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[045]
甲状腺疾患健康ガイド

03:臨床診断の確認
01 甲状腺疾患の臨床検査
02 TSH(サイロトロピン)の測定
03 血中T3およびT4の測定
04 甲状腺ホルモン結合タンパク
05 放射性ヨード取り込みと甲状腺スキャン
06 甲状腺抗体
07 甲状腺の生検

01 甲状腺疾患の臨床検査 ↑このページのトップへ
甲状腺疾患に罹っている多くの患者は、甲状腺が甲状腺ホルモンを作り過ぎているか(甲状腺機能亢進症)、あるいは作り出される甲状腺ホルモンの量が不十分(甲状腺機能低下症)であるかのどちらかです。そのような患者は普通、甲状腺腫(甲状腺の腫れ)を伴っています。しかし、甲状腺腫のある患者の多くは正常な甲状腺機能を有しています。甲状腺にしこりまたは結節を生じた患者のほとんどは、やはり正常な甲状腺機能を有しています。甲状腺結節のある患者のごく一部に機能し過ぎの結節ができ、患者が甲状腺機能亢進症になります。

もっとも重要な臨床検査の利用法としては
  1. 甲状腺疾患の臨床診断の確認
  2. 治療を受けた甲状腺疾患患者のモニター
  3. 個々の結節の中から悪性の可能性があるものを見分けて、外科医が取り除く。

02 TSH(サイロトロピン)の測定 ↑このページのトップへ
脳下垂体ホルモンであるTSHは、甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを作って放出させる働きを持っています。甲状腺ホルモンレベルが下がると、TSHが上がりますし、その逆の場合もあります。感度の高いアッセイを用いるTSHの測定は、現在のところ甲状腺疾患が疑われる場合の初期検査として勧められています。TSHアッセイで、甲状腺機能低下症または甲状腺機能亢進症の患者と正常な人を見分けることができます。基本的には、TSHが正常であれば、原発性甲状腺疾患ではないということになります。TSHが上がっていれば甲状腺機能低下症が疑われ、下がっていれば甲状腺機能亢進症が疑われます。まれに、TSHが薬(コルチコステロイドのような)や重症の精神病、あるいは甲状腺が原因ではない病気によって下がることがあります。しかし、そのような例は、外来患者ではきわめてまれです。

03 血中T3およびT4の測定 ↑このページのトップへ
TSHが異常であれば、甲状腺の異常の程度を調べるためにサイロキシン(T4)またはトリヨードサイロニン(T3)の測定を行います。T4またはT3が上がっており、TSHレベルの低下、または分泌停止を伴っておれば、甲状腺機能亢進症であることがはっきりします。TSHの上昇とT4レベルの低下があれば、間違いなく甲状腺機能低下症です。初期検査にTSHアッセイを用いるようになってから、医師がTSHが低い、または高い患者で、T4およびT3レベルが正常な患者を見分けることができるようになりました。これらの患者の一部は最終的にはっきりした甲状腺疾患を発症してきますが、今のところ誰がそうなるのか予測することは難しいのです。そのような患者の評価と管理は別に分けて行う必要があります<注釈:今ではT4,T3よりFT4(フリーT4),FT3(フリーT3)を測定します>。

04 甲状腺ホルモン結合タンパク ↑このページのトップへ
甲状腺ホルモンは甲状腺ホルモンと結合する蛋白質と一緒に全身を回っています。組織レベルで活性を持つのは、遊離、または結合していないもののみです<注釈:これがFT4(フリーT4),FT3(フリーT3)です>。しかし、遊離ホルモンレベルは、全体の甲状腺レベルの1%にしかすぎません。妊娠や避妊用ピルを飲んでいるというようなある種の状況下では、エストロゲンまたは女性ホルモンの上昇を伴い、甲状腺ホルモン結合タンパクのレベルが上がります。体がT4とT3の産生を増やして埋め合わせをするので、遊離レベルは正常なレベルのままです。しかし、そのような人では総T4とT3は高くなります。遊離レベルが正常なままなので、TSHには変化がありません。様々な状況で、遊離T4とT3の測定を利用できます。また、代りにT3レジン取り込み試験を行うこともできますし、これは甲状腺結合タンパクのレベルを間接的に測るものです。FT4指数は総T4にT3レジン取り込み試験の値を掛けたものですが、真の遊離T4レベルに正比例しているはずです。妊娠中は、総T4レベルが上がり、T3レジン取り込み値が下がるので、遊離T4指数は正常です。TSHスクリーニングが利用できるようになったことで、このような状況ではTSHが正常なのに甲状腺結合タンパクに変化があることからくる混乱はほとんどなくなりました。

05 放射性ヨード取り込みと甲状腺スキャン ↑このページのトップへ
甲状腺はヨードを取り込み、甲状腺ホルモンを作るのに使います。放射性ヨードもまったく同じように甲状腺に取り込まれ、代謝されます。経口投与された放射性ヨードのうち、約20%が24時間以内に甲状腺により取り込まれます。これを放射能カウンターを甲状腺の上にかざして測定します。子供や妊婦では普通、この検査は行われませんが、放射能の線量はごくわずかなので、この検査は安全なものです。甲状腺機能亢進症の患者では、バセドウ病のような永久的な甲状腺機能亢進症の原因があると取り込み量が増え、甲状腺炎のような一時的な甲状腺機能亢進症の原因では、取り込みが抑制されるので、放射性ヨード取り込み試験により区別することができます。他には、甲状腺の写真、または「画像」を撮ったり、放射能でラベルしたトレーサー(普通はテクニチウム)の甲状腺内の分布を見たり、記録することができます。これが甲状腺スキャンと呼ばれるものです。スキャンを先に述べた放射性ヨード取り込み試験の代りに使うこともできます。さらに、スキャンによって甲状腺の形やサイズがわかり、甲状腺結節のある患者では結節が機能しているかどうかを確かめることができます。

06 甲状腺抗体 ↑このページのトップへ
慢性甲状腺炎に罹っている患者には自己免疫疾患があります。甲状腺抗体は甲状腺の中にある患者自身のある種の蛋白質(抗原と呼ばれます)に反応する血液中の蛋白質です。慢性甲状腺炎の患者では、通常高レベルの抗体が見つかり、したがってその抗体が自己免疫過程のマーカーとなります。時には正常な高齢の女性に弱陽性の抗体レベルが見つかりますが、これは病気を示すものではありません。バセドウ病による甲状腺機能低下症のある患者には、血液中にTSHによく似た作用をする甲状腺刺激抗体があり、これが甲状腺の活動し過ぎの原因です。

07 甲状腺の生検 ↑このページのトップへ
甲状腺の生検は現在ひろく使われており、(多くの医師により)孤立性甲状腺結節のある患者で一連の初期検査の中に含めて行うべき検査であると考えられています。この処置では、細い針を注射器の先につけて甲状腺の異常がある部位に刺します。それから注射器のプランジャーを引くと、針の根元に少量の甲状腺細胞が吸引されます。その後、これらの細胞をスライドグラスの上に薄くぬり広げます。このスメア標本を病理学者が調べ、甲状腺の病気があるかどうかを見ます。これは簡単で、時間もかからず、痛くもありません。ちょうど血液を取るのと同じようなものです。甲状腺の嚢胞のために甲状腺結節が出来ている患者では、生検のテクニックを使って中の液体を排出させることができます。針を刺した部位に軽い痛みを覚えることがあり、まれに腫れや内出血が起きることもあります。ただ、針のために甲状腺以外の組織を傷つけたというようなことはほとんど聞いたことがありません。甲状腺癌が広がったという報告もありません。子供でも局所麻酔を必要としないのが普通です。

甲状腺の腫れや結節が触れない場合、甲状腺の生検が行われることはありません。しかし、甲状腺結節や多発性結節性甲状腺腫がある患者、あるいは甲状腺炎の可能性のある患者では、この方法が非常に役立つことがあります。甲状腺結節の性質を完全に見極めるのは手術しかありませんが、結節の性質を診断したり、悪性の甲状腺癌と良性腫瘍の鑑別したりする場合には、甲状腺生検では85〜95%の有効性があります。

しかし、甲状腺生検がうまくいくかどうかを定める主なファクターは、生検を行う人とスメア標本を調べる病理学者の経験です。

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