バセドウ病と体重
バセドウ病では、体重が減るということはよく知られています。この体重減少は、食欲が旺盛でよく食べるのに体重が減るという特徴があります。食欲があってよく食べるのに体重が減る病気の代表が、バセドウ病と糖尿病です。癌などの悪性疾患で体重が減る場合は、食欲がなくなります。
バセドウ病の治療を開始して、甲状腺ホルモンが正常に近づいてくると体重が増え始めます。これは、甲状腺ホルモンが正常になってきたために体重減少が改善されるためです。ここでひとつ知っておいていただきたいことがあります。
甲状腺ホルモン異常(高いとき、低いとき)をきたす病気の特徴は、血液の甲状腺ホルモン値と症状が一致しないことです。すなわち、症状の変化(改善、悪化どちらも)が1ヶ月ほど遅れます。甲状腺ホルモンが正常になったのに症状が良くならないと患者さんから訴えを聞くことがあります。これは、血液の甲状腺ホルモン値と症状が一致しないことが原因です。甲状腺ホルモン値が正常になれば、1ヶ月くらい経って症状も良くなってきますのでご安心ください。
体重に話を戻しましょう。バセドウ病の人は、甲状腺ホルモンが高いときは沢山食べても体重が増えないので、ラッキーと思う人がいるかもしれません。しかし、病気ですから体重のことはよいとしても、動悸、息切れなどの症状に苦しむこともあります。
バセドウ病の人で、過剰にカロリーを取りすぎると体重が減るどころか、反対に増える人がいます。バセドウ病のとき沢山食べる癖がついたまま、甲状腺ホルモンが正常になっても、もとの食欲には戻らない時期があります。この時期に体重が元以上に増えることがあります。このような場合でも、食欲が元に戻ってご自身が気をつけていただければ体重は元気なころに戻るはずです。
バセドウ病を治療し始めると体重が増えてくるわけですが、この体重増加を嫌がる若い女性がときどきいます。このような人で抗甲状腺薬を飲まない人が希にいます。
以前、わたしもそのような人に出会ったことがあります。メルカゾール1日6錠を1年間服用しても、甲状腺ホルモン値は全く下がりません。本人に何回も、服用しているかどうか確認しましたが、ちゃんと服用しているとの答えでした。ですから、てっきりメルカゾールの腸管からの吸収に問題があると考え、血液中のメルカゾール濃度を測ってもらおうかと考えていました。そうこうしているうちに、さすがに本人も気まずくなったのでしょう。ある診察日に、実はメルカゾールは全く服用していなかったと告白しました。何故って聞いたところ、太るのが嫌だったそうです。それからは、メルカゾールをしっかり服用するようになり、甲状腺機能は正常になりました。
病気を早く治すためにクスリはしっかり飲みましょう。抗甲状腺薬を飲むのが嫌な理由があったら、主治医の先生に正直に話しましょう。相談に乗ってくれますよ。