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91の回答が寄せられた、そのうち84はヨーロッパからのものである。ヨーロッパ以外の7通はこの研究から除いた。3つの施設では、2通の回答が返ってきた。これらはそれぞれ、別々に解析した。他に2つの施設から2通の回答が返ってきたが、これらは一つとしてまとめた。結局、ヨーロッパの82の施設からの回答を解析した。主な回答施設は、ドイツ(16施設)、イタリア(12施設)、イギリス(9施設)、デンマーク(8施設)、フランス(8施設)、オランダ(5施設)であった。 |
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過去6ヶ月間の各施設でのバセドウ病患者は平均104人であった(10〜500人)。何らかの甲状腺眼症の症状を持つ患者は、平均56人(2〜480人)であった。甲状腺眼症の17%に対して副腎皮質ホルモン剤が投与された(イギリスでは4%、ドイツでは28%)。甲状腺眼症の8%に対して球後照射が行われた。最も多いのはドイツ(21%)とオランダ(13%)であった。反対に少ないのは、イタリア、イギリス、デンマークなどを含む他のヨーロッパの国々である(2〜4%)。外科的眼窩減圧術はドイツで最も多く(11%)、他の国では1〜4%と少なかった。
回答の43%は甲状腺眼症の頻度は減少していると感じ、42%は不変、12%は増加していると感じていた。4%は分からないと答えた。甲状腺眼症の頻度が増加していると感じた回答のうち一つは専門病院のメンバーであり、残りはハンガリー(3施設中3施設)、ポーランド(2施設中2施設)、オーストリア、(2施設中1施設)、ギリシャ(2施設中1施設)、フィンランド(1施設中1施設)、スイス(3施設中1施設)であった。フランスの回答した8施設中7施設、イギリスの回答した9施設中7施設が甲状腺眼症の頻度は減少していると答えた。 |
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【表1】に示した典型例(Index patient)に対しては83%が外来で検査すると答えた。入院で検査すると答えたのは17%のみである。イギリスとオランダでは、全員一致で100%外来で検査すると答えた。各国の外来で検査すると答えた比率は、ドイツ94%、イタリア92%、フランス50%。回答の40%は、【表1】に示した提示例(Index
case)のように重症なタイプは内分泌科と眼科のある専門病院へ紹介すると答えた。50%は眼科医に紹介すると答えた。内分泌科と眼科のある専門病院へ紹介すると答えた比率は、ドイツ(13%)からフランスやイタリア(75%)までかなりの格差がみられた。【表2】に甲状腺眼症の検査を示した。NO
SPECS(Werner, 1977)以外の分類に関しては、6つの施設では自分たち独自の分類を、6つの施設ではMourits
et al.(1989)が勧める分類を、3つの施設では欧州甲状腺学会や他の学会(1992)が勧める分類を、1つの施設では、眼の写真で分類した。【表2】以外の検査としては、視能訓練士による眼球運動試験(6施設)、視覚誘発電気試験(3施設)、眼圧測定(2施設)、視神経乳頭反応(1施設)、血清と尿のグルコースアミノグリカン測定(1施設)などがあった。行われた検査の平均は、8.3(4〜13)であった。18施設では超音波にCTもしくはMRIを追加しており、5施設ではCTとMRIを行い、5施設ではoctreotideシンチ<注釈:octreotideはソマトスタチンというホルモンのアナログで、外眼筋にソマトスタチンの受容体を沢山持っていれば、このシンチを行うと、octreotideが取り込まれる>にCTもしくはMRIを追加していた。
画像診断以外は、各国間で甲状腺眼症を治療するのに大きな差はみられない。CTスキャンを32%で行うドイツの施設では、MRIを50%の症例で行う。CTスキャンをデンマークとオランダでは、それぞれ88%と100%の症例で行うが、MRIはそれぞれ13%と0%である。Octreoスキャン(octreotideシンチ)は、オランダ、イタリア、オーストリア、ポーランド、ベルギー、ドイツで行われているだけである。TSHレセプター抗体はイギリスで44%からフランスでは100%で測定している。 |
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甲状腺眼症の提示例(Index case)に対しては、全ての回答施設が何らかの治療を行っていた。まず最初にすることは、就寝時に枕を高くすることや角膜の保護などの一般的な治療(88%)、特にタバコを中止することを指示する(92%)回答が多かった。利尿剤は21%が選択した。対症療法は重要である(メチルセルロースの点眼液が76%で使用され、複視に対してプリズムを18%の回答施設が選択した)。甲状腺眼症に対する治療については82%の回答施設が同意している。それぞれの治療については【図1】で示している。副腎皮質ホルモン剤が一番選択された。単独で、56%、球後照射との併用で18%。球後照射単独はたったの5%で選択されたのみである。副腎皮質ホルモン剤とoctreotide<注釈:octreotideは眼症の治療にも使用される>の併用が1%、副腎皮質ホルモン剤と眼窩減圧術が1%であった。 |
【図1】提示例の甲状腺眼症に対する治療法の比率 |
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a)発症時
b)8週間以上経っても増悪する時
2つ以上の治療法を選んでいる施設がある。 |
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8週間以上、甲状腺眼症が悪化する例に対しては、全ての回答施設は球後照射、副腎皮質ホルモン剤、眼窩減圧術、別の免疫抑制剤を選択した【図1】。一部の回答施設は一つ以上の治療法を選択したことを特に知って欲しい。提示例(Index
case)を最初に治療したときと比べると、副腎皮質ホルモン剤の使用が減って(p<0.001)、球後照射(p<0.01)と眼窩減圧術(p<0.001)が有意に増えた。回答施設の40%が副腎皮質ホルモン剤から球後照射へ切り替えた。球後照射から副腎皮質ホルモン剤への切り替えは、1%のみであった。回答施設の7%が副腎皮質ホルモン剤から眼窩減圧術単独へ切り替えたにすぎない。15%の回答施設が副腎皮質ホルモン剤無効の場合に、眼窩減圧術と球後照射の併用を選択した。8週間の治療で効かない場合は、他の免疫抑制剤としてはサイクロスポリンAとアザチオプリンがそれぞれ6%選択された。2%が免疫グロブリンの静注、5%が血漿交換、1%がそれぞれoctreotideとメトトレキセートを選択した。
初回治療時と8週以後の副腎皮質ホルモン剤の投与量は、66施設の回答できちんと書かれていた。内服で副腎皮質ホルモン剤を投与した55施設のうち、20%は一日プレドニゾロン10〜40mg、65%は一日プレドニゾロン40〜80mg、15%は一日プレドニゾロン80mg以上であった。メチルプレドニゾロンの点滴治療に関しては、36%は3gで中止しており、残り64%は3g以上を投与している(最高は4ヶ月以上で22g)。メチルプレドニゾロン点滴単独は6施設であり、このうちの2施設では内服副腎皮質ホルモン剤かメチルプレドニゾロン点滴を選択し、甲状腺眼症が悪化したら、内服副腎皮質ホルモン剤からメチルプレドニゾロン点滴に切り替えるというコメントであった。9施設ではメチルプレドニゾロン点滴終了後に内服副腎皮質ホルモン剤に切り替えているが、このうち3施設では球後照射を併用している。23施設では、副腎皮質ホルモン剤の投与期間を明確にしている。1ヶ月以内が9%、1〜3ヶ月間が70%、3ヶ月以上が21%であった。
少数の例外を除いて、球後照射の投与量は2週間以上かけて20Gy(グレイ)であった。例外の内訳は、10Gy(3施設)、そのうちの1施設では3ヶ月間かけて10Gyを投与していた。1施設では、症例により16、18、20Gyと分けており、投与期間は3週間以上である。8施設では、甲状腺機能が正常化することが、甲状腺眼症の治療開始の条件であるとコメントしており、このうちの2施設では甲状腺全摘術を前提としている。
各国間での大きな違いは、次のようなものである:発症時治療として、利尿剤の投与頻度では、21%が利尿剤を使用するが、イギリスで一番多く(44%)、反対に少ないのがイタリア(8%)、ドイツ(6%)、オランダ(0%)であった。メチルセルロースの点眼液は76%が使用すると答えたが、ドイツでは、44%と少なかった。球後照射は回答のあったオランダからの4施設では全て行うと回答されていたが、イギリスでは11%とあまり球後照射をしないとの回答であった。副腎皮質ホルモンに関しては、デンマークからの8施設全てで使用と回答があったが、イギリスでは11%と少なかった。
甲状腺眼症の悪化に対しては、イギリスでは球後照射は22%であったが、ドイツとフランスでは63%に球後照射を行うが、反対に副腎皮質ホルモンはイギリスでは89%が使用するが、ドイツ、デンマーク、オランダでは25%と低かった。他の免疫抑制剤の使用はデンマークで100%、ドイツとフランスでは13%、イタリアでは8%であった。眼窩減圧術はイタリアでは50%、フランスでは13%であった。 |
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甲状腺眼症の提示例(Index case)に対して、初回と二回目の甲状腺機能亢進症の治療の選択については【表3】に示している。初回治療に比べて、再発時の治療はかなり変わることが分かる。4施設では初回治療から甲状腺全摘術を行うので、再発はないとのコメントであった。抗甲状腺剤による治療は初回では84%と多いが、再発すると32%に有意に減る(p<0.001)。再発すると、手術が42%(p<0.001)、アイソトープ治療が25%(p<0.002)と増える。手術する場合には、眼症の悪化を予防するために、副腎皮質ホルモン剤を1日20〜40mgを2〜3ヶ月間投与する。アイソトープ治療の場合には、同じく眼症の悪化を予防するために、副腎皮質ホルモン剤を1日30〜100mgを2週間〜3ヶ月間投与する。
回答施設の60%が眼症の症状は、甲状腺機能亢進症の治療に影響を及ぼすと答えている(イタリアやオランダでは25%、フランスやデンマークでは88%)一部の施設では、何故、眼症のある場合に甲状腺機能亢進症の治療を変えるかの理由を書いている。眼症のある場合に甲状腺機能亢進症の治療を変える施設のうち、67%が重症の眼症のある場合にはアイソトープ治療を避ける、27%はアイソトープ治療や手術を行うときに副腎皮質ホルモン剤を併用する(初回、再発時にかかわらず)、18%は甲状腺全摘術を行う(この治療で、眼症が良くなるので)、8%は通常より多目の抗甲状腺剤を使う、6%は早めにアイソトープ治療を行うか投与量を多くすると答えた。
初回治療として、抗甲状腺剤と甲状腺ホルモン剤を併用する方法(block-replace regimen)が、フランスとオランダでは100%、イギリスでは89%、反対にドイツでは6%、イタリアでは17%であった。しかし、漸減法(抗甲状腺剤を徐々に減らす方法)がドイツでは63%、イタリアでは67%であった。驚くことに、ドイツの施設の31%が甲状腺全摘術と予防的ステロイド使用を推奨している。再発例に対しては、オランダとフランスではアイソトープ治療が行われない。イギリスでは1施設のみ(11%)がアイソトープ治療を行うのみである。反対に、イタリアでは67%が、ドイツでは56%が、デンマークでは50%がアイソトープ治療を行う。 |
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甲状腺眼症の提示例(Index case)のそれぞれ別の状況の詳細を【表4】に示す。2%の回答施設のみが9つの異なった状況に拘わらず、同じ治療をすると答えたのみである。5番目の条件、視神経圧迫症状のあるときが一番、治療の変更を選択した(73%)。次が、糖尿病を持っている場合(条件9)で、57%が治療の変更を選択した。片眼のみの眼症状(条件6)では10%が、甲状腺機能亢進症のない場合(条件7)では7%が治療の変更を選択したのみである。 |
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【表4】に条件に対する治療法の変化を示している。条件5(p<0.001)と条件9(p<0.01)において典型例(Index
case)と比較して、入院の率が高くなっていた。条件5(視神経圧迫)ではさらに眼症の検査を要した。22%では全体的な検査を増やした、10%では画像診断検査を追加した。Octreoスキャンは条件4で2人、条件5で1人、条件7で1人行われたのみである。 |
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分析を単純化するために、条件によって変える治療法のみ詳しく述べた。条件によっても変わらない治療法は割愛した。条件によって変かる治療法は【表5】をみて明らかなように、条件4,5,8,9である。
条件5(視神経圧迫)では、82施設中60施設(73%)で治療法を変えると回答した。その変更する治療法の内訳は、眼窩減圧術がもっとも多かった(57%、p<0.001、典型例(Index
case)と比較して)。他の、免疫抑制剤は増えたが(p<0.002)、副腎皮質ホルモン剤は減少した(p<0.001)。
条件9(糖尿病の併発)の場合は、さらに複雑である。典型例(Index case)と比較して、副腎皮質ホルモン剤は減少したが(p<0.001)、眼窩減圧術は増え(p<0.02)、球後照射は不変であった。82施設中47施設(57%)では、治療を変更し、このうちの65%は副腎皮質ホルモン剤の糖尿病に与える悪影響を考慮してのものであった。治療を変更した施設のうち、40%は副腎皮質ホルモン剤単独か副腎皮質ホルモン剤と球後照射の併用を球後照射単独に変更し、15%では副腎皮質ホルモン剤の投与量を減らしたり、球後への副腎皮質ホルモン剤の局注に切り替えた。全く対照的に、治療を変更した施設の19%が糖尿病を持っていると球後照射は禁忌であるとしており、副腎皮質ホルモン剤を使用すると回答していることである。治療を変更した施設の10%では、典型例(Index
case)では眼症に対して治療をしなかったが、糖尿病を持っていると積極的な治療をすると回答した。治療を変更した施設の17%では、眼窩減圧術を行うと回答した。
条件8(軽度の眼球突出のみ)では、82施設中21施設(26%)では、無治療に変更すると回答した(p<0.05、典型例(Index case)と比較して)。16施設では、副腎皮質ホルモン剤を中止するか、副腎皮質ホルモン剤と球後照射の併用を副腎皮質ホルモン剤単独に変更すると回答した。
82施設中25施設(30%)において大きな治療法の変更を引き出したその他の条件は、条件4(6ヶ月間眼症が落ち着いている状態)である。副腎皮質ホルモン剤と球後照射の使用が減って、無治療に変更すると回答した(p<0.05、典型例(Index
case)と比較して)。13施設では、副腎皮質ホルモン剤か球後照射を中止したり、球後照射単独から副腎皮質ホルモン剤に変更すると回答した。一方、7施設では眼窩減圧術を推奨し、2施設では副腎皮質ホルモン剤から球後照射に変更、1施設では副腎皮質ホルモン剤経口投与から副腎皮質ホルモン剤点滴投与に変更すると回答した。 |
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回答施設の45%で、8つの条件のうち、ひとつ以上の場合で、甲状腺機能亢進症の治療を変更すると回答した(条件7は甲状腺機能正常なので、除外した)。しかしながら、条件3(抗甲状腺剤中止後の再発)を除いて、各々の条件では、甲状腺機能亢進症の治療を変更すると回答したのは10%以下である。条件3の場合は、抗甲状腺剤の使用が減り(p<0.001、典型例(Index
case)と比較して)、3/4は球後照射より眼窩減圧術を勧めている。 |