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【図1】に放射性ヨード摂取率検査と画像診断が好んで実施されていることがはっきり示されている。回答者には提示患者を来院患者か、あるいは入院患者として診査するかどうか、シンチと/または摂取率検査を行なうかどうか、どのアイソトープを採用するか、そしてどの時点で行なうかを尋ねた。アイソトープ(放射性同位元素)の選択に関しては、アメリカ甲状腺学会と日本甲状腺学会の回答者では、123-Iがシンチと摂取率検査の両方に選択されており、ヨーロッパ甲状腺学会の回答者はシンチにはテクニチウムを、また摂取率検査には123-Iを好んで使っていた。シンチで摂取率を調べていたのはアメリカ甲状腺学会の回答者では45%のみで、シンチを使わずに摂取率検査の結果を得ていたのは53%であった。対照的に、ヨーロッパ甲状腺学会の回答者の67%と日本の回答者の90%が摂取率検査時にシンチを行なっていた。 |
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次に、実際の診療で提示患者のような患者に対するルーチン検査として、どのようなものを通常、あるいは実際に使っているかを回答者に尋ねた。これには血清総サイロキシンレベル(TT4)、血清総トリヨードサイロニンレベル(TT3)、TSH、T3レジン取り込み(R
T3U)に基づく遊離T4指数(FTI)、遊離T4(FT4)、遊離T3(FT3)、コレステロール、サイログロブリン(Tg)、抗Tg抗体、抗マイクロゾーム抗体、および抗TSHレセプター抗体を含む項目の一覧の該当項目にチェックを入れて貰うようにした。さらに、尿中ヨードの測定だけでなく、サイロトロピン放出ホルモン(TRH)刺激試験もできるかと言う項目を加えた。
一般に、アメリカ甲状腺学会とヨーロッパ甲状腺学会では提示患者に対し、TT4、TT3、FTIおよびTSHを測定することで一致していた【図2】。アメリカの回答者の84%と日本の回答者の92%が非常に感度の高いTSHアッセイを採用していた。TT4、TT3を採用していた日本甲状腺学会回答者の割合はアメリカ甲状腺学会やヨーロッパ甲状腺学会とほぼ同じであったが、TSHの測定は回答者の90%が行なっていた。その一方でFTIはほとんど使われていなかった。実際に、【図3】にはアメリカ甲状腺学会やヨーロッパ甲状腺学会の回答者でははるかに高い頻度で使われているFTIが日本甲状腺学会でほとんど使われておらず、より直接的な遊離ホルモンアッセイの方が好まれていることがはっきり現れている。一般的に、日本甲状腺学会とヨーロッパ甲状腺学会の回答者は、アメリカ甲状腺学会の回答者よりもはるかに高い頻度でTRH刺激試験や血清Tg、抗Tg抗体、抗マイクロゾーム抗体および抗TSHレセプター抗体の測定を行なっていた。ただし、ヨーロッパ甲状腺学会の調査はアメリカ甲状腺学会の調査より18ヶ月ほど前に実施されており、感度の高いTSHアッセイがちょうど導入されたばかりで、TRH刺激試験にとって変わる状態ではなかったことを頭に入れておく必要がある。 |
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診断用検査が完了した後、治療の選択はすべて医師が行なうものとして、回答者はこの提示患者に対し、どのタイプの治療を勧めるかを問われる。【図4】にはすべての回答者による治療選択の内訳を示してある。アメリカ甲状腺学会の臨床医の69%が提示患者に対し、抗甲状腺剤や甲状腺切除手術よりも放射性ヨードの方を選択している。それと対照的に、ヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会の回答者は、抗甲状腺剤治療を好んで選択していることが明らかである。アメリカ人の好みとは対照的に、放射性ヨード治療を選択したヨーロッパ甲状腺学会回答者は5人に1人、また日本甲状腺学会回答者は10人に1人であった。この患者に対し、3つのグループとも手術を選ぶことに熱心でないということに関して一致していた。 |
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抗甲状腺剤治療を選んだ回答者には、どの薬剤を選択するか、検査や臨床パラメーターに基づいて治療を変更するかどうか、抗甲状腺剤単独で使うか、それともβ-遮断剤と併用、あるいは甲状腺ホルモン剤と組み合わせて使うかを尋ねた。また、一定の決まった期間治療を続けるかどうか、そしてもしそうならどれくらいの長さであるか、治療中止に使う基準(数種の選択肢を与えてある)は何かということも尋ねた。
抗甲状腺剤使用を選んだ回答者のうち、アメリカ甲状腺学会では明らかにプロピルチオウラシル(PTU<注釈:日本ではプロパジールまたはチウラジール>)が好まれ、その一方でヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会の回答者が選択する薬剤はメチマゾール(MMI<注釈:日本ではメルカゾール/またはヨーロッパではカルビマゾール>)となっていた【図5】。アメリカと日本の回答者は抗甲状腺剤を単独で使用するのを好み、一方ヨーロッパの回答者は抗甲状腺剤と甲状腺ホルモンを組み合わせて使っている者がほぼ半数であった。_-遮断剤は調べたすべてのグループで同じように使われており、治療初期のみに限られていた。3つのグループすべての会員が同じようなアプローチで抗甲状腺剤の用量変更をしており、患者が甲状腺正常状態に達したか、あるいは数週間の治療後任意の時点で変更を行っていた。用量の変更は、臨床検査と臨床パラメーターのいずれか、あるいは両方の改善または悪化に基づいて行なわれていた。回答者全員が1〜2年の決まった期間抗甲状腺剤治療を行なう方法を好む傾向があった。治療は日本甲状腺学会回答者では1〜2年後にT3抑制試験またはTRH試験、あるいはTSHレセプター抗体の消失に基づき中止されていた。 |
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提示症例に対し、放射性ヨード治療を選択した回答者に、治療の目標が患者を甲状腺正常状態にすることにあるのか、それとも意図的に十分な甲状腺組織を破壊し、患者を甲状腺機能低下症にし、生涯甲状腺ホルモン補充治療に依存させることにあるのかを尋ねた。また、治療用線量は決まった線量であるのか、あるいは甲状腺腫のサイズや放射性ヨード摂取率、またはその他のファクターを元に計算するのかを尋ねた。さらに、放射性ヨード治療の前後に抗甲状腺剤を補助治療に使うかどうか、最初の線量で治癒に至らなかった場合は2度目の治療線量を投与するのかどうか、投与する場合はいつするのかを尋ねた。
回答は【図6】に示したが、3つのグループすべて、特に日本甲状腺学会は治療の目標を甲状腺正常状態の回復に置いていることが明らかである。アメリカ甲状腺学会の回答者は、抗甲状腺剤による補助治療を放射性ヨード治療の3〜7日前までに使用する傾向がある(ヨーロッパ甲状腺学会の情報は入手できない)が、アメリカ甲状腺学会とヨーロッパ甲状腺学会の回答者の43%と日本甲状腺学会の回答者の81%が抗甲状腺剤を放射性ヨード治療用線量投与後に使う方を選んでいた。【図7】に示すごとく、全回答者の3分の2以上が投与する放射性ヨードの線量の計算や決定に24時間放射性ヨード摂取率試験と甲状腺腫の大きさを使っており、ヨーロッパ甲状腺学会とアメリカ甲状腺学会の回答者のほぼ100%ができれば1回の投与で済ませたいと思っている。また、ヨーロッパ甲状腺学会とアメリカ甲状腺学会のほぼ100%が1回目の投与で効果がないことがはっきりすれば2度目の放射性ヨード投与を行い(日本甲状腺学会のデータは入手できない)、2度目の投与はアメリカ甲状腺学会の回答者とヨーロッパ甲状腺学会の回答者の半数が平均4〜6ヶ月後に行なうとしており、ヨーロッパ甲状腺学会の残り半数と日本は2度目の治療が必要な場合、最初の治療からそれぞれ10〜12ヶ月後または6〜12ヶ月後に行なうと回答している。 |
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アンケート調査の第4部で、回答者に【表2】に提示した患者の8種類のバリエーションに基づき、治療がどのように変わるかを尋ねた。 |
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甲状腺腫の大きさのバリエーションでは、アメリカ甲状腺学会の回答者の好む治療が【図8】にはっきり出ている。甲状腺腫の大きさが80gの患者でも、まだ治療の選択は放射性ヨードであるが、甲状腺腫のない患者では抗甲状腺剤とほぼ半々になっている。甲状腺腫が大きな場合、手術が選択される頻度が提示患者より高くなっている。ヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会の回答者の治療選択への甲状腺腫の大きさの影響を比較したものが【図9】である。アメリカ人が放射性ヨードを好むのとは対照的に、大きな甲状腺腫に対してヨーロッパ甲状腺学会では手術を選択する頻度が高くなっていた。同様に日本甲状腺学会でも大きな甲状腺腫に対して、手術を選択する頻度が高くなっていた。目立った甲状腺腫のない患者に対する治療選択として、ヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会は抗甲状腺剤を選択する割合がはるかに高かった。 |
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次のバリエーションは病気の重症度の程度、または以前受けた手術や抗甲状腺剤治療を受けた後の再発である。アメリカ甲状腺学会の回答は【図10】に出ているが、提示患者より重症度が高い場合には、抗甲状腺剤を使う傾向がわずかに高くなっている。しかし、放射性ヨードが治療の選択となっていることは変わらない。放射性ヨードは、以前に抗甲状腺剤治療を受けたか、手術を受けた後に再発した場合のバリエーションに対しても、やはり選択される治療となっている。【図11】に、重症度の程度、または再発のバリエーションに対するヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会の治療選択をアメリカ甲状腺学会のものとの比較を載せたが、アメリカ甲状腺学会の臨床医は提示患者に対するのと同じように、重症度の高い場合も放射性ヨード治療を好むのに対し、ヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会の回答者は明らかに抗甲状腺剤による治療を好んで選択していた。再発疾患に対しては、ヨーロッパ甲状腺学会とアメリカ甲状腺学会のどちらも放射性ヨード治療を好むという点で一致していたが、日本甲状腺学会側では放射性ヨード治療をあまりやりたがらない傾向がはっきりしており、回答者の約半数が2回目の治療にも抗甲状腺剤を使うとしていた。 |
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【図12】に、患者が男性か、女性か、また提示患者より年齢が低いか高いかで、アメリカ甲状腺学会の回答者がどのような治療を選択するかを挙げた。放射性ヨードはやはり、男性患者に対しもっとも人気のある治療法となっており、予測どおり年齢が高い患者ではなお一層好まれる治療となっている。しかし、若い患者(19歳)に対してのみ、アメリカ甲状腺学会の臨床医は放射性ヨード治療よりも抗甲状腺剤の方を選ぶ傾向が高くなっている。ヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会回答者の治療の好みをアメリカ甲状腺学会の回答者のものを比較したのが【図13】であるが、患者が女性から男性に代わっても治療法の好みは変わらず、アメリカ甲状腺学会は放射性ヨードであるのにヨーロッパ甲状腺学会と日本甲状腺学会ではやはり抗甲状腺剤を選択していた。年齢の高い患者に対して放射性ヨード治療を選択するという点ではアメリカ甲状腺学会とヨーロッパ甲状腺学会は一致していたが、日本甲状腺学会では放射性ヨード治療を選ぶのは4分の1にしか過ぎなかった。19歳の患者というバリエーションに対しては、抗甲状腺剤を選ぶということで全体が一致していた。それでも、アメリカ甲状腺学会は他の2つのグループより放射性ヨードを進んで使う傾向がはっきり出ていた。 |