甲状腺疾患を持つ人における仕事への影響
以前から甲状腺機能亢進症や甲状腺眼症を持つ人では、欠勤や病欠がよくみられるという報告はされていました。ただ、これらの報告では症例数も少なく、甲状腺疾患を持たない人との比較がなされていないため、信頼性に欠けていました。
米国内分泌学会から出版されている臨床内分泌代謝雑誌『JCEM』の最新電子版によりますと、しっかりとした研究デザインで行われた結果として、甲状腺疾患の診断がなされて1年以内では、甲状腺疾患を持つ人は有意に欠勤の頻度が増えるということがわかりました。特に、バセドウ病眼症を持つ人において欠勤の頻度が高いことがわかりました。
従来の研究では、甲状腺機能低下症の人でも欠勤の頻度が増えるといわれていました。しかし、今回の研究では甲状腺機能低下症では、欠勤の頻度は増えないという結果でした。甲状腺機能亢進症やバセドウ病眼症では、欠勤の頻度が増えるという結果は同じでした。
今回の研究では、5000人以上の人を対象にしている大規模研究であり、年齢や性を合わせたコントロール(甲状腺疾患を持たない人)と比較している点など、従来の少数での研究結果と比べて信頼性が非常に高いものです。
しかし、甲状腺がんを研究対象から除外している点など問題点もあります。甲状腺がんの人も欠勤が増えることは想像に難くないですので、この点については今後の課題です。