[03]どうしてできるのか?−原因とリスクファクター |
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アメリカ合衆国とほとんどの先進国では、分化度の高い甲状腺癌は40歳代はじめの女性に多く起こります(男性の2.5倍)。乳頭癌の診断時の平均年齢は、女性で40〜41歳、男性で44〜45歳となっています。濾胞癌の発生平均年齢は、男女どちらも約8歳遅くなっています。分化度の高い甲状腺癌は、黒人よりも白人に約2倍多くなっていますが、濾胞癌は黒人の方に2倍多く発生します。
未分化癌は、高齢者に非常に多い病気で、発生時の平均年齢は60歳半ばから70歳半ばであると報告されています。また、この病気に罹る女性は、男性よりわずかに多くなっているだけです。未分化癌は、良性の増殖性甲状腺疾患(甲状腺腫)や以前分化度の高い甲状腺癌であったものから生じてくる傾向があります。
甲状腺の髄様癌は2つの形で発生します。散発型(70%)と常染色体優性遺伝性家族発生型(30%)で、後者には多発性内分泌腺新生物(MEN)症候群タイプ2にある、数多くの他の内分泌腺の異常と関連していることが多いのです。髄様癌は、散発性でも家族性でも男女両方に同じように発生します。そして、MENを伴わないほとんどの新しいケースは、40歳代始めの患者に見られ、MENを伴うものは、特定の症候群にもよりますが、診断時年齢は15歳から27歳の範囲となっています。 |
分化度の高い甲状腺癌を起こしやすくすることがはっきりしている唯一のファクターは、治療用照射や核爆発のような外部からの被爆、または放射性降下物あるいはその他の放射性物質の摂取による内部被爆のいずれであっても−電離放射線への被爆です【図3】。 |
【図3】 |
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ヨードは体内で甲状腺にしか集積しないため、甲状腺は核実験や事故の放射性降下物の主要成分である環境放射性ヨード(131-I)に特別に被害を受けやすいのです。放射線照射のリスクは、小児期の様々な良性疾患に対し、頭部や頚部の低線量治療照射の結果としてまず認識され、記述されたものです。結果的にその治療法は行われなくなりました。放射線照射に関連した甲状腺新生物発生のリスクは、約20Gy(2000ラド)の線量までは次第に増加します。癌が生じるには照射後少なくとも3〜5年必要ですが、リスクは照射後40年間一定のままです。リスクは特に子供にはっきり現れ、照射時の年齢が高くなるにつれだんだん減少してきます。現代の放射線治療では、小児のウィルムス腫瘍や神経芽細胞腫に対する上胸部や頚部への放射線治療や青少年のリンパ腫に対する外被門部(横隔膜より上の全リンパ節)の放射線治療でのリスクがそのまま残っています。しかし、分化度の高い甲状腺癌を生じた患者の90%で、過去の放射線被爆歴がありません。食餌性のファクター、特にヨード欠乏症、またはヨードの取り込みを阻害するアブラナ科の野菜(ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー)の摂取量が高い場合は良性の甲状腺増殖症(甲状腺腫)を生じ、濾胞癌と未分化癌の両方に中程度の関連性を持つと考えられています。 |