空港での放射線感知器:アイソトープ治療後
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが起こりました。大変な惨事でした。その後、各国でテロ対策が厳しくなりました。特に、空港は機内への危険物持ち込みをチェックするために大変厳しくなりました。
放射性物質をテロに使用する可能性があり、各空港に従来の金属感知器に加えて、放射線感知器が設置されました。今では、日本を除いて世界中の主な国では空港に放射線感知器を設置しています。
バセドウ病でアイソトープ治療を受けた人はしばらくの間、ガンマ線が体内から出ます。空港に設置された放射線感知器は大変敏感で、微量のガンマ線を感知します。バセドウ病でアイソトープ治療を受けた場合、他人への影響は数日でなくなりますが、微量のガンマ線は出ます。空港に設置された放射線感知器は、この微量のガンマ線を感知してしまいます。実は、アイソトープ治療後3ヶ月間、空港に設置された放射線感知器を通過すると警報が鳴ります。
最初、このことが分からず、アメリカ入国時に大変なトラブルに遭ったヨーロッパの人がいます。別室で、丸裸にされありとあらゆる穴を調べられたそうです。帰国して、主治医にその話をしたところ、アメリカに行く前に行ったアイソトープ治療が原因であったと知りました。彼は、それを事前に知っていたなら、アメリカ旅行は延期したと主治医に苦情を言いました。そこで、対応策を考える必要が出てきたわけです。それは、アイソトープ治療証明書を発行することです。もし放射線感知器が鳴っても、それを入国検査官に見せれば、即刻、解放されるようになりました。
日本では、まだ空港に放射線感知器を設置しているところはないようです。しかし、年間1800万人が海外に出国する我が国では、重要な問題にる可能性があります。海外入国時、トラブルに巻き込まれないためにも、アイソトープ治療を受けて3ヶ月以内に海外旅行、出張する場合、主治医に必ずアイソトープ治療証明書を書いてもらいましょう。それを持参していると安心です。
以前は、アイソトープ治療後だけ心配しておけば良かったのですが、放射性ヨード摂取率などの検査に使用する少量の放射性ヨードでも数日間は放射線感知器が鳴ることが分かりました。ですから、この場合も証明書を書いてもらいましょう。証明書は、日本核医学会、日本甲状腺学会ホームページからダウンロードできます。