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私は分化度の高い甲状腺癌が再発しました。頚部リンパ節に転移しており、CTスキャンでは両方の肺にも結節が見られました。生検ではどちらも甲状腺癌の転移であることが確かめられました。放射性ヨードで治療する予定になっています。転移したリンパ節の手術は必要ないのでしょうか? |
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放射性ヨードによる甲状腺スキャンの目的は、甲状腺全組織の機能を見分け、はっきりさせることです。甲状腺組織の特異な点は、ヨードを取り込み、集め、(正常な状況では)貯える能力です。これは他の器官では行われません。甲状腺は |
- 分化度の高い甲状腺癌では、手術と放射性ヨードが唯一寛解をもたらし、生存率と生活の質を改善できる方法です。
- 正常な甲状腺は、どのタイプの甲状腺癌よりもヨードを必要とし、ヨードを集める力が高いのです。そのため、分化度の高い甲状腺癌に対して放射性ヨードが有効であるようにするには、正常な甲状腺組織をまず完全に取り除いてしまわなければなりません。
- 異なった場所の甲状腺腫瘍は、異なったヨード集積能を持っていることがあります。
- 放射性ヨードは腫瘍のいちばん貪欲な部位に選択的に取り込まれ、それ以外の部位ではほとんど、あるいはまったく取り込まれないことがあります。
- より多くの甲状腺癌が存在すれば、治療効果を上げるための放射性ヨードの総線量は高くなりますが、副作用や後に合併症を起こしてくる可能性は大きくなります。
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相反するファクターを考慮してバランスをとれば、もっとも成功の可能性が高く、ダメージを起こす可能性が最小である治療を選択するのがベストということになります。では、どのようにしてバランスをとるのでしょうか。
一方で、一部の転移性病巣では−肺などですが−放射性ヨードが唯一の治療法であるのは明らかで、手術は選択対象ではありません。内臓に転移したもの−生命に関わる臓器への転移−は患者の生存にはるかに大きな脅威を与えます。そして、肺への転移に関しては、比較的小さな量の放射性ヨードを普通、繰り返し与え、転移病巣周辺の正常な肺組織の瘢痕化を防ぐ必要があります。
その一方で、転移したリンパ節が大きくなっていたり、筋肉や皮膚、あるいは深部の頚部組織に癒着しておらず、患者が手術に耐えられるようであれば、普通は手術で管理できます。リンパ節転移病巣が頚部や甲状腺床の疾患のコントロールに影響する一方で、生存率にははっきりした効果がありません。理論上は手術が頚部リンパ節の治療としてはいちばん効果があると思われますが、患者の中には医学的に大きな手術が不適当な人もおります。またそれ以外では、様々な個人的事情から手術を拒む人もいると思われます。放射性ヨードがいちばん重要な罹患部位−肺−に対する治療として選択された場合、すべて放射性ヨードで治療する方が容易であると思われます。しかし…リンパ節転移病巣の方が肺の病巣部より放射性ヨードの取り込みが高いようであれば、放射性ヨード治療を繰り返し行って、転移リンパ節を破壊する必要があります。それまでは肺の病巣に有効な線量はまったく届かないことになります。したがって…手術を避けて、現存するすべての病巣をそのまま放射性ヨードで治療することは、病気のもっとも危険な部分−肺病巣−の治療が遅れる可能性があります。放射性ヨードは、他のタイプの癌に対するほとんどのホルモンあるいは化学療法剤のように、感受性のある病変のもっとも小さいものにいちばん効果があるのです。他のたくさんの癌から学んだとおり、異なった治療法を組み合わせることとそれをいちばん効果の高いものに対して使うようにすること−アクセス可能な大きな病巣に対しては手術、手術が危険であるか技術的に困難な部位に対しては放射性ヨードというように−がもっともよい結果を得ることになると思われます。
個々のケースでなされる決定は、患者と主治医によるすべての具体的ファクターの評価によりなされ、また患者の年齢や全身状態、および検査値などの観点から互いに合意点を見出すことが勧められます。これは個々の患者に関するデリケートかつ特異的なバランスであり、軽く受け取られるものでもなく、ウェブサイト上で述べられた一般的原則に基づいて決められるものでもありません。
この重要で複雑な問題に直面された時は、その判断と人柄が信頼できる専門医を見つけ、すべての問題を徹底的に、また率直に調べたり話し合ったりして、決めるようになさってください。 |