コミュニケーション > 患者さんの手記
[015]
[015]
臆病ネズミの外来アイソトープ(その後1年の経過)
. Dr.Tajiri's comment . .
. このレポートを書いてくれたのは、ニックネーム「トムトム」さんです。
昨年、バセドウ病のアイソトープ治療を外来で受けました。治療を受けたのは東京都の某私立女子医大病院の核医学科です。一年後の経過報告をしてくれました。
.
. . .
前書き…  
平成12年11月16日 早いもので、私が去年の6月半ばにアイソトープ治療を受けてから、もう1年が経過しました。

バセドウ病の診断を受けたのが去年の4月、薬のアレルギーの為アイソトープを受けたのが同6月、そして現在は一応バセドウ病を卒業して甲状腺機能低下症の治療を受けています。
アレルギーのせいとはいえ、私くらい治療法がめまぐるしく変わり、あっという間に低下症になってしまった人は、国内では少数派の方かもしれません(アメリカなどはバセドウ病=即アイソトープ治療というケースが多いそうです)。

私のバセドウ病は発見が早かったためにごく軽症で、気になる合併症もありませんでした。
ですから、このレボートが現在病気で悩んでおられる方のお役に立てるのかどうか、私自身ギモンなのですが、ごく短期間の間とはいえ一通りの経過を辿ってきましたので、何か参考にして頂けることがあればと思い、筆不精のカラダにムチ打って何とか仕上げてみました。
ヘタクソな上に読みにくい文章で申し訳ありませんが、最後まで読んで頂ければうれしいです。
平成10年 治療前の症状
〜平成12年6月
平成12年11月16日
バセドウ病の診断を受けたのはH12年4月でしたが、私の体調の方はその1年以上前…実際には長女の出産をしたH10年頃から「何か変だゾ」という自覚はありました。
  • 微熱が続き、ちょっとした疲れですぐ39度台の高熱が出る 
  • 普段からイライラしがちで心が狭く、我ながら「イヤ〜な女」
  • ハイになりがちで、かつ落ち込みも激しい
  • 疲れているのに、夜なかなか寝つけない 
  • 思考のスピードが早く、落ち着いてゆったりと過ごすことができない  等など…

H12年4月にバセドウ病の診断を受けてから色々な資料を読み、これらの症状がバセドウ病の特徴の中に数え上げられているのを知ったときは、正直言ってうれしかったです。「良かった〜!こんなに性格が悪くなったのは病気のせいで、私のせいじゃなかったのね!!」と、その時は安心しました。でも今は、「やっぱ、1/3くらいは持って生まれた性格のせいだった」と自覚しましたケド…
初回の検査結果は以下の通りです。
【4月28日】 FT3:4.8 FT4:8.0以上

尚、これ以降抗甲状腺剤による治療が行なわれましたが、私は2種類の薬剤の両方にアレルギー反応が出て、投薬開始後2週間でどちらの治療も打ち切られてしまいました。
実際に効果が出る前にいつも中止になるので、抗甲状腺剤でバセドウ病の症状や検査結果が改善したことは、結局一度もありませんでした。その上、アレルギーの蕁麻疹だ、発熱だ、白血球数の低下だ、とくたびれることだらけで、「バセドウ病の治療を始めてから、かえってカラダが悪くなった気がするよ」と大いに不満を抱いていました。

平成12年6月15日 アイソトープ当日
平成12年11月16日 アイソトープ治療の為にそれまで通っていた病院から現在の病院に転院し、いよいよアイソトープを受ける当日になりました。
採血をしたのち実際にアイソトープのカプセルを飲んだのですが、このあたりの詳しい内容は[010]臆病ネズミの外来アイソトープ(アップグレードバージョン)を読んで頂けたらと思います。
平成12年7月13日 アイソトープ後1ヶ月(第1回受診日)
平成12年11月16日 アイソトープ治療後初めての受診日です。

担当Dr.からは1ヶ月後と言われていたのですが、自分のカラダが今どんな状態にあるのか知りたくて毎日ウズウズしていたもんですから、きっちり4週間後に受診しました。
体調の方はアイソトープ投与後も特に変わりはありませんでしたが、採血などをすれば、何かわずかな変化でもみてとれるんじゃないかと期待していました。

名前を呼ばれて診察室へ。
問診と触診の結果、甲状腺の腫れがまだ改善しておらず、低下症らしき自覚症状も出ていないので、「今回は採血だけで様子をみましょう」とのことで、採血の結果は1週間後に電話で問い合わせることになりました。

しかしこの日、これまでの検査結果について意外なことを聞かされました。
ちなみに、前回、アイソトープ前にした採血の結果は以下の通りです。
【6月15日…検査機械:A】 FT3:4.43 FT4:8.19 TRAb:4.0

これらの数値は、転院前にかかっていた病院でのこれまでの検査結果と、殆ど変わらないものでした。
けれどDr.は転院時に持参した検査数値をみて、FT3の値に対してFT4の値が高すぎるとずっと思っていたらしく、念の為同じ日に採った血を別の機械にかけて結果を出した所、以下の数値が出たそうなんです。
【6月15日…検査機械:B】 FT3:4.17 FT4:1.70

どうやら私の持っている抗体<注釈:これはT4抗体といいます。この抗体があると見せかけ上、高めに出ることがあります>がコンピューターの判断を狂わせているらしく(どんな抗体だ?)、FT4の数値が実際よりも高く出ていたらしいのです。私の症状(脈拍・手の震え・自覚症状など)から判断すると、後者(検査機械:Bの結果)の数値の方が信憑性が高いんだそうです。

これ以降、私の血液検査はいつも両方の機械で結果を出すようになり、そのうちFT4の数値は無視されるようになりました。
しかし、2つの機械の検査結果をこれ以上書き続けると混乱しそうなので、ここからは信憑性が高いと言われた検査機械:Bの結果のみを書くことにします。
4/28の結果と比較すると、いきなりFT4の数値が激減したように見えますが、こういう事情をご理解の上、読んで頂けたらと思います(ややこしくてすみませ〜ん!)。

さて、後日電話で教えてもらったこの日の採血の結果は、以下の通りでした。
【7月13日】 TSH:0.009 FT4:1.55 TRAb:13.2

Dr.のお話では、甲状腺ホルモンの値がまだ高いので当分薬は飲まずに様子をみよう、とのことでした。
期待していたほど大きな変化ではないにしろ(そんな期待する方がどうかしている?)、FT4の値がわずかに下がっているので、アイソトープがじわじわ効いてきているのかな、と少し安心。
次回診察は9月末の予定です。
平成12年7月末 アイソトープ後1ヶ月半〜2ヶ月(体調の悪化)
〜8月中旬
平成12年11月16日
巷では酷暑の夏と言われていましたが、私は2歳の娘の為にもクーラーをできるだけ使わないでいた割りに、暑さがさほど苦になりませんでした。
前回の受診以降2週間くらいは、絶好調とはいえなくてもなんとか無事に過ごしていたのですが、7月の末あたりからじわじわと体調が悪くなってきました。

なかでも一番つらかったのが眠気と疲労感です。
とにかく眠い、1日中眠い〜。睡眠薬でも飲まされたのかというくらい頭がぼんやりしていて、何もする気が起こらない。まだ2歳の娘を抱えている身なので仕方なく最低限のことはしていましたが、それでも、「おかあさん、ねむ〜いの。ちょっと横になってていい?」とか言って、しょっちゅうゴロゴロしていました。
娘は元々よく寝るタチで、午前と午後にそれぞれ1時間ずつくらい昼寝して、その上夜もバッチリ10時間寝てくれる子だったので随分助かりましたが、私自身はいくら寝てもスッキリすることはなく、起きているだけでくたびれる気がしていました。
家事は必要最低限しかやりませんでしたが、それでも大キライで、やらなくちゃならないのが苦痛で仕方ありませんでした。
「殆ど立ちっぱなしで重労働なのに、やっても大してホメテもらえない。面白くもナイ。あ〜あ、オンナってほんとソンだよなぁ。外に出て働いている方がよっぽどラクだよね、きっと!」なんて思って、プリプリしていました。

精神的にも、たぶん多少ウツ状態に陥っていたように思います。
気がつくと随分昔のことを引っ張り出して、いつまでもウジウジ悔やんでみたり、人の言動の一つ一つに異常にこだわってしつこく深読みしていたり、ちょっとしたことで涙がでるほど傷ついたり、腹を立てたり…。
「1日中寝ていられたらいいのに」と思う一方で、いざ、主人が休みの日に娘を連れ出して外出してくれると、一人で延々と暗い考えにはまりこんでよけいツラクなったりして、もう、どうしていいかわかんない状態でした。

外出して気晴らしした方がいいんだろうとは思っていても、とにかく起きている間中眠気と疲労感でドローンとしてるので、とても腰を上げる気になれない。近所の公園に娘を連れて出るだけで大仕事でした。普段はどちらかと言えばひとなつこく社交的な方なのですが、この時期は顔見知りの人ともあまり話をしたくなくて、誰もいない砂場とかで娘と二人きりで静かに過ごすのがやっとでした。

「この落ち込みや疲労感、眠気は低下症の症状じゃないのかなあ…」という考えが何度も頭をよぎりましたが、受診する決心がなかなかつきませんでした。
前回の受診日から1ヶ月もたっていないし、いくらなんでも大げさすぎるんじゃないかと自制してしまうのです。

8月半ば頃から今度は筋肉のツリにも悩まされるようになりました。
変な体勢をとったとか、ムリな運動をしたなんてことは全くないのに、1日に何度もあちこちの筋肉が突然つり始めるのです。それもふくらはぎとかではなくて、太ももの裏側、お腹、背中、お尻など、妙なところばかり…。ドレッサーに座ってお化粧をしていたり、台所に立って料理をしていたり、普通に座ってTVを見ていたりなど、ごく当たり前の軽い体勢をとっている時に、いきなりキョーレツなひきつりが始まるので、油断ができません。
いったんつり始めると回復するまで時間がかかる上、うめき声が出たり全く動けなくなるので、側にいる娘は目をまるくしてオロオロしていました。
さっきまで普通だったママがいきなり「ヴーッ」と言いながらベッドに倒れこんで固まっているので、そりゃびっくりするでしょうね。「ママ、どちたの?大丈夫?ココ痛いの?」と聞きながら、あちこちさすってくれたりもするのですが、半分これはいつものママの悪ふざけの一種でひょっとして遊んでくれているのかもしれない、とはかりかねている様子でした。
(私の様子がよほど印象的だったのか、彼女はその後数ヶ月の間、私の筋肉がつってジタバタしていた様子をリアルにマネしてくれるようになって困りました。ガニマタひきつり歩き+うめき声など、いきなり人前でやりはじめるので、ホント勘弁して欲しかったです…(;o;))

受診しようか、いや、まだ早すぎる…でもやっぱり…というウジウジした日々に見切りをつけて、ようやく受診する気になったのは8月半ばのことでした。クーラーの要らない夏・眠気・ウツ状態・そして筋肉のツリ…これだけそろったらもう充分じゃないか、という気がしてきたのです。
「大げさでも考えすぎでも何でもイイ!とにかく受診して、結論を出そう!」
そう決心してお盆開けに病院に連絡を入れ、予定より1ヶ月早い8月の末に受診の予約をとりました。
平成12年8月25日 アイソトープ後2ヶ月(第2回受診日)
平成12年11月16日 この日は担当Dr.の正規の診療日ではありませんでしたが、電話で診察を希望する私の話ぶりの切実さに同情してくださったようで、特別に午後から診察の予約を入れて頂けました。

診察室へ入ると、Dr.のいつもの笑顔が私を迎えてくれました。
私にとってこのDr.は会うだけで安らげる存在です。彼女に会って話を聞いてもらえる、と思うだけで暗い気分が半分軽くなるくらい、その効果は絶大でした。
私の訴える内容に耳を傾けながら脈をとり、甲状腺の大きさを確かめ、私の訴えが終わったところで、ゆっくりとご自分の考えを話して下さるのもいつもの通りです。

「そうですねぇ、触ってみたところ甲状腺の腫れはまだ完全にはひいていませんし、脈拍から判断してもまだ低下症になっているとは完全に言いきれない状態ですね。でも、トムトムさんのお話を伺っていると、すこーし低下症ぎみになっている可能性はあるかもしれません。甲状腺機能低下症というのは、とにかく眠いんですよ。それこそ冬眠状態といってもいいくらい…。ま、これから採血して頂いた結果を診てみないことには、何ともいえませんが、今日、一応一番弱いお薬を出しておきましょう。採血の結果が出るのが1週間後ですから、その頃お電話頂けたら結果を申し上げます。お薬を開始するか否かもそのときに判断することにしますので、それまではお薬を飲まないでおいてください」

薬をもらって帰れる、というのはとてもうれしかったです。
検査はいつも結果が出るのに1週間かかるので、受診してもすぐその日に薬を出してもらえるとは思っていませんでしたから。
たとえ飲めなくても、手元にあるだけで安心…病気になるまでは薬嫌いで余程の状態にならない限り薬には頼らなかった私だったのですが、すっかり「情けないヒト」になってしまったものです。

1週間後に電話で伺った検査結果は以下の通りでした。
【8月25日】 TSH:0.199 FT3:1.93

検査結果は正常範囲と低下症の丁度境界線あたりですが、私の自覚症状がかなりきつい状態なので、投薬治療を開始してみましょう、とのことでした。

もー、むちゃくちゃうれしかったです。
低下症になってウレシイなんて変ですが、毎日ウツと睡魔に悩まされて気が狂いそうだっただけに、この状態から脱出できる可能性があるものなら何にでもすがりたい気分だったのです。正直、これが低下症のせいではないという結果が出たら、精神科を紹介して頂いて、抗ウツ剤なり精神安定剤なり、とにかく早く何かを処方してもらいたい、とまで思いつめていましたから。

そんなわけで、H12年9月2日より、チラージンSを毎朝1錠服用する投薬治療が開始されました。
平成12年9月初旬 アイソトーブ後3〜4ヶ月(実家に帰省)
〜10月初旬
平成12年11月16日
チラージンSを飲み始めても、すぐにその効果を感じることはありませんでした。
でも、抗甲状腺剤がそうであったように、薬の効果が出るのは大体2週間以上経ってからだろうと予測していましたから、焦りはありませんでした。

低下症の薬を飲み始めたことで治療にも一段落ついた気がしたので、体調の悪さは相変わらずでしたが、夏からずっと延ばし延ばしになっていた実家への帰省にようやく腰をあげる気になり、新幹線で片道4時間強の実家へ娘とともに帰省しました。

4月にからこれまで、抗甲状腺剤のアレルギーだアイソトープだ低下症だと病気に振り回されてきた毎日だったので、今回の帰省は最初から長期休養を目的にしていました。近くに住んでいるお義母さんに主人の食事の世話を頼んで、約1ヶ月の滞在予定。やさしい主人とお義母さんの理解と協力に、とことん甘えてしまうワガママな嫁なのでした。ヘヘヘ〜(*^^*ゞ

実家の母親や近くに住む姉と会うのは、1年ぶりくらいです。
体調が良くないことは帰省前にあらかじめ言っておいたのですが、それでも母や姉は実際に見る私の様子にかなりショックを受けたようでした。
顔にむくみが出ていたようなんですよね。
自分でも多少は気づいていたのですが、体重が2キロくらい増えてしまっていたので、顔が太っただけなのかもしれないと思っていました。
でもこのころ撮った写真を後でみると目もなんだか腫れぼったいし、笑っていてもどこか暗い表情だし、見るからに調子が悪そうに映っているので、我ながらホントにつらかったんだなあと思います。
実家では家事の大半を母親に甘えて、日中もよく横にならせてもらっていました。

チラージンSは9月の始めからかかさず飲んでいましたが、帰省の期間中もずっと筋肉のツリや眠気にも悩まされっぱなしで、薬が効いてきたという実感はありませんでした。ウツの気分も相変わらずでしたが、安心して甘えられる母親が側にいてくれるせいなのか、10月始めには疲労感や精神状態はかなりマシになってきた気がしました。
でも、まわりで見ている方はそうは見えなかったらしく、帰省している間中、ずいぶん心配をかけました。

後で聞いたのですが、近くに住んでいる双子の姉は、「あんなに体が悪くなるのなら、私は薬で治した方がいい」と、母親に言っていたらしく、それを聞いてムッとしたのを覚えています。
彼女は同じバセドウ病を患っていながら私と違ってアレルギー症状が軽く、かゆみ止めとの併用で投薬治療を続けていたのです。
アイソトープのあと、しばらく体調に変化がなかった時期に、「アイソトープはいいよ〜、簡単だし、バセドウ病がこれ以上悪くなる心配をしなくていいし、早く受ければいいのに〜」と勧めていただけに、あまりいい状態をみせてやれないのが残念でした。でも、彼女の方が元気そうなのも事実で、せつなかったです。

結局、実家への滞在は予定の1ヶ月を少しオーバーし、自宅へ戻ったのは10月半ばになってからでした。
平成12年10月後半 アイソトープ後4〜5ヶ月(回復の兆し)
〜11月
平成12年11月16日
自宅に戻ってからしばらくすると、少しずつ体調が良くなってきました。

まず、10月後半に「そう言えば、最近体がひきつらなくなったなあ…」と思い始めました。しょっちゅう筋肉がつっていた頃は、1日中全身がこわばった感じがして、いつひきつりが始まってもおかしくない状態でしたが、なんだか体が少し柔らかくなった感じがしました。

11月頃には体の中にエネルギーがフツフツと沸いてくるような心強さが感じられるようになり、昼間の異常な眠気からも解放されました。長い間続いていた微熱も36℃台におさまるようになってきました。

以前は「重労働だ」と苦にしていた家事も、割合楽にこなせるようになってきました。
主人と一緒に娘を連れて外出しても、先にへたばるのは主人の方で、家に帰って居間に座りこんで、「おまえ元気になったよなあ…」という主人に、「そうでしょ!なんだかこの頃すごく調子がいいんだー!」と言いながら笑顔で食事の支度ができるようにもなりました。

体力が戻ってきたおかげなのか、気分的にも明るく穏やかでいられるようになってきました。
妙にハイ・テンションな気分の高揚ではなく、平常心でいながら陽気でほがらかな私…ふと、そんな自分に気づくこともしばしばで、「なんだかいい感じに変わっていくワタシ」を感じ、心が浮き立ちました。

もちろん、全てが一度にいきなり改善した訳ではなく、徐々にいつのまにかそうなっていたという感じです。
そして「病は気から」のことわざにもあるように、回復期に入ったという安心感が肉体的にも精神的にもいい影響を及ぼしたのでしょう

以前は最低でも1ヶ月に一度は不安を確かめるために行きたかった病院も、体調がよくなると全然行きたいとは思わなくなりました。「病院に行くのがめんどくさい」と思えること自体、なんて素敵なんだ〜!
でも病院から頂いていた薬がなくなってきたので、11月半ばにアイソトープ後3度目の診察を受けに行くことにしました。調子が良くなってきた分、薬を切らしてぶり返すのは二度とゴメンでしたから。
平成12年11月16日 アイソトープ後5ヶ月(第3回受診日)
平成12年11月16日 いつものように名前を呼ばれて診察室へ。でも、今日の私は満面に笑顔を浮かべての入室です。
迎えて下さったDr.も私の表情をみて調子がいいのが分かったようで、「あらっ」という驚きを含んだ笑顔を浮かべました。

「どうです?あれから調子は良くなりました?」
「はいー!も、お蔭様で、すごくいい調子です。先生、本当にありがとうございました」
「お顔を拝見しただけで、そんな感じがしましたよ。良かったですねー」

そういうDr.もうれしそうでした。やはり自分が治療した患者の症状が良くなるのは、Dr.にとってもうれしいことなんでしょうね。これまでいつも眉を寄せて体調の悪さをこぼし続けてきただけに、ようやくこの先生に明るい自分を見せることができて、私もホッとしました。

問診、触診、脈の確認などのあと、筋肉のツリや不眠についても聞かれましたが、どれも改善したとことを伝えました。Dr.は前回の検査結果などに目を通しながら、「以前の症状は低下症になったためというよりは、むしろアイソトープによって急激にホルモンの分泌が抑えられた為に陥った、一時的な症状の可能性が高いですね」というようなことをおっしゃっていました。
しかし、薬を服用しつづけている今の状態が良いので、チラージンSはそのまま続行することになり、この日も診察後の採血結果を電話で教えて頂くことにして、3ヶ月分の処方を受けて帰りました。

後日聞かされた検査結果では、詳しい数値は教えて頂けませんでしたが「正常値」とのことでした。
チラージンSを毎朝1錠飲んでいる状態での正常値なので、やはり少し低下症にはなっているようでした。
この数値がこのまま安定するかどうかは今後の経過をみないと判断できないそうですが、おそらく今後、(バセドウ病の)再発はないだろうと聞かされました(ヤッター、バンザイ!)。
次回の診察は薬がなくなる3ヶ月後です。
平成12年11月中旬 アイソトープ後5〜9ヶ月
〜平成13年3月初旬
平成12年11月16日
この時期になると多少の浮き沈みはあるものの、体調が日に日に良くなっていくのが実感できるようになりました。

以前は大っ嫌いで苦にしていた家事もチョチョイのチョイでこなせるようになり、食いしん坊の本領発揮でメニューをあれこれ工夫したり、手のかかる料理などに挑戦したりするようになりました(手作りパンとか)。
楽しみながら家事をするなんてとうてい自分にはあり得ないと思っていましたが、苦痛に思わなくて済むだけの体力があれば、何にでも面白さを見つけられるものなんですね〜。
その気になれば、午前中たっぷり使って、娘と遊びながら大掃除なんてこともやるようになり(いや、ごくタマにですけどね)、「なんだかワタシって、けっこうキレイ好き?」てなことを考えて、一人いい気になったりしてました。
でも、仕方なく嫌々で掃除していた頃とは、やはり力の入り具合が違いますね。

気分的にもまさに、「この世の春!」。
つい最近まで、「子供もまだ小さいのにすっかりくたびれた中年オンナになってしまって、人生下り坂…」なーんて思っていたのがウソのよう。
「まだまだ女盛りよ〜ん!見た目も5歳はごまかせてる(ハズだ)し、そのへんの疲れたカオした若い主婦よりは全然イケてる(に違いない?)わよ!」てな感じです。

実はこの時期、運転免許を失効後6ヶ月以上経過してしまってたことが発覚し(バカ)、イチからやりなおしで家から片道2時間かかる運転試験場に通ったり、自治会やサークルの役員活動の〆の時期とも重なって、睡眠時間もまともに確保できないほど散々な日々だったのですが、自分でも信じられないパワーでなんとか支障なく片付けることができました。
もし、体調がこれほど復帰していなければ、役員活動は迷惑をかけることを承知で退いていたでしょうし、免許は永遠に失っていたでしょう(再取得には3ヶ月かかりました……涙)。
平成13年3月8日 アイソトープ後9ヶ月(第4回受診日)
平成12年11月16日 この日の受診も前回同様に体調が良い事を報告して終わりました。

Dr.への感謝の気持ちは持ちつづけていても、その優しさにすがりつきたいような気持ちはもうなくなり、受診は単になくなりかけた薬をもらいに来るのが目的になっていました。
採血の結果を見て、今後薬の量が毎朝1錠だけで安定しそうなのか、それとももう1錠増やした方がよいのかを判断するとのことで、その日はいつもの倍の量をもらって帰りました。

後日、電話で聞かされた結果は「正常値」でした。
チラージンSもこれまで通り毎朝1錠服用すれば良いとのことで、次回の診察も薬のなくなる半年後で良いことになりました。うれしいな!
平成13年3月中旬 アイソトープ後9ヶ月〜1年
〜平成13年6月初旬
平成12年11月16日
パワー全開です!も、なんでもコイッってなカンジです。

5月の初旬から近くに住む姉が肺炎にかかってしまい、家事&育児の手伝いなどでほぼ毎日大忙しの日々でしたが、疲れても一晩寝れば回復するタフぶり。病気が治ったというよりは、「私、かってこんなに元気だったことがあったかしら…?」と思うほどの持久力と回復力です。

精神的にもかなりいい影響が現れてきていました。
一番変わったと思えるのは、自分以外の他の人の苦労を察して、心からねぎらってあげられるようになったことです。

バセドウ病が発病したのが実際にはいつだったのかはわかりませんが、何年も前から体調が悪かった私は、そのせいか心から人を思いやることができないタチになっていました。
口では「大変ね。」と言っていても、心の中では一番大変なのは自分だと常に思っていたような気がします。
「昔はこんな風じゃなかったのに、いつからこうなってしまったのか…」と、心が狭く偽善的な自分を責めて、ひそかに自己嫌悪に陥るのもしょっちゅうでした。

でも、精神状態が良くなった今だからこそ、あれは本来の自分の姿ではなかったのだと言いきれます。
所詮、モトがモトだけに未だに心の狭い部分は多少あるのですが(エヘッ)、以前に比べると随分マトモになりました(と思う)。
人の言動をイチイチ深読みしたり、勝手に先の先まで憶測して腹を立てたり…今考えると、ほんとバカみたいです。今はそんなめんどくさいこと、考える気すら起こらない。そんなヒマがあるのなら、もっと楽しいことに時間を使いたいと思います。

今、私の唯一の悩みは体重がなかなか減らなくなったことだけです。くすん、くすん。
以前は1週間で2〜3キロ落とすくらい簡単だったのに、今は500g減らすのにえらく苦労します。とはいっても、すごく太ったというわけじゃなくて、前は間食を少し減らすだけでキープできていた理想体重が、今はそれを2〜3キロオーバーした所で安定してしまい、中々減らせなくなっただけのことです。

でも、これって多分当たり前のことなんでしょうね。
見た目は「わーい、スリム〜!」って感じじゃなくなっても、ちゃんと食事を制限していればデブにはならなくて済んでいるし、何にも努力しなくてもどんどんやせた時期に戻りたいとは絶対に思いません。
ごく当たり前に生活していくことがつらかった以前の状態は、どう考えても異常でしたもん。

疲れやすいのも、心がいつも落ち着かないのも、わたしが怠け者で性格が悪いせいなんかじゃありませんでした。みんな、み〜んな、ホントに病気のせいだったんです!それが分かって本当に嬉しい。
甲状腺ホルモン剤を毎朝1錠飲んでいる私は、本当の意味での健康体ではないのでしょう。でも、たとえこれから一生薬を飲み続ける体になったのだとしても、それと引き換えに今のこの健康と健全な心が得られたのなら大歓迎です。

以前大家さんがBBSに投稿された方へのお返事に、「甲状腺機能低下症は、亢進症に比べると医者にとって比較的コントロールが容易な病気です。しかし、この医者にとっての容易さは、直接患者さんの利益にもつながるものと信じています」というようなことを書いていらしたと思います(どこか違っていたら、スミマセン)。
私は自分が低下症になってみて、初めてこの意味を知ることができたように思います。
定期的に医者にかかりつけている状態での低下症は、けして怖いものではありませんでした。現にホルモン補充療法で治療することで、以前自覚していた以上の健康を手に入れることができたのですから!

私のせいでよけいにアイソトープに対する不安をつのらせていた双子の姉も、今はすっかり元気になった私を見て、近い将来自分も受ける気になったようです。
最後に…  
平成12年11月16日 一口にバセドウ病のアイソトープ治療といっても、その患者の病状、体質、投薬されたアイソトープの量などによりその後の経過は変わってくると思います。
アイソトープのあとに一時的に陥った様々な症状も、私はもともと気が小さくて心配性なので、過剰に意識してしまったのかもしれません。
又、現在治療中の低下症も、抗甲状腺剤による治療ができない私にとっては、最初から選択肢の殆どない結果(アイソトープの効き目が弱いと、甲状腺ホルモンの値が正常値以下になるまでアイソトープを繰り返すしかない)、ですので、比較的受け入れやすいものであったと思います。

アイソトープの効き目はごく短期間で判断できるものではないので、今後も数ヶ月に一度は検査をして経過観察を続けることでしょう。でも、抗甲状腺剤では得られなかった甲状腺ホルモン数値の安定を、アイソトープでどうにか得ることができたということで、私のアイソトープ体験記は一応これで終わりにしたいと思います。
単なる1ケースに過ぎない体験レポートですが、どなたかの参考になればうれしいです。

へたくそな上に面白くもない長〜い文章に、読んで下さった方はさぞかしお疲れになったことと思います。
最後までおつきあい下さった事に心から感謝致しますと共に、皆さんが1日も早く健康を取り戻されますよう、心よりお祈りしています。

最後に、臆病者の上に筆不精の私に、いつも変わらぬ励ましとご助言を下さった大家さんをはじめとするBBSの皆さんに、深く感謝申し上げます。
もどる