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[048]2003年12月1日
[048]
甲状腺組織を全部切除すると甲状腺自己抗体は消失する
田尻クリニック / 田尻淳一
最新のアメリカ内科学会雑誌に、イタリアのグループが「甲状腺組織を全部切除すると甲状腺自己抗体は消失する」という内容の発表を行った(Ann Intern Med 2003; 139: 346-351)。対象は1976年〜1994年までに、橋本病もしくはバセドウ病を合併した甲状腺癌患者182人。患者は、甲状腺全摘術後に放射性ヨード治療を受けた。観察期間は、平均10.1年(4〜20年)である。抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体、TSHリセプター抗体を経時的に測定した。結果は、すべての症例で抗TPO抗体(平均6.3年)、抗サイログロブリン抗体(平均3.0年)、TSHリセプター抗体(全例6年以内)は消失した。この研究から、自己抗体の消失は自己抗原(甲状腺組織)の消失に因ると考えられる。

妊娠可能年令の女性に対してアイソトープ治療を行った後にTSHリセプター抗体が高くなる症例では新生児バセドウ病が問題になるが、彼らの結果が本当なら、甲状腺組織を完全に破壊する量のアイソトープを投与するとこの問題が解決するかもしれない。
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