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母親の方は甲状腺ホルモンレベルが高く、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の抑制があり、TSH結合阻害抗体(TBIAb)が陽性であることからバセドウ病と診断された。バセドウ病による甲状腺機能亢進症のために1日300mg以上のPTUを飲んでいる母親から母乳だけで育てられている乳児11名を対象とした。11名の乳児は全員1987年6月から1998年11月までの間に生まれた。その母親は授乳を望んだか、あるいは人工乳で育てることができなかった患者である。11名の母親のうち9名は産後1〜6ヶ月の間にPTUを開始した。残り2名の母親は妊娠直前または妊娠中にMMIを飲み始め、皮膚アレルギーが起きたためにPTUに変更した。生後10ヶ月以内に、11名の乳児のうち9名でTSH濃度を1回、残り2名の乳児では複数回検査した【表1】。11名のうち5名の乳児でTBIAbの抗体価も甲状腺機能検査時に測定した。乳児の検査の前後1週間以内に母親のフリーT4(FT4)およびTBIAbレベルを検査した。妊娠中から出産後もPTUを続けて飲んでいた母親2名は、出産時のTSHとTBIAbレベルを臍帯血で測定した。
臍帯血での正常範囲は、その時期に出産した健康な母親の臍帯血サンプルから得たデータを使って定めた。当院の検査室では、FT4とTSH濃度の測定法が研究期間中に変更された。TSH濃度はBoots-Celltech
Sucrosep TSH IRMA(Celltech Diagnostic Ltd, Slough, UK)を用いた免疫学的放射能測定分析法、Delfia
TSH Kit(Wallac, Turkin, Finlnad)またはLumipulse TSH Kit(Fuji Rebio Inc.,
Japan)を用いた蛍光抗体法で測定した。FT4濃度はAmerlex M FT4 Kit(Amersham International,
Amersham, UK), Amerlex MAB FT4 Kit(Amersham International), IMx FT4
Kit(Abott Laboratories, Chicago, IL, USA), またはLumipulse FT4 Kit(Fuji
Rebio Inc., Tokyo, Japan)を用いて測定した。TBIAbレベルは、TSHR-Abアッセイキット(Cosmic
Co., Tokyo, Japan)を用いた放射能受容体アッセイで測定した。TSHとFT4の正常範囲は使用したアッセイ法によってわずかに違っていた。健康な妊娠していない成人女性では、どのアッセイ法でもTSH濃度の下限が0.3mU/lで、上限はそれぞれ4.6、4.0または3.5mU/lであった。FT4の正常範囲の下限と上限はそれぞれ10.3または12.9pmol/lおよび23.1または24.4pmol/lであった。また、TBIAbの正常範囲は<10%であった。臍帯血では、TSHとTBIAbの正常範囲上限はそれぞれ16.0または19.2mU/l、および13.4%であった。統計学的な有意性をStudent
t検定を用いて分析した。 |
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