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目の充血と炎症のある活動期が、ややひどい程度であれば抗炎症療法で少しは緩和できます。これらの薬剤は、おそらく目の回りや後ろ側に集積した炎症性細胞(リンパ球と線維芽細胞)を抑えるものと思われます。それにより、目の合併症の程度が軽くなるのです。しかし、この効果には限界があり、一次的なもので、目の病気を治すことはなく、また実際に経過を短縮することはないと思われます。
3種類の抗炎症療法があります。 |
a]ステロイド錠剤(コルチコステロイド、コーチゾン、プレドニゾンなど)の経口投与 |
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ステロイドは急性の活動期の炎症にと充血に非常に効果的です。しかし、グレーブス病の慢性期の変化には全く効果はありません。ステロイドにより症状は改善されますが、目の突出や瞼の後退、および複視などの測定可能なパラメーターにはほとんど変化はありません。効果を上げるためには高いステロイドの投与量が必要であり、好ましくない副作用が多くなりますし、その中のいくつかはかなり重篤なものです。短期間のステロイド治療が実際的です。したがって、通常は程度の著しい炎症や、重篤な角膜露出、および視覚喪失(視神経圧迫)など大きな目の合併症に使うように取って置き、その場合でも他の治療法を考慮している間の一次的な治療法として使います<注釈:最近では、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール)点滴によるパルス療法[衝撃療法]が、経口投与に比べ副作用も少なく、効果もあります>。 |
b]その他の免疫抑制剤(サイトキサン、サイクロスポリンなど) |
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このような免疫抑制剤の有効性はステロイドと同様ですが、信頼性は劣り、より多くの副作用があります。
ルーチンには使われませんが、他の治療に反応しない患者に対しての治療法としてとっておかれます。 |
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X線治療(照射)も、グレーブス病で目の後部に集積した非常に感受性の高いリンパ球を殺すことにより部分的に急性炎症を緩和することができます。これは癌治療に使われるものと同じ方法ですが、グレーブス病で使われる照射では非常に線量が低く、近くにある目の組織を守るため、限られた部位にのみ照射します。
この照射は2週間にわたって行われる一回限りの治療です。有効性はステロイドに見られるものと同様です が、効果はもっと長く続きます。炎症は、新しい反応性の細胞が目の後ろに移動してくるのに伴って再発する可能性があります。照射の副作用は、目の乾燥の悪化のようなごく軽度のものですが、希に網膜の損傷が起こることがあります。放射線治療はステロイドと同じ理由で使われ、ステロイドが効きそうもないか、中止すると病気の再発が避けられない時に有効です。
このタイプの目の照射治療は甲状腺の放射性ヨード治療とは関係がありません。これは別のタイプの放射線治療です。 |