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SATの治療は何ヶ月かにわたって病気が進んでいくにつれ変ります【表3】。第1期では、治療のねらいは2つあります。まず、痛みを取る必要があります。ほとんどのケースでは、24時間の抗炎症療法を行うため、食後と寝る前に2錠のアスピリンを飲むことで痛みが取れます。これは熱のある患者にも効果があります。 |
【表3】亜急性甲状腺炎の治療 |
病 期 |
対 象 |
治 療 |
早期 |
炎症と痛み |
アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤、痛み止め、ステロイド |
甲状腺機能亢進症 |
ベータ・ブロッカー |
移行期 |
鎮痛と甲状腺機能亢進症 |
すべての薬剤を徐々に減らしていくか、中止する。 |
後期 |
甲状腺機能低下症 |
L-サイロキシン(甲状腺ホルモン補充) |
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この治療は何週間あるいは何ヶ月も必要なことがあります。この用量のアスピリンを使い続けることで、副作用がでることがあります(主に胃の刺激による腹痛)。アスピリンを飲んでいる間に生じる問題を最小限にするため、あらかじめ注意を払うべきです。緩衝タイプのアスピリンを使うか、同時に制酸剤を投与する(特に寝る前)かのどちらかを行うと効果があるように、アスピリンは空腹時ではなく、食後に飲むようにするのも胃の不快症状を抑えるのに効果的です。
今日では、アスピリンと同じようなたくさんの種類の抗炎症剤があり、医師の処方あるいは処方なしで入手できます。これらの薬の多くは、臨床的にアスピリンと同じくらいの鎮痛効果があります。ただ、すべてアスピリンと同じ副作用を起こす力があり、アスピリンと同じ注意を払う必要があります。ほとんどはアスピリンより効き目が強く、SATの管理にアスピリンより効果が高いと証明されたものはありません。
この抗炎症剤グループ全体は一般に、“非ステロイド系抗炎症剤”と呼ばれ、ある程度正常な血液凝固を妨げ、出血しやすくなることがあるを頭に入れておくべきです。その結果、出血性病気あるいは胃潰瘍の病歴がある人への使用にあたっては、医師の綿密な監督のもとで、十分な注意を払わなければなりません。中には使えない患者もいるかと思われます。
グルココルチコイド(プレドニゾン、デキサメサゾン)をSATの痛みの強い時期の治療に使うことに関しては、いくぶんまだ議論の余地があります。この薬の仲間は、コーチゾン誘導体から出来ており、一般に“ステロイド”と呼ばれます。非常に高い炎症抑制効果があり、十分な量が投与されれば、ほとんどすべての患者でほんの2〜3時間から1日の内に痛みが取れます。この薬の使用に関する主な懸念は、たくさんの重篤な副作用がこの薬に関連して起こる可能性があることです。用量が高ければ高いほど、また使用期間が長ければ長いほど、副作用の数も多くなり、程度もひどくなります。
これらの副作用には筋力の低下や顔が丸くなってくることなどが含まれます。さらに、血圧を上げる傾向があり、血糖レベルも上がることがあり、一部の患者では糖尿病の症状がはっきり現れてくることがあります。骨格内に含まれるカルシウムも減少してくることがあります。非ステロイド系抗炎症剤と同じように、ステロイドも空腹時に飲むと腹痛を起こすことがあります。患者の中にはうつや気分の浮き沈みが起こる人もいます。最後に、大量のステロイドを数週間以上投与すると、体自身のコーチゾン生産が止まってしまうことがあります。これは、体は毎日厳密に定められた量のコーチゾンを必要とするので、重大な懸念となります<注釈:この記載はあまりにもおおげさです。ステロイドは数週間なら、使い方さえ熟知していれば危険はありません。副作用についての説明さえ、ちゃんとすれば問題ありません。むやみに不安を植え付けるのは正しくありません>。
ステロイドは、患者の首の痛みがアスピリンや他の非ステロイド系の薬でコントロールできない時にSATの治療に使われます。すべての患者にそれ程ひどいSATの炎症反応が認められるわけではありません。患者の中でも痛みの許容度には大きなばらつきがあり、ステロイド系抗炎症剤だけでなく、非ステロイド系抗炎症剤から生じる副作用に対する感受性も患者によって大きく異なります。そして、非常に優秀で責任ある医師の間でも、ステロイド使用に伴うリスク対その有効性に関しては、きわめて異なる見解があり、いつステロイドを使うのが適切であるかを決める定まった基準がないのは驚くに値しません。
ステロイドがいちばん多く使われるのは、他の治療を1〜3週間続けても、痛みのため首を動かすことができなかったり、ものを飲み込むことが困難であるなど患者が首の痛みのため不自由になっている場合やアスピリンなどの鎮痛剤が副作用のため不適当または十分に使えない時です。高用量のステロイド治療が必要なのは、通常2〜3週間だけに限られますが、適切な注意と監督のもとであればリスクを許容できる最小限のものに留めることができます。
抗炎症剤に加え、多くの患者が鎮痛剤を補助的に必要とします。このタイプの鎮痛剤は、痛みの程度によって使用するかどうかを決め、医師の指示のもとで使うのが最良の方法です。
SAT管理の第2部は、甲状腺機能亢進症に向けて行われます。プロプラノロールのようなベータ・ブロッカーやその類の薬がこの治療の主流です。これらの薬剤は甲状腺ホルモンのレベルが高いことで起こる、心臓や他の器官への影響を鈍らせるものです。甲状腺機能亢進症による心悸亢進はこの薬でコントロールすることができます。また、不安や暑さに弱いこともある程度和らげることができます。
痛みと甲状腺機能亢進症の症状を管理するのに必要な薬は、甲状腺ホルモンが正常に向かって下がり始め、甲状腺の痛みが取れ始めるまで続けられます。
この時点で、患者は正常に感じ、よくなってきたようだと言うのですが、この時期が2〜3週間続いた後に甲状腺機能低下症の症状が始まることがあります。治癒の過程は何週間、あるいは何ヶ月もかかることがあり、甲状腺が再び甲状腺ホルモンを作れるようになるにはしばらく時間がかかります。症状の程度は様々に異なっていることがあります。治療を必要としない人もいれば、ひどい疲労感がある人もいます。
症状のある患者に対しては、甲状腺ホルモン補充(Lサイロキシン)により、正常な血液レベルにすることができます。治療は甲状腺のサイズが正常に戻り、触れても異常に硬く感じなくなるまで1ヶ月から3ヶ月間続けられます。それまでに、甲状腺は独りでに治り、正常に機能する能力を取り戻します。この時点で甲状腺ホルモン剤を中止できます。大多数の患者で甲状腺の正常な機能が保たれます。
患者1,000人の内、999人はこれがこの病気の苦しみが終わる時です。残念なことにごごく少数の人は、後で1回以上この病気が起きることがあります。どの患者がそうなるのか見分ける方法はありません。しかし、その後にまた同じ病気に襲われた場合、その過程に合わせて、速やかに治療を求める傾向があります<注釈:最近の日本人の研究では、100人中5人が一生のうちにまた亜急性甲状腺炎にかかることが分かりました。これは、ここでの記載の50倍の頻度になります>。 |