慢性甲状腺炎には5つの問題があります。 |
1 |
びまん性甲状腺腫 |
……甲状腺が腫れること |
|
|
|
2 |
甲状腺機能低下症 |
……甲状腺の働き不足 |
|
3 |
無痛性甲状腺炎 |
……甲状腺ホルモンが一時的に高くなったり低くなったりすること |
|
4 |
急 性 増 悪 |
……甲状腺が痛くなること |
|
5 |
悪 性 リ ン パ 腫 |
……甲状腺にリンパ球のシコリができること(大変希です) |
|
一つめは、甲状腺が全体的に腫れることです(できものの病気と違います)。これを“びまん性甲状腺腫”と言います。甲状腺の腫れが大きいときは甲状腺ホルモン剤を飲むと腫れが縮むことがあります。 |
二つめは、甲状腺の働きが落ちることです。これは甲状腺機能低下症と言います。
甲状腺機能低下症は海草を控えるか甲状腺ホルモン剤を飲みます。甲状腺ホルモンは飲み過ぎると、骨が弱ることがあります(骨粗鬆症)。しかし、甲状腺の働きを正常にする量では骨は弱りません。 |
三つめは、出産などを契機として甲状腺の働きが異常になることです。出産後でなくても起こります。これを無痛性甲状腺炎と言います。
慢性甲状腺炎をもつ人は、出産後には甲状腺ホルモンを調べたほうが良いでしよう。 |
四つめの問題は、慢性甲状腺炎の人で希に甲状腺部に痛みを訴える人がいます。これを“慢性甲状腺炎の急性増悪”と言います。
症状は亜急性甲状腺炎と同じく甲状腺部の痛みと発熱です。亜急性甲状腺炎と違うところは、副腎皮質ホルモン剤で治療してもなかなか治らないことです。場合によっては、1〜2年間も副腎皮質ホルモン剤を中止できない症例もあります。このような場合には、手術を要することもあります。 |
五つめの問題は、希ですが甲状腺に“悪性リンパ腫”がでてくることです。しかし、このタイプはリンパ球のB細胞ですので、治療によりほとんどの場合治ります。一般の悪性リンパ腫はリンパ球のT細胞であり、命を落とすこともあります。ここが甲状腺悪性リンパ腫と大きく違うところです。 |
慢性甲状腺炎による甲状腺の腫れを小さくする治療<152例> |
慢性甲状腺炎152例に対して甲状腺ホルモン剤を投与して、甲状腺の腫れが縮小するかどうかをみました。 |
治療前の甲状腺機能低下例<73例> |
甲状腺の働きが低下している例では甲状腺ホルモン剤を十分量投与すると、8割は甲状腺腫が縮小します。 |
縮小あり |
39例 |
54% |
縮小なし |
34例 |
46% |
↓
|
|
|
|
治療前の甲状腺機能正常例<79例> |
甲状腺の働きが正常な例でも十分量の甲状腺ホルモン剤と投与すれば、4割は甲状腺腫が縮小します。 |
縮小あり |
24例 |
30% |
縮小なし |
49例 |
70% |
↓
縮小あり |
16例 |
40% |
縮小なし |
24例 |
60% |
|
|
|
|
甲状腺ホルモン剤服用にて甲状腺腫が縮小した例の超音波を提示します。 |
|
※甲状腺の容積が66%以下になったときを【縮小あり】としました。 |