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国際甲状腺連盟(TFI)ニュースレター【ThyroWorld】の抜粋<2>

03:内分泌学会よりの便り

1999年夏の終わりに、内分泌学会会長であるLarry Jameson博士が全会員に重要な甲状腺の研究に関する公開書簡を出しました。Robert Volpe博士とLarry Wood博士のどちらもこの学会の会員ですが、ThyroWorldを出すにあたって、この情報を私共に伝えてくださいました。

1999年8月に、New England Journal of Medicine(341巻、8号)に母親の甲状腺ホルモン欠乏が子供に発達上の問題を引き起こすということを報告した最近の研究の所見が載りました。この研究はJames E. Haddow, MD等によって行われたものですが、まだ見付かっていない未治療の甲状腺機能低下症のある妊婦すべてにとって重要な意味を持つものです。

Haddow博士の研究チームは、1987年から1990年の間に出産した25,216名の妊婦のグループで、甲状腺機能低下症の証拠を見るために保存血清サンプルの検査を行いました。これらのサンプルから、妊娠中に甲状腺機能低下症であった女性が62名いたことを突き止めました。その女性達の子供は、研究が行われた時点で7歳から9歳になっていましたが、その子供達が子宮内で受けた可能性のある甲状腺機能低下症の神経学的、精神的影響が調べられました。一連の注意力や言語、読解力、および視覚−運動成績の検査を行い、その結果を注意深く条件等を合わせた母親が妊娠中に甲状腺機能低下症でなかったコントロールグループの子供達と比較しました。

妊娠中に母親が甲状腺機能低下症であった子供達はすべての検査で成績が悪かったのです。平均知能指数はコントロールグループに比べ、4ポイント低く、甲状腺ホルモン治療を受けたことのない亜集団の母親から生まれた子供達により大きなIQの差が見られたのです(平均IQの減少は7ポイント)。このグループ内では、子供の19%が85未満のIQであったのに対し、コントロールグループの子供では5%でした。この報告は、もっと前に行われたいくつかの小規模の研究の所見を確認するものであり、妊娠中の未診断、未治療の甲状腺機能低下症が脳の発達に有害な影響を与えることを示唆するものです。内分泌学会は、この研究が妊娠前と妊娠中の甲状腺疾患の管理に重要な意味を持つものと信じています。会員を代表して、学会が以下の勧告を含む方策の声明を出しました。
  • 妊娠前あるいは妊娠初期の妊婦に対する費用効率のよい甲状腺機能低下症のスクリーニング対策を講じる。これには妊娠のどの時期にスクリーニングを実施するかや検査方法、母親の甲状腺機能低下症の診断基準、治療のガイドライン、およびスクリーニングのコストを定めるため、さらなる研究が必要である。
  • 妊娠中に甲状腺機能低下症であることがわかった妊婦は、発育中の胎児に適切な量の甲状腺ホルモンを供給するため、直ちに甲状腺ホルモン補充療法を始めなければならない。
  • 甲状腺ホルモンの必要量は妊娠中に約25%〜50%増加する。したがって、すでに甲状腺機能低下症であることがわかっている女性は、妊娠中に甲状腺ホルモンレベルのモニターを受け、甲状腺ホルモン補充量の適切な調節をしてもらわねばならない。
内分泌学会はこの重要な問題にどのように取り組むのがいちばんよいかということに関して−医師、患者および消費者レベルでの合意を得るために、関連団体との接触を始めております。

内分泌学会会長として、この問題に関するあらゆる展開をお伝えし続ける所存であり、またこの内分泌学会のもっとも重要な問題の一つとなる可能性のあることに皆様のお手をお借りすることもあるかと思います。

J. Larry Jameson, M.D., PhD:内分泌学会会長

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