PTU(チウラジール)の副作用:MPO-ANCA血管炎症候群
PTU(チウラジール)はバセドウ病の治療薬として使われる抗甲状腺薬というお薬です。抗甲状腺薬は、バセドウ病の治療に使われるようになって約60年以上になります。治療効果は、同じ抗甲状腺薬であるメルカゾールと同等です。
最近、このクスリが問題になったのはアメリカで小児バセドウ病に対してPTUを使って、重症肝炎を引き起こし、肝移植や死亡例が報告されたためです。現在、アメリカではPTUは妊娠初期かメルカゾールで副作用が出た時以外には使用されなくなっています。その傾向は、日本でも同じです。
実は、10数年前からPTUには問題になる副作用が報告されてきていました。MPO-ANCA血管炎症候群といって、ひどい場合は腎不全や肺出血で命を落とすこともある副作用です。普通、抗甲状腺薬の副作用は、服用開始3ヶ月以内に起こることが多いのですが、このMPO-ANCA血管炎症候群は服用開始1年以上たって起こることが多いのが他の副作用と違う点です。もちろん、服用後数週間で起こる例外もあります。
MPO-ANCA血管炎症候群は、何故かPTUで起こることがほとんどです。稀に、メルカゾールで起こすこともありますから注意を要します。
診断は、採血しMPO-ANCAを調べれば分かります。以前は、ある一定以上増加していなければ、PTUを中止しないで服用を続けていました。しかし、最近の研究で分かったことですが、血清MPO-ANCAは低い値でも陽性であれば、MPO-ANCA血管炎症候群を起こす可能性があることがわかりました。従って、現時点ではMPO-ANCA陽性と判明すれば、抗甲状腺薬を中止し、別の治療法(手術や放射性ヨード治療)で確実に治します。