甲状腺自己抗体と虚血性心疾患

潜在性甲状腺機能低下症があると虚血性心疾患を起こしやすいといわれています。特に、TSH 10 ImU/L以上の場合、そのリスクは高くなります。また、甲状腺自己抗体は甲状腺機能低下症の進展を予測できるという報告もあります。しかし、甲状腺自己抗体が虚血性心疾患のリスクを高めるかどうかについては分かっていません。

米国内分泌学会から出版されている臨床内分泌代謝雑誌『JCEM』の最新電子版に甲状腺自己抗体と虚血性心疾患リスクの関連性について検討した論文が掲載されました。

38274名の成人を対象としています(平均年令55才、女性は63%)。このうち、1691名(4.4%)が潜在性甲状腺機能低下症でした。この1691名の中で775名(45.8%)が抗TPO抗体陽性でした。経過観察中に1436名が虚血性心臓病で死亡し、3285名が虚血心疾患を起こしました。

年令、性を一致させて比較した場合、潜在性甲状腺機能低下症の人において抗体陽性群と陰性群の間で虚血性心疾患発症のリスクに差はみられませんでした。潜在性甲状腺機能低下症では虚血性心疾患による死亡、虚血性心疾患の発症リスクは増加していました。しかし、甲状腺抗体は虚血性心疾患とは関連性がみとめられませんでした。

結論として、従来言われていたように潜在性甲状腺機能低下症は虚血性心疾患のリスクを高めますが、甲状腺自己抗体は虚血性心疾患発症のリスクを高めないことが分かりました。