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[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 11, No1

03:コールド結節の再発
<注釈:シンチグラムでアイソトープの取り込みのない結節をコールド(cold)と言います>

質 問 電話による問い合わせ
結節の除去手術を行った後に、2番目のコールド結節が生じてくる確率はどんなものでしょうか?シントロイド<注釈:甲状腺ホルモン剤、日本ではチラージンS>の治療でその確率が変わりますか?

回 答
良性の甲状腺結節を外科的に取り除いた後に2番目の甲状腺結節が生じるリスクについては、まだはっきりしていません。手術時に、その“結節”が結節状の甲状腺腫の一部であったのか、あるいは真の単独結節であったのかによって、答えは異なってきます。真の単独結節、または単クローン結節は一個の異常細胞から生じる結節です。現在のところ、単クローン結節には、残存甲状腺組織に別の結節が生じるリスクが極めて高くなるということを示唆するデータはありません。
実際には、大きくなり、瘤状になった甲状腺内にはたくさんの単独の結節があるのが結節の特徴で、これは多クローン性のプロセスで形成された、つまりたくさんの細胞から由来したものです。甲状腺の手術の後の結節組織の再発があることがいくつかの研究で見出されています。再発率は2〜43%で、平均は10%です。
レボサイロキシン(シントロイド、レボトロイド、レボキシル、その他<注釈:甲状腺ホルモン剤、日本ではチラージンS>治療が新しい結節の形成を防ぐかどうかについても、まだ議論の余地があります。甲状腺組織の成長を防止するための、レボサイロキシンの投与量は甲状腺ホルモンをわずかに高くする抑制療法です。
抑制療法の効果を示すことができなかった研究はたくさんありますが、レボサイロキシン<注釈:甲状腺ホルモン剤、日本ではチラージンS>を飲んでいる患者に新しい結節ができにくいことを示した研究はわずかしかありません。
内分泌病専門医の間では、レボサイロキシンによるTSH抑制療法の効果に関しては、意見の一致が得られておらず、医師により意見が異なっていると思われます。
頚部の放射線照射を受けた既往があれば、レボサイロキシンの抑制効果は大きくなることを示した研究が一つあります。結節組織の再発率は治療を受けたグループでは8%ですが、未治療のグループでは36%でした。したがって、レボサイロキシン抑制治療の決定を下すのは簡単なことではありません。結節が真の孤立性のものであるか、あるいは甲状腺腫の中で優位を占める結節であるか、また過去に頭部や頚部の放射線照射を受けた既往があるかどうか、抑制療法に対してかなりのリスクがある者であるかどうかを考慮することが大切です。例えば、高齢者では、レボサイロキシン抑制療法で心拍の異常が起こったり、エストロゲン補充療法を行なっていない閉経後の女性で、骨密度の減少が起こったりするからです。したがって、レボサイロキシン抑制療法を始めるかどうかの決定については、個々人で医師と話し合うようにするべきでしょう。もちろん、外科医師が甲状腺機能低下症になるほどの甲状腺組織を取り除いている場合は、レボサイロキシンによる補充療法は必ず必要ですし、リスクもありません。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

. Dr.Tajiri's comment . .
. 甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法については以下のページにくわしく述べていますので、参考にしてください。
結節性甲状腺疾患に対する甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法
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