甲状腺・副甲状腺のどのような病気が内視鏡手術の適応となるか? |
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内視鏡手術の技術や器具の進歩により手術の適応は変わってきますが、現在のわれわれの考えは、 |
- 甲状腺の良性腫瘍(5cm以下)で片側(甲状腺は右葉と左葉にわかれハート型になっている)の病気:
これは、両側にあると現段階では手術時間が長くなること、あまり腫瘍が大きいと悪性(癌)の可能性が高くなることや大きな腫瘍を取り出すためにどこかにそれに見合う皮膚切開が必要になるからです。近い将来には手技の工夫などにより両側の病気も可能と考えます。
- 甲状腺の小さな悪性病変(癌)で甲状腺以外には病気がないと判断された場合:
最新式の超音波(エコー)では小さな癌も細胞の検査と併用することにより診断が可能で、もちろん周囲の転移リンパ節の診断にも有効です。転移がない小さな癌の場合、甲状腺を切除することにより、甲状腺癌で命を失う可能性はほとんどありません。
- 副甲状腺(上皮小体)腫瘍のなかで、1つの副甲状腺の病気と考えられ部位の診断がついている場合:
副甲状腺の病気に関しては別の項を参考にしていただきたい。
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以上ですが、患者さんの腫瘍の位置・体型・ケロイド体質・社会的活動など様々な要素がありますので一概には決められないところもあります。われわれの施設では長年甲状腺・副甲状腺疾患の外科治療を行っており、手術創をきれいする工夫をしており、退院時には患者さんに創部(傷)管理の指導を行っています。指導どおりにしていただければ、ケロイド体質でない限り、ほとんど問題のない手術痕になります。それでは何のために内視鏡手術をおこなっているのでしょうか?理由は、われわれ医療側がきれいな傷と思っても患者さんにとっては満足いかない場合もあるからです。最近は病気を治すだけでなく、傷に対する要望が強くなっています。先にも述べましたが、頚部は露出部であることより、なおさら傷に対する要望が強くなるのは当然なのかも知れません。内視鏡手術の利点の一つに切開線の場所を選択できることと思います。たとえば、首を大きく露出するような服を好んで着る方は、見えない範囲(鎖骨より下で外の方)に切開線がくるのを望むかもしれませんし、通常では見えない顎の下や腋の下の切開線を望む方もおられるでしょう。時代が進むとともに患者さんの要望も多種多様になってきますので、甲状腺・副甲状腺の病気の専門病院としては、可能であれば(安全性・確実性などを考慮)それらをかなえてあげたいと考えています。 |