データ解析/甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法の適応 |
|
|
触診可能、不可能の単発性や多発性の結節をすべて含む結節性甲状腺疾患という病名は現在使用している単発性甲状腺結節や多発性甲状腺結節という病名よりより分かりやすく正確であり、ちゃんとした研究では正しい組織診断をするべきであることの必要性を示す。【表2】は甲状腺結節の原因をリストで示した。触診だけの診察ならば、単発性甲状腺結節は正常甲状腺組織から区別できる限局性の甲状腺の腫大である。腫大した甲状腺の多発性の結節は多結節性甲状腺種と推定される。しかしながら、触診による診察で単発性甲状腺結節と診断された患者の多くが実は、多発性甲状腺結節を持っている。例えば、ある研究では触診で単発性甲状腺結節と診断されていた151人のうち、超音波で調べると73人では多発性甲状腺結節を持っていた。それらの結節のほとんどは直径1〜1.5cm以下であった。
触診可能な単発性甲状腺結節は北米の成人の4〜7%にみられる。これらの結節は年令が増すにつれて、特に女性、ヨード不足の地方の住民、幼児期や小児期に放射線被爆を受けた既往のある人で頻度が高くなる。甲状腺を詳しく調べると、もっと多くの甲状腺結節が見つかる。30〜50%の人で病理解剖や超音波で見つかるが、その中で癌は非常に希である。臨床家の観点からみれば、触診可能な甲状腺結節のうちで癌は5%以下である。米国の甲状腺癌の頻度は毎年10万人あたり新しく約4人の患者が発生してくるだけである。
多発性甲状腺結節は単発性甲状腺結節に比べて、癌の可能性が低いと考えられているが、これは事実ではない。
5,637人を対象とした研究で、Belfioreらは触診で単発性と診断した結節の癌の頻度が4.1%で多発性と診断した結節の癌の頻度が4.7%であった。この結果はMcCallらの研究結果と同じである。かれらは、病理組織で単発性と多発性甲状腺結節と診断した検体の比較で癌の頻度は変わりなかった。超音波や他の画像診断で偶然見つかった触診不能な甲状腺結節の臨床的な意義は患者によってかなり変わる。しかし、単発性と多発性の区別は以前考えていたより、明確ではない。
最近、TanとGharibは偶然に発見された甲状腺結節(インシデンタローマ)の臨床上の重要性について総説を発表した(参考:甲状腺インシデンタローマ:甲状腺画像診断にて偶然発見された触診不能な甲状腺結節の取り扱いについて)。ほとんどの
インシデンタローマは直径1.5cm以下と小さく甲状腺の病気以外を持つ患者が首の画像診断を受けたとき、偶然に見つかる。人種や甲状腺を調べるときの熱意にもよるが、インシデンタローマの頻度は13〜50%である。偶然に発見されたインシデンタローマの頻度の多さと一般住民での甲状腺癌の低い頻度の格差は、ほとんどの
インシデンタローマは良性であることを示唆している。しかし、インシデンタローマの中にも癌もあるに違いない。なぜなら、たちの悪い癌でさえも最初は触診できないほどの大きさから始まるからである。さらに、甲状腺には結節を触れないのに、診断がついたときにはすでに頚部リンパ節や遠隔転移がみられる症例がある。インシデンタローマは完全に無視すべきではない。他の研究者も指摘しているように、インシデンタローマは甲状腺ホルモン剤で治療しないで、経過を注意深くみていくべきである。分化型甲状腺癌(乳頭癌と濾胞癌)の予後は腫瘍の直径と関連していおり、甲状腺内に限局している直径1.5cm以下の分化型甲状腺癌の患者はほとんど死亡しないことが分かっている。従って、触診で触れなくても直径1.5cm以上の甲状腺結節では穿刺吸引細胞診を施行した方が賢明である。それより小さい結節は治療をしないで経過だけをみる。6〜12ヶ月後に1回超音波をして、その後はその間隔で触診だけで数年間経過をみる。甲状腺の超音波は触診で異常である患者にのみ行うべきで、触診で異常のない患者にすべきではない。 |
良性甲状腺結節の確認:甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法は穿刺吸引細胞診より優れているか? |
|
短期間の甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法は診断の一助として考えられてきた。TSH抑制療法で縮小する結節は良性と考えられる。しかしながら、癌細胞にもTSH受容体が存在するのでTSH抑制療法が効く可能性がある。現に、13〜15%の甲状腺癌ではTSH抑制療法にて腫瘍の大きさが縮小する。TSH抑制療法が効かないからといって、癌であるとは言えない。一方、穿刺吸引細胞診の信頼性の高さは最近の沢山の総説で認められている。7つの施設の合計18,000以上の穿刺吸引細胞診をまとめ、GharibとGoellnerは穿刺吸引細胞診のsensitivityは83%、specificityは92%、総合すると信頼性は95%である。直径1cm以下の結節に対する穿刺吸引細胞診の結果の解釈には注意を要すが、超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診や放射線被爆の既往のある場合の穿刺吸引細胞診の診断は信頼性があり、正確である。
例えば、チェルノブイリ地区の患者に対する、穿刺吸引細胞診の甲状腺腫瘍の確認のsensitivityは98%で、specificityは99%、甲状腺腫瘍の予測確率は98%、甲状腺癌の予測確率は95%であった。以上の結果より、良性甲状腺結節と触診可能または触診不能な甲状腺癌や放射線被爆既往のある甲状腺癌との鑑別において穿刺吸引細胞診はTSH抑制療法より優れていることが分かった。 |
穿刺吸引細胞診における甲状腺癌の偽陰性の危険性を最小限にするために良性甲状腺結節を縮小させるためのTSH抑制療法 |
|
医師と患者にとって最大の関心事は穿刺吸引生検の針が病変部にちゃんと当たっていなくて、良性と診断される偽陰性である。この問題を最小限にするために、穿刺吸引細胞診で良性と診断されている症例に対して、TSH抑制療法を行って縮小する群と縮小しない群に区別し、縮小しない群は癌の可能性が高いと考えた。穿刺吸引細胞診での偽陰性の頻度は1〜10%と幅が広い。しかしながら、穿刺吸引細胞診に熟練している施設では、偽陰性の頻度は2%以下である。我々は、穿刺吸引細胞診は適切に行われた場合、正確かつ信頼性のある検査と考えており、甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法による確認は必要ないと考えている。穿刺吸引細胞診で良性と診断されている症例に対して、甲状腺癌がどれくらい紛れ込んでいるかを調べている研究が2つある。Boeyらは、穿刺吸引細胞診で良性と診断されている365人を平均30ヶ月フォローしたところ、2人だけが癌であった。偽陰性は0.6%だった。
興味あることに、穿刺吸引細胞診施行13ヶ月後、46%の患者では腫瘍は消失した。もう一つの研究では、穿刺吸引細胞診で良性と診断された439人を平均6.1年フォローしたところ、3人のみが癌であった。偽陰性は、0.7%であった。我々は、穿刺吸引細胞診は信頼性における検査であると結論づけた。穿刺吸引細胞診で良性と診断された結節がフォロー中に大きくならないと仮定したらの話だが、熟練した医師が行えば、偽陰性の率は容認範囲で留まるほど低い。故に、穿刺吸引細胞診での偽陰性を避けるために甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法を行うことは余分であると考える。 |
手術を避けるために美容上の理由で結節を縮小させること |
|
美容上の理由や手術を避けるために行われた結節性甲状腺腫に対する甲状腺ホルモン剤治療の以前の研究では、かなり効果があったと報告されている。しかしながら、1950年から1980年の間に行われた甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法の研究をよく検討すると、方法論での不備が判明した。例えば、どのような結節なのかの記載がない;結節の大きさとその変化の測定法が不正確である;効果の定義がなされていない;TSHの抑制状態が記載されていない;ほとんどの研究でびまん性、結節性、ヨード不足の地方性のものが含まれている;コントロールスタディがあるのはほんの2〜3である。結果として、甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法の有効率は0〜60%と格差がある。さらに、最近の総説でも上で述べた欠点を指摘している。この10年で、数人の研究者が高感度TSHと超音波を使って、単発性と多発性甲状腺結節に対する甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法の有効性を検討している。
nonrandomized studyが4つある【表3】。これらの研究の患者の合計は310人でそのうち206人が単発性甲状腺結節である。治療期間は3〜8ヶ月間である。有効の定義を体積が50%以下とすると、有効率は27〜56%である。
最も高い有功率はヨード欠乏地域からの報告である。残り8つはrandomized, controlled studyである【表4】。これらの研究の患者合計は491人で、246人が甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法を受け、209人はコントロール群である。偽薬を投与しているのは、4つのみで、残りは無治療である。研究期間は6〜21ヶ月間である。
ほとんどはTSHの抑制を確認するのに高感度TSH測定を用いている。
5つの研究ではコントロールと比べて、甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法の有効性は証明できなかった。備考として、治療群では治療前に比べて、有意に縮小している。しかし、無治療群でも自然に縮小するために、コントロールとは差がない結果となった。たとえば、Papiniらの研究では超音波でなく、触診で結節を触れなくなった。La
Rosaらは治療群がコントロール群に比べて有意に縮小したと報告した(p=0.004)。しかし、縮小したのは直径2.5cm以下の小さい結節のみである。つい最近、同じくLa
Rosaらは治療に反応する結節は細胞診のタイプと関連していると報告した;甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法に反応する例(体積が50%以下)は33%であるが、コロイド結節の62%、小さな変性結節の57%が治療で縮小するが、過形成や繊維化した結節は治療に反応しないことを示した。
これらの研究は一般的には、良性甲状腺結節を持つ患者にとって甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法はほとんど有益でなく、結節はしばしば、自然に縮小したり、消失することもあることそして、結節そのものではなく周囲の組織が縮小したために、結節が縮小したと間違えて解釈しているかもしれないことを示している。一部の症例(20%以下)では甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法に対して効果のあることを信じている研究者もいる。TSH抑制療法に効きやすい特徴はTSHが抑制されていない小さいコロイド結節(solid)である。
穿刺吸引細胞診で慢性甲状腺炎と診断されている結節や結節性病変に対してはTSH抑制療法で治療すべきであるということは大体、コンセンサスが得られている。しかしながら、もし血中TSHが上昇していなければ、この治療法を支持する証拠はほとんどない。さらに、TSH抑制療法が結節の原因にどのように影響を与えているかについての証拠は皆無である。しかしながら、ほとんどの結節はsolid
colloid(腺腫様甲状腺腫で触診できない多発性結節のうちで単発性結節として触れるもの)やsolid cystic(solidとcysticの混合したもので、病理学的にはいろいろなものが含まれる)であり、これらはTSH抑制療法には効果がないように思われる。 |
|
我々は甲状腺結節の自然経過について検討した研究や長期にわたるTSH抑制療法の効果についての研究をほとんど知らない。ほとんどの甲状腺結節は短期間の観察では大きさはほとんど変化しない。時として、大きくなったり、縮小したり、自然に消失することもあるが。Burchは無治療の場合、甲状腺結節の自然縮小するのは0〜35%であると報告している。最近の無治療で経過をみた5つの研究をまとめると、colloid
nodules(ほとんどはシンチで取り込のないもの<注釈:多分、腺腫様甲状腺腫のことと思われる)を持つ合計154人のうち、34人(22%)が6ヶ月から3年間経過をみているうちに、体積が50%以下に縮小した。甲状腺結節の大きさは自然に変化するのは明らかである。コントロールと比較した長期間観察した研究のみが、TSH抑制療法が甲状腺結節の増大を予防しているかどうかに結論がだせる。残念ながら、いまだにそのような研究はない。
最近、日本のKumaらは140 人の単発性甲状腺結節の患者を無治療で10〜30年間(平均15年間)フォローした研究を報告している。超音波と触診でフォローした結果、縮小したもの74人(53%)、不変47人(34%)、増大19人(14%)であった。42人(30%)では完全に消失した。消失した結節は超音波で大部分がcysticなタイプであった。
最初のころの検査では、超音波はなかった;穿刺吸引生検はcysticかsolidを鑑別するために使われていた。増大した19人のうち、5人(26%)は手術で癌であった。同じKumaらの報告では、穿刺吸引細胞診で良性と診断した134人の患者を9〜11年
フォローし、結局、1人(0.7%)だけが乳頭癌になった。注目に値することは、最終的には30%で結節は触診で触れなくなったことと13%で縮小したことである。さらに多くのデータがあるに超したことはないが、いままでの研究からある程度の結論が導き出される。無治療の甲状腺結節患者の50%は自然に縮小するか消失する、30%は不変、20%は増大する。縮小するタイプは嚢腫のことが多い、一方増大してくるタイプは癌を念頭に入れるべきである。増大してくる場合には、穿刺吸引細胞診を再度行うか手術すべきである。良性のcolloid
nodulesや慢性甲状腺炎に起因する結節は悪性に変化することはない。しかし、濾胞性新生物という細胞診診断がついた濾胞腺腫は癌の可能性が高い。ほとんどの施設で、このタイプの腺腫は手術をしている。この濾胞性新生物に対してまず、TSH抑制療法を勧める研究者もいる。短期間のTSH抑制療法で結節が完全に消失した場合のみしか、癌でないと言えないので我々はこのやり方は支持しない。さらに、濾胞性新生物の診断のついた10〜20%が癌であり、これらの症例は外科的に切除されるのがベストと考える。 |
頭部、頚部への放射線被爆の既往のある患者の甲状腺結節の予防 |
|
幼児期や小児期に頭部、頚部への放射線被爆の既往のある患者では甲状腺の良性および悪性の腫瘍の発生する危険度が増す。甲状腺結節の発生頻度は放射線被爆を受けた年令、被爆量、観察期間、遺伝的要因、ヨード摂取量に依存する。良性および悪性の甲状腺腫瘍は被爆して3年後くらいから出てくる。それから、頻度は毎年2%ずつ増えていき、15〜30年でピークに達する。放射線による甲状腺癌の特徴は癌が多発性であることである。ある研究では、55%が多発性癌であった。これらの癌はほとんどが乳頭癌であり、そのうちの20%では直径1〜5mmの小さなもので、臨床的には問題にならない。単発性結節とは別に微小癌があるかもしれないが、放射線被爆の既往のある患者でも良性甲状腺結節に対する処置は普通の良性甲状腺結節患者と同じである。放射線被爆の既往のある患者の甲状腺結節の評価、治療には一致した意見がない。過去には、甲状腺の大家の一部では、放射線被爆の既往のある患者に対しては、甲状腺が正常でも将来の甲状腺癌の発生を予防するために、TSH抑制療法を勧める人たちがいた。DeGrootはこの問題を調べ直し、放射線被爆の既往のある患者に対して新しい良性および悪性の甲状腺結節の予防には、TSH抑制療法は効果がないことを結論した。放射線被爆の既往のある患者で触診にて単発性甲状腺結節がみつかったら、治療の選択は穿刺吸引細胞診の結果で決めるべきである。穿刺吸引細胞診は放射線被爆の既往のある患者においても、普通の患者と同じく信頼性のある検査である。しかしながら、多発性の結節のために、癌になりやすい患者に穿刺吸引細胞診を行う場合、どの結節を調べるかによって診断が変わってくる問題があり、信頼性に欠ける。甲状腺画像診断はあまり有用ではない。甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法も甲状腺癌を診断するのに有効ではないので、我々は放射線被爆の既往のある患者のある患者での多発性甲状腺結節に対しては甲状腺全摘術を勧めるDeGrootの考えに賛成する。放射線被爆の既往のある患者で触診不能の
インシデンタローマが見つかったときの対応のしかたは、Stockwellらが推奨するように、検査や治療をしないで触診のみで注意深くフォローし、触診で結節を触れるようになってはじめて検査をするのが良いと考える。Fogelfeldらは放射線被爆の既往のある患者で良性甲状腺結節の手術を受けている患者を対象に、甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法について検討した。この研究では、511人の患者が術後11年間
フォローされた;TSH抑制療法群では8.4%に良性結節ができ、コントロール群では35.8%に良性結節ができた。これは、統計学的にも有意の差である。甲状腺癌の発生率は両群で差はみられなかった。放射線被爆の既往のある患者を甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法で治療すべきか?相反する結果のために、はっきりと推奨する方法を示すのは難しい。放射線被爆の既往のある患者に対しては、触診で結節を触れない場合は、甲状腺ホルモン剤で治療する必要はないが、甲状腺切除術を受けている患者に対しては甲状腺ホルモン剤の治療をするのが望ましい。 |
|
いままではずっと、良性甲状腺結節の術後は甲状腺結節がまたできないように全ての患者に甲状腺ホルモン剤を一生涯投与するのが標準のやり方であった。しかしながら、そのやり方でしても、切除した量や観察期間にもよるが、1年以内に0〜3%再発し、16年経つと19%が再発する。1940年から1980年までは甲状腺結節の術後の新しい甲状腺結節の発生を甲状腺ホルモン剤が予防していることを支持する論文が主流を占めていた。しかしながら、これらは、コントロールがないとか、retrospectiveなものである。1980年以降に出された研究結果は術後の甲状腺結節の予防に甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法が有効であるといういままでの概念に疑問を抱かせるものである。我々はこの問題を扱ったprospective,
randomized stdyを4つみつけた【表5】。この4つの研究の患者の合計は299人で、甲状腺ホルモン剤治療群132人、コントロール群167人である。かれらは、良性甲状腺疾患で甲状腺部分切除術を受け、1〜9年間フォローされた。術後の甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法は新しい甲状腺結節の発生を予防できなかったとする3つのデンマークからの研究に反して、イタリアからの報告では術後の甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法は新しい甲状腺結節の発生を予防できたとしている。イタリアの研究では、3年の観察期間でヨード欠乏地域でなされている。4つの研究のうち2つは術後の評価は超音波で行っている。また、2つの研究では観察期間が短すぎて、信頼性に欠ける。Bistrupらの研究では、100人の甲状腺術後の患者を無作為に甲状腺ホルモン剤投与群と無治療群に分け、9年間観察したところ、新しい結節のできた頻度は甲状腺ホルモン剤投与群15%、無治療群22%であった;統計学的には差はなかった。かれらは、甲状腺術後の患者に対する甲状腺ホルモン剤によるTSH抑制療法の効果はないと結論した。最近の論文でも、同じ結論のものがほととんどである。我々は、今回の検討のために術後甲状腺機能低下症になっているものを対象とした研究だけを選んだ。 |