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この研究の中で、Bunevicus博士等は甲状腺ホルモン療法についていくつか重要な問題を提起しています。この研究では、重症の甲状腺機能低下症に罹っている33名の患者が純サイロキシン(T4)または量を減らしたT4にもっと作用の早いトリヨードサイロニン(T3)を加えたもののどちらかで、交互に治療を受けました。甲状腺や循環血中にどちらのホルモンも含まれていることはずいぶん前から知られていたので、彼らが思い付いたことは別に目新しいことではありません。血液中のT3とT4のバランスと一致させようとして開発された製剤さえあるのです。過去には、研究者が純サイロキシン治療と比べ複合ホルモン治療の臨床的効果にはっきりとした差を証明することができませんでした。
そのため、ほとんどすべての医師が純サイロキシン(T4)を処方しております。また、サイロキシンが体内でT3に変換されることも分かっており、それは必要に応じて起こるのだとされています。医師は、T3錠がこのホルモンの血中レベルを正常より高くし、危険な心不整脈や心臓発作が、特に高齢者や心臓病のある人に起こる危険性が生じることも心配しています。
したがって、ほとんどの甲状腺疾患患者はサイロキシンだけで治療を受け、大体は具合がよくなります。
しかし、中には純サイロキシンの治療では具合がよくならない患者もおります。一部の患者では枯草熱や心臓病、あるいはうつ病のような別の病気が問題になることがあります。それ以外の人では、Bunevicus博士等が得た情報から、T4を減らして少量のT3を併用することで具合がよくなる人もいることが示唆されています。
明らかに、この分野ではもっと研究が必要ですし、医師はまだ高齢者や心臓病のある人に作用の早いT3を使うことには注意する必要があります。 |
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