第41代アメリカ合衆国大統領、ジョージ・ブッシュはその任についた歴代大統領の中で、5番目に年を取っていたのですが、多くの人からアメリカの歴史上いちばん身体的に健康な大統領の一人だと思われていました。したがって、ブッシュ大統領が66歳で心臓病のため入院した時は、ショック以外の何ものでもなかったのです。検査の結果、自己免疫性の甲状腺疾患が本当の犯人であることが確かめられた時、大衆はさらに不思議に思ったのです。
1991年5月、土曜日の午後、キャンプデービッドのグランドを走っている最中に、大統領は息が切れて、胸が締め付けられるのとひどく疲れた感じに襲われました。ホワイトハウスの医師が診察し、大統領の心臓の鼓動が速く、不規則であるのを見つけました。大統領が心房細動を起こしていることに気付いた医師は、直ちに大統領をベセスダ海軍病院に入院させる手はずを整えました。
病歴聴取の際に、大統領は入院する2週間前からいつになく疲れたと感じていたと言いました。さらに、大統領は2ヶ月で9ポンド(約4キロ)やせ、字がだんだんうまく書けなくなっていたのです。身体的検査で大統領の手が細かく震えていることや甲状腺がわずかに大きくなっている(甲状腺腫)のが見つかりました。最初の検査では、心房細動を起こすような心臓病はないことがわかり、さらに詳しい検査をしたところ、バセドウ病によって引き起こされる甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンの過剰)であることが明らかになったのです。過剰な甲状腺ホルモンが大統領の心臓を過度に刺激し、その正常なリズムを乱したのです。
バセドウ病は自己免疫疾患であり、この国での甲状腺機能亢進症の原因のトップです。今日まで、免疫系がおかしくなる本当の原因をまだ研究者が突き止めることができないでいます。しかし、自己免疫疾患のはっきりした特徴をいくつか見つけました。一般的に、自己免疫反応は免疫系が誤って体内の健康な細胞を“侵入者”として認識し、これらの細胞を攻撃する抗体を作る際に起こります。特に女性の間には、自己免疫疾患に罹りやすい遺伝的素因があるようです。さらに、自己免疫疾患に罹っている人は別の自己免疫疾患が出る可能性も高くなります。
バセドウ病は甲状腺、目、そして皮膚をおかすことがあります。バセドウ病の甲状腺機能亢進症では、抗体が甲状腺の中にあるTSH(甲状腺刺激ホルモン)を捕まえる部位を攻撃します。これらの抗体はやがてTSHのように機能しはじめます。しかし、甲状腺を刺激して、過度に甲状腺ホルモンを分泌させます。甲状腺ホルモンが過剰になることで、実に様々な症状が起こってきます。バセドウ病の甲状腺機能亢進症でいちばん多い症状は、甲状腺の肥大(甲状腺腫)や疲労、神経質、いらつき、発汗量の増加、不眠、そして体重減少です。 |
|
ジョージ・ブッシュ |
その甲状腺の持ち主が全国的なメディアの詮索の的になった人の言うことを信じなさい:病気の診断と治療を受けたことで、満たされた意義のある生活を続けて来ることができた。同じ状況に直面している人に対し、行動を起こし、医師にかかることを心からお勧めする。自分自身と自分の愛するもののためにそうする責任があるのだから。 |
|