てきます。これでも結構、骨が折れそうです。もっと、絞り込んでみましょう。「バセドウ病」と「治療」と入力します(この際、それぞれの言葉の間にスペースを一つ空けるとAND検索になります)。すると、登録サイトは1個になります。「バセドウ病」と「治療」をキ−ワードとして検索しますと、約1,450のページが出てきます。このように、検索条件を多くすれば、目的とする情報に辿り着けるわけです。便利な時代です。ただ、気をつけなければならないのは、情報は玉石混淆の状態です。かなり怪しげな情報もあります。首を傾げるようなものもあります。これはインターネットの特徴です。多くの情報の中から、適切な正しい情報を見つけだすのは本人の責任なのです。与えられるだけではなく、自分で取捨選択しなければなりません。Yahoo Japanに登録されている甲状腺に関するサイトは信用できます。この中から自分の知りたい情報を得るのが一番賢明な方法です。

短い診療時間内では医師から十分な説明が受けられないので、患者さんは自分で病気について勉強する必要がでてきます。今までは、本屋に行って、健康書のコーナーで甲状腺に関する本を探していたわけです。ここでも、インターネットが手間を省いてくれます。オンラインでショッピングができるのです。家に居ながらにして、本屋を見て歩くようなものです。検索で甲状腺と入力すれば、沢山の著書が出てきます。具体的に例を取りますと、アマゾン・ジャパンのHPで甲状腺と入力しますと、53冊の本が出てきます。そこには、本の内容なども説明してあり、まるで本屋の店先で本を手に取っているような感覚に陥ります。あとは気に入った本を注文するだけです。早ければ、注文して2〜3日で届きます。何と便利な時代でしょうか。

さらに、インターネットのメリットは情報交換が双方向にできることです。例えば、HPを公開しているサイトに甲状腺専門医はどこにいるかを聞くこともできます。病気についての質問を受け付けているサイトもあります。わたしも一時期、個々の患者さんから甲状腺の病気についての質問を受け付けていました。ここで、留意しなければいけないことは、実際に診察していないことです。時として、特殊な事情があることもあります。そのようなことを考慮しないで、無責任に回答した場合、先方の主治医に迷惑がかかることもあります。患者さんに誤解を受けることもあります。対面診察の場合、患者さんの表情なども分かりますので、その人に沿った説明をするわけです。でも、インターネットでのやりとりは顔が見えませんから、言い方ひとつとっても誤解の原因になる危険性を秘めています。アメリカなどの甲状腺に関するHPを見ていても、個々の患者さんからの病気の質問は受け付けていないところが多いようです。近くの甲状腺専門医を紹介するという対応をしています。

インターネットは甲状腺疾患の診療にどのように利用されるか
最近は、医療機関もHPを公開するところが増えてきました。印刷物よりコストコストが安くつきます。さらに、HPの場合には内容を変更することも簡単です。常に、新しい情報を患者さんに提供できます。ネックは、誰が内容の更新をするかです。更新をまったくしないサイトには訪れる人はだんだん減っていくでしょう。甲状腺の病気に関するHPの更新内容の吟味は、医師が自分で行うべきです。実際の難しい作業は医師の仕事ではありません。これは、プロと契約して任せるべきです。医師はあくまでもHPの内容を考えるのです。日常診療で疲れ果てた医師に、ルーチンワーク以外にHPの更新という仕事をするだけの余力があるかどうかです。そこには、ボランティアー精神が必要だと思っています。

医療機関のHPをみていますと、基本的には2つのタイプがあります。医療機関の宣伝に終始しているものと患者さんに情報を提供することに重きを置いているものです。インターネットは自由な空間ですから、いろいろなサイトがあって当たり前です。実際問題として患者さんに役に立つのは、後者です。日頃、診療時間が短くて、患者さんに十分な説明ができないと感じている先生方には、是非、ご自分のHPを立ち上げられて、患者さんに情報を公開していかれることをお勧めします。自分の患者さんからの質問は受け付けるべきです。何故かというと、実際に診察しているからです。診察時間に電話で応対するより、時間的に余裕があるとき、メールで返事する方が楽です。これは、医師本人がする必要はないと思います。職員から質問内容を聞き、口頭で回答したものを事務職員に返事してもらえばいいことです。これも、患者さんサービスの一環です。甲状腺の病気は慢性疾患が多いですから、患者さんの訴えも多彩です。ジレンマを感じている先生は多いはずです。その溝を少しでも埋めるためにインターネットを使ったHPによる情報公開が役に立てばと思います。

日本甲状腺学会がHPを立ち上げました。医師および患者さんに役立つ情報をどんどん公開していって欲しいものです。将来は、米国甲状腺学会(ATA)に負けないレベルのHPになることを期待しています。

代表的な甲状腺に関するHPは以下です。

もどる