- 甲状腺機能亢進症患者では、循環器疾患と脳血管障害の死亡率が有意に増えている。
- 潜在性甲状腺機能亢進症患者(甲状腺ホルモンが正常で、TSHのみ低値の患者:甲状腺ホルモンを服用している患者は除外)においてさえも、循環器疾患の死亡率が有意に増えている可能性がある。
- 上記の循環器疾患と脳血管障害の死亡率増加に関与しているのは、心房細動であることがわかった。
- 甲状腺ホルモン過剰は、心房の不整脈を引き起こす原因になる。特に、心房細動が起こりやすい。
- 潜在性甲状腺機能亢進症患者(甲状腺ホルモンが正常で、TSHのみ低値の患者:甲状腺ホルモンを服用している患者は除外)において、心房細動が一般人より多いことが報告されている。
- 抗甲状腺剤によって治療して、甲状腺ホルモンが正常化しても3ヶ月間は不整脈が出やすい危険性はある。
- 心房と違って、心室に対して甲状腺ホルモンはほとんど影響を与えない。
- ベータ遮断薬は、甲状腺機能亢進症の動悸などの症状を和らげるために使用される。
- 心房細動を持つ甲状腺機能亢進症に対して抗凝固療法を行うことは、一般に推奨されている。しかし、心房細動を持つ甲状腺機能亢進症に対して抗凝固療法の有用性について検討された研究発表がないので、そのような治療法の危険/利益比率は確立されていない。個々の症例で、医師が判断しているのが現状である。
- 甲状腺機能亢進症の治療を始めて8〜10週以内に2/3の症例では心房細動が正常調律に自然に戻る。したがって、患者が甲状腺機能正常になって3ヶ月を越えても、まだ心房細動が持続している場合、時期を逸しないで電気的除細動を行うことが重要である。
- 甲状腺ホルモンは、心臓にある遺伝子に影響を与えていることは分かってきているが、まだ解明されていない。
- 甲状腺機能亢進症と交感神経の関連性は、以前から研究されてきたが、矛盾点も多く、まだ完全に解明されたわけではない。現時点では、カテコールアミンに対する感受性の増加、二次的なベータアドレナリンレセプターの増加、副交感神経の減少が原因であるという説明がなされている。
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