情報源 > 患者情報 > |
|
[077] |
|
バセドウ病が兄弟、親子などの血縁者に出やすいことは、昔から分かっていました。いまだに遺伝子は見つかっていません。多分、単一遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子に関与しているのかもしれません。 先月、名古屋で行われた第46回日本甲状腺学会で、家族性バセドウ病について2つの施設から発表がありました。一つ目は、京都大学のグループからで、『家族性バセドウ病に関する全国疫学調査成績』という演題でした。もう一つは、別府・野口病院からの発表で『家族性バセドウ病症例に関する検討』です。それぞれの報告の簡単な説明をします。 |
|
|
まず、家族性バセドウ病とはどのようなバセドウ病をいうのかを説明します。 本人がバセドウ病で、兄弟姉妹、実の親、実の子など第一親等の誰か1人以上にバセドウ病が発病していたら、家族性バセドウ病といいます。すなわち、第一親等に2人以上のバセドウ病が発症したら、家族性バセドウ病となるわけでです。ここで、気になるのは、家族性バセドウ病と診断された場合、何か普通のバセドウ病と違うのかという点です。特に、治療に関してはどうかなど質問したくなります。 今回、2つの施設からの報告からすると、家族性バセドウ病だからといって、普通のバセドウ病と変わりなく、治療なども特に違いはありません。強いて言えば、家族性バセドウ病家系では、バセドウ病になる確率が普通の人の約19〜42倍高いことです。この事実から、家族性バセドウ病と診断されたら、家族の人も一度は、甲状腺機能検査を受ける方がいいかもしれません。 全国調査と野口病院で、家族性バセドウ病の頻度が大きく異なった理由を考える場合、野口病院が甲状腺専門病院であるという特殊な事情を考慮する必要があります。野口病院でバセドウ病と診断されたら、家族の人が心配して一度、検査を受けておこうと考えるのは、自然なことです。 野口病院では、現在、バセドウ病の原因遺伝子を検索中です。まだ、世界中でバセドウ病の遺伝子を見つけた人はいません。難しいが、やり甲斐のある仕事です。これからの研究成果に期待しましょう。 余談になりますが、バセドウ病の年間発生頻度は日本人の場合、10万人に80人と言われています。しかしこれは少し、低すぎると思います。この研究は今から30年前のもので診断技術がまだ未熟なときのものであり、見逃しのケースも多々あったと思われます。現在のアメリカでの、バセドウ病の年間発生頻度は10万人に330人(0.3%)です。現在は、診断技術も進歩しており、軽症も診断できますので、これくらいが妥当と思います。 最近の研究によると、日本人のバセドウ病家系の年間発生頻度は、0.86%です。これからすると日本人のバセドウ病の年間発生頻度の約3倍程度の多さになります。男性は女性の5分の1ですので、バセドウ病の発生頻度は低いのですが、やはり、その家系なら普通の男性と比べて、バセドウ病になる確率は3倍高いことになります。ここで述べているバセドウ病の発生頻度は、家族内にバセドウ病が一人いる場合のバセドウ病になる確率です。ここが、今回の報告と違う点です。今回の研究は、第一親等に2人以上のバセドウ病がいる家族性バセドウ病のバセドウ病になる確率は、約19〜42倍であるということです。何はともあれ、バセドウ病と診断されたら、一度、家族の方の甲状腺機能を調べておいた方がいいかもしれません。 |
[もどる] |