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[052]
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不整脈と甲状腺機能障害:隠れた脅威?
FAIZEL OSMAN, MICHAEL D. GAMMAGE, MICHAEL C. SHEPPARD, JAYNE A. FRANKLYN
J Clin Endocrinol Metab 87: 963-967, 2002

まとめ
甲状腺機能亢進症は長期的な予後がはっきりしていないにもかかわらず、治療効果が期待できるためにしばしば可逆性なものとして受け止められている。最近の研究から、予後は決して良いものではないことを示すデータが出ている。長期の追跡調査は、放射性ヨード治療を受けた顕性甲状腺機能亢進症と同様に血清TSHのみが抑制されている潜在性甲状腺機能亢進症の場合でも、心血管や脳血管障害による死亡が増加していることが分かってきた。甲状腺ホルモンは、心筋に対する直接効果のみならず、不整脈(特に上室性)の素因をも作る。自律神経系に対する甲状腺ホルモンの効果は、不整脈を起こす原因にもなるかもしれない。甲状腺機能亢進症の合併症である心房細動は、塞栓症の原因として知られている。甲状腺機能亢進症患者における心房細動の発生は、他の上室性不整脈(臨床的に明らかなものやホルター心電図によって見つけられるもの)と共に心血管系による死亡増加の原因かもしれない。上室性不整脈を治療することで(例えば抗凝固剤、抗不整脈薬)、長期の心血管系の予後を改善するかもしれないが、それらの役割は大規模な治療試験でのみ確認される。

はじめに
ヨード欠乏地域【例えば、イギリスと米国(1)】において、甲状腺機能亢進症は女性の3%、男性の0.3%でみられる。甲状腺機能亢進症が洞性頻脈、収縮期高血圧、心室の収縮期や拡張期の機能変化を引き起こしたり、不整脈【特に心房細動(2)】なども引き起こすことはよく知られている。それらの不整脈や心臓の問題は長期的な予後がはっきりしていないにもかかわらず、甲状腺機能亢進症を治療すれば改善する可逆性障害として受け止められている。しかし、最近の研究によれば、特に血管疾患に関して必ずしも可逆性ではないことが示唆されてきている。

驚くべきことに、甲状腺疾患を治療した場合の罹患率と死亡率の長期的な観察研究がほとんどなされていない。1950年から1989年の間に放射性ヨード治療を受けた甲状腺機能亢進症患者7209人のカルテを調べた我々の最近の研究(3)から、それらの患者では全ての原因の死亡率が増加していることが分かった。カルテに記載された死因(ICD-9)は、イングランドとウェールズにおける年齢をマッチさせた死亡率と比較し、相対危険度として使用される死亡指数(SMR)を標準化した。死亡率増加は、循環器疾患【心血管(SMR1.2、95%の信頼区間1.2〜1.3、p<0.001)と脳血管障害(SMR1.4、95%の信頼区間1.2〜1.5、p<0.001)】による死亡率増加が主な原因である。リウマチ性および高血圧性心臓病による死亡の危険度も増加することがわかった。虚血性心疾患による死亡の相対危険度はそれほど増加しないが(統計的には有意であるけれども)、虚血性心疾患による死亡の絶対危険度は高く、カルテでみられた多くの死因は虚血性心疾患(SMR1.1、95%の信頼区間1.0〜1.1、p=0.03)に起因していた。不整脈とうっ血性心不全(ICD-9カテゴリー:「他の」循環疾患)による死亡も、増加してきている。我々の研究に加えて、放射性ヨード治療を受けた甲状腺機能亢進症女性患者1762人を平均17.2年(4)フォーローアップした研究によれば、血管系による死亡率の増加がみられたと報告されており、また放射性ヨード治療を受けた甲状腺機能亢進症患者10,552人を平均15年(5)フォーローアップしたもう一つの研究も同様の結果を報告している。面白いことに、救急で入院する患者を対象とした最近の研究で、血清フリーT3濃度の高い症例は、冠動脈疾患を持っている頻度が2.6倍高いことが分かった(6)

これらの報告は、甲状腺ホルモン過剰と心血管系疾患の発生の明らかな関連を暗示するものである。我々は潜在性甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモン補充療法を受けていない患者を対象)を10年間以上フォーローアップして、被検者の地域に密着した研究で循環器疾患(特に心血管疾患)による死亡が増加していることを報告した(7)

これらのカルテを詳細に検討した研究から、不整脈、特に心房細動【動脈塞栓を起こす原因として記載されている(8)】の合併症により、心血管や脳血管疾患での死亡率が増加していることがわかった。

不整脈の引き金:甲状腺ホルモンの心筋に及ぼす影響
顕性甲状腺機能亢進症と心房細動
成人において、洞性頻脈が甲状腺機能亢進症による最も一般的なリズム障害であるが、その次に頻度が高い心臓リズム障害は心房細動である。甲状腺機能亢進患者の10%〜15%で心房細動(9)がみられる;心房細動の発生率は、心臓病の有無とはかかわりなく、年齢が高くなるにつれて増加する。心房細動は、脳血管障害を起こす独立した危険因子であることはよく知られている。甲状腺機能亢進患者における塞栓症の割合を調べた研究は2つあるのみである。その一つ研究において心房細動を持つ甲状腺機能亢進患者は、正常調律の甲状腺機能亢進患者と比べて高い塞栓症がみられた(8, 10)【表1】
潜在性甲状腺機能亢進症と心房細動
潜在性甲状腺機能亢進症は、一般住民ではよくみられる疾患である。潜在性甲状腺機能亢進症の頻度は、ヨード欠乏地域では成人において、0.5%〜3.9%(11)、老年者(12)では11.8%との報告もある;潜在性甲状腺機能亢進症の頻度は、ヨード欠乏地域で高いかもしれない。潜在性甲状腺機能亢進症は、無症状であり、血清T3値とT4値が正常で血清TSH値が抑制された状態と定義される(9)。一般住民で潜在性甲状腺機能亢進症の最も多い原因は、甲状腺ホルモン補充療法中かTSH抑制療法としての甲状腺ホルモン剤を服用している場合である。血清TSH低値は、一般に甲状腺ホルモン過剰の敏感な指標であって、多人数を対象とした研究で、血清TSH低値を示していた人は、10年間の経過観察で心房細動になる危険度が3倍高いことが報告された(9)。この研究では、2,007人の60才以上(フラミンガム心臓研究)の患者を10年間追跡した。これらの患者は、この研究の初めは心房細動を持っていなくて、それぞれ血清TSH値によって分類された。10年間の経過観察中に、血清TSH正常値の場合、心房細動の累積発生率は11%であるのに比し、血清TSH低値(0.1mU/L以下)を示した192人(10%)の心房細動の累積発生率は28%で有意に高値を示した(p=0.005)。血清TSH低値の場合、心房細動を呈する相対的危険度は3.1(95%信頼区間1.7〜5.5)であり、血清TSH正常値と比較しても、有意に危険性が高かった(p<0.001)。血清TSH値が僅かに低い群と血清TSH高値群での心房細動の発生率は、それぞれ16%と15%であった;これらの群と血清TSH正常値を比較しても、心房細動発生率に差はみられなかった【図1】。この研究では、もっと長期にわたる死亡率や心房細動の罹患率データがまだない。

潜在性甲状腺機能亢進症による心房細動発症の危険性に関するこれらの所見から、また以前に報告されている心房細動が血管系の死亡率を増加させるという研究結果から(7)、血清TSH低値を示す人に対して抗甲状腺剤を使用すべきかどうかは論争中である(13)。一部の研究者は治療をしないで慎重な経過観察を支持している(14)。しかし、別の研究者は、機能性甲状腺結節や心臓病の危険因子(例えば高齢者や既存の心臓病を持っている人)を持っている症例に対して抗甲状腺剤や放射性ヨードで積極的に治療することを推奨している(13)
他の上室性不整脈と甲状腺機能亢進症
上室性期外収縮(特に、肺静脈付近から生じるもの)は、心房細動を引き起こすことが知られている(15)。上室性期外収縮は、甲状腺中毒性患者において年令、性をマッチさせた対照群と比べて頻度が高いことが報告されている(16)。上室性頻拍症(心拍数が130/分以上で、連続して上室性期外収縮が10発以上出現と定義されている)を起こす患者の数は抗甲状腺剤治療により、減少することが報告されており、若年者に比べて高齢患者において治療前も治療中も上室性不整脈の頻度が高い(16)。我々が行った予備的な研究(17)は、今までの研究結果を支持するものである。我々は、健常者と比べて未治療の甲状腺亢進症患者において有意な上室性期外収縮(24時間に240発以上の上室性期外収縮が出現したものと定義されている)の頻度が高いことを見つけた。そして抗甲状腺剤治療により甲状腺機能が正常になったにもかかわらず、3ヶ月間は有意な上室性期外収縮がみられた。このことは、不整脈を引き起こす誘因がまだ存在していることを示している。
心室に対する甲状腺ホルモンの効果
上室性不整脈と対照的に、心室性不整脈は甲状腺機能亢進症ではそれほど多くなく、一般人でみられる頻度と同じである(16,17)。さらに、甲状腺機能亢進症患者において心室性不整脈の頻度は、抗甲状腺剤で治療しても頻度は変わらない(16)。甲状腺機能亢進症において、心室性頻拍症と心室細動は例外的であるが、著しい心不全または随伴する心臓病、虚血性心疾患を持つ患者でのみ起こることがある(18)
ベータ遮断薬による治療
ベータ遮断薬は、甲状腺機能亢進症患者の甲状腺機能が正常になるまでの短期間、よく使われている。ベータ遮断薬は、動悸などの症状を和らげるために使用される(19)。この薬剤が甲状腺機能亢進症による不整脈の発生予防に役立っているかどうかについて、今まで検討されたことがない;同様に、潜在性甲状腺機能亢進症でのベータ遮断薬の役割は、不明である。一部の研究者は、循環器疾患を持つ潜在性甲状腺機能亢進症患者にのみベータ遮断薬を使用することを推奨している(14)。甲状腺機能亢進症に伴う循環器系合併症と死亡率を減少させるのにベータ遮断薬や他の抗不整脈薬などの治療薬が有用かどうかをはっきりさせるためには、前向き研究が必要である。
心房細動を持つ甲状腺機能亢進症患者に対して、抗凝固療法や電気的除細動を試みるべきか?
甲状腺機能亢進症における心房細動と塞栓症のリスクを検討した研究は、数少ないが(8,10)、甲状腺機能亢進症による心房細動での塞栓症の頻度が、リウマチ性心疾患を伴わない甲状腺機能正常の心房細動での塞栓症の頻度より高いと考えられている(20)。さらに、甲状腺機能亢進症による心房細動での臨床的に明白な塞栓症は脳に起こることが多く、甲状腺機能亢進症が発症して早い時期に最も起こりやすい(20)。これらの所見は、甲状腺機能亢進症の治療を始めて1年以内に脳血管障害による死亡率が高いことと合致したものである(3)

心房細動を持つ甲状腺機能亢進症に対して抗凝固療法を行うことは、一般に推奨されている(19);しかし、心房細動を持つ甲状腺機能亢進症に対して抗凝固療法について検討された研究発表がないので、そのような治療法の危険/利益比率は確立されていない。心房細動を持つ甲状腺機能亢進症患者を短期間または長期間の抗凝固療法により治療するかどうかの決定は、個々の患者のおかれた状況、例えば年齢、随伴するする心臓病、抗凝固療法の危険性を考慮してなされている。抗血小板薬と抗凝固剤は、心房細動により誘発される心原性塞栓症と非心原性塞栓症に異なった影響を及ぼす(21)。アスピリンは心原性塞栓症に対してより、非心原性塞栓症に対して有効である。心原性塞栓症は抗凝固療法によってより効果的に予防されるが、アスピリンが心房細動患者において心原性塞栓症を若干、予防するかもしれない(21)

まれに3ヶ月を越えても自然に正常調律に戻ることもあるが、甲状腺機能亢進症の治療を始めて8〜10週以内に2/3の症例では心房細動が正常調律に自然に戻ることが報告された(22)。したがって、患者が甲状腺機能正常になって3ヶ月を越えても、まだ心房細動が持続している場合、電気的除細動を時期を逸しないで行うことが重要である(22)。心房細動の持続期間の他に電気的除細動を試みるという決定を左右する因子は、随伴する心臓病の有無である。
不整脈発生を左右する細胞レベルでの機序
心筋細胞は、心臓を構成する全細胞の1/3を占める。線維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、他の細胞型が、残り2/3の心臓細胞を占めている。研究結果から、甲状腺ホルモンに反応するタンパク質は主に心筋細胞に存在する。心筋細胞以外の心臓細胞に対する甲状腺ホルモン影響は詳細に研究されていない。

生物学的活性を持つT3が甲状腺ホルモンの作用を発現する。T3は心筋細胞の中に入ると、核に入って、甲状腺ホルモンレセプターに結合し、DNA作用を発現する。T3に応答する遺伝子は、心臓における構造上および調節タンパク質を作る。いくつかの心臓に存在する遺伝子は、転写や転写後のレベルで、甲状腺ホルモンによって調節される【表2】

これらの遺伝子の発現は、特定の心臓収縮収縮能と拡張期の弛緩相において、心臓血管系に重要な影響を及ぼすことが知られている(23,24)。これらの遺伝子のどれが、心筋に不整脈を起こしやすい素因を作るのかは、今のところ分かっていない。細胞膜に存在する特殊なイオン交換酵素(例えばナトリウム-カリウムATPアーゼ、ナトリウム-カルシウム交換、電圧で制御されたカリウム・チャネル(Kv1.5、Kv4.2、Kv4.3)をコード化している遺伝子の表現は、甲状腺ホルモンによって調節される(25)。甲状腺ホルモンは、核T3レセプターへの結合による作用とは別に、心筋細胞の核外にも影響を及ぼし、蛋白合成を増加させる。核外での甲状腺ホルモンの効果は、細胞膜を通過して、アミノ酸、糖、カルシウムの移動に影響を及ぼす(23)。T3は、心臓の収縮力や心拍数と関連している細胞膜に存在するイオン・チャネル(ナトリウム、カリウム、カルシウム)に影響を及ぼす。

抗甲状腺剤治療を開始4〜6週後に、甲状腺機能は正常になってくる。甲状腺機能が正常化したにもかかわらず、血管系に起因する死亡が増加する原因は、細胞に対する甲状腺ホルモンの効果が残っていることに関係しているかもしれない点に注目した。甲状腺ホルモンによる特殊遺伝子の活性化や転写の導入は、特殊遺伝子の不活化と異なっており、特殊遺伝子の不活化はより多くの時間を要するという証拠がある(25)。特に、心房の電気的な再構築のために、細胞不整脈を起こしやすい素因が続いているのかもしれない。
心房と心室での潜在的な細胞の相違点
心房と心室で起こる不整脈の頻度の差は、甲状腺ホルモンの効果に心房と心室で感受性の差があるためかもしれない。Golfら(26)は、右心房ではベータアドレナリンの結合能が、左室のベータアドレナリンの結合能の2倍であると報告した。これらの研究結果は、動物実験での研究から心房でのノルアドレナリンの代謝が心室と比べると著明に早いという結果と一致する所見である。さらに、心臓組織には、ベータ1とベータ2アドレナリンレセプターが存在していることは知られている。Stilesらの研究(27)から、右心房ではアドレナリンレセプターの約26%がベータ2アドレナリンレセプターであり、左心室では約14%がベータ2アドレナリンレセプターであることがわかった。ベータ2アドレナリンレセプターの発現における甲状腺ホルモンの効果は、電気刺激と伝達であるので、不整脈を起こしやすい素因に影響を及ぼす。さまざまな電圧制御されたカリウム・チャネル(特にKv1.5)の発現が、心室と比較して心房で30%高いことがわかっている。この事実から心房と心室での不整脈の発生頻度の違いを説明することができるかもしれない。
自律神経系に対する甲状腺機能の影響
甲状腺機能亢進症患者の中のいくつかの自覚症状と他覚症状は、自律神経系の異常を思わせる。迷走神経<注釈:副交感神経>と交感神経性の神経支配における変化は、不整脈が発生しやすい交感神経系の過敏な領域で、不整脈の発生に影響する可能性がある。自律神経系に対する甲状腺ホルモンの効果は長年研究されてきたけれど、この関連性については未だに解決していない。甲状腺機能亢進症では、アドレナリン作用が高く、迷走神経作用が低いであろうと考えられてきたが、甲状腺機能亢進症では血中カテコールアミン濃度は正常であるか、減少していた(18)。この矛盾を説明するために、ある研究者は甲状腺ホルモンとカテコールアミンの分子式が類似しているので、甲状腺ホルモンとカテコールアミンが同様の効果を発揮することができると説明した(28)。カテコールアミンに対する組織感受性の増加、二次的なベータアドレナリンレセプターの増加、副交感神経の減少(29)は、可能な説明として提唱された。

心拍数変動は、右心房洞結節における自律神経の活動性を評価するのに有用で、非侵襲的な検査である。Cacciatoriら(30)は、甲状腺中毒症患者を抗甲状腺剤で治療した後に、減少した副交感神経の活動性が正常に戻ったことを報告した記載した。これらの所見はKollaiとKollaiの研究結果(31)と同じであった。彼らは、甲状腺機能亢進症患者において圧受容体刺激に対して迷走神経の運動ニューロンの興奮性低下があることを見つけた。そして、迷走神経の活動性低下は圧受容体の再編成の結果であるかもしれないと考えた。一方、Pitzalisら(32)は、迷走神経の活動性(上記の研究と同じ方法で評価した)が甲状腺機能亢進症患者において正常者と比べて変わりがないことを報告した。我々のデータ(17)から、甲状腺機能亢進症患者において甲状腺機能が正常に戻ったにもかかわらず、心拍数変動の低下(迷走神経の活動性低下)はそのまま続いていることが分かった。甲状腺機能低下患者において行われた研究から、心拍の正常間隔変動が有意に減少していることが分かっている。そして、甲状腺機能低下症を治療することで減少した副交感神経の機能が元に戻った(33)

結 論
甲状腺機能亢進症は、主に心血管系に対して影響を与える。そして、これらの多くの影響は抗甲状腺剤治療で元に戻る。この理由のために、甲状腺機能亢進症は良性疾患として認識されてきた。しかし、顕性および潜在性甲状腺機能亢進症の長期追跡調査で血管系による死亡率が増加していることが分かった。不整脈(特に上室性)は、心血管系や脳血管系による死亡の増加に関与しているかもしれない。甲状腺ホルモンは、心筋に直接的および間接的な影響を及ぼすこと、自律神経系に影響を及ぼすこと、そして多くの不整脈の素因を作ることが知られている。通常の心電図と24時間ホルター心電図(自律神経機能の非侵襲的な検査としての心拍数変動分析も同時に行われる)は、その危険性を見つけるのに有用かもしれない。抗血小板薬、抗血栓薬、抗不整脈薬などの治療が有用かどうかは、将来の治療試験で確立されるまで待たなければならない。これらの患者に対して多くの専門が協力して管理していく場合、特に内分泌専門医と心臓専門医の強力は非常に重要である。

. Dr.Tajiri's comment . .
. 今回の詳しい情報は、後半の部分が難解であったと思います。どうも生理学や分子生物学の話になるとチンプンカンプン状態になります。それでも、一応、お勉強しなくてはならないので大変です。

バセドウ病の場合、不整脈といえば心房細動が有名です。バセドウ病の治療をすれば7割は、心房細動は消失します。しかし、3割はそのまま心房細動が残ります。この人たちを放置していたら、どのようになるかは分かっていなかったのですが、わたしたちが野口病院でアンケート調査を行いましたところ、約1割(9.6%)の方が塞栓症を起こしていました。大部分は脳塞栓です。性、年令をマッチさせた心房細動のないバセドウ病患者1,096人の塞栓症の頻度(1.5%)と比べて有意に高いものでした。これは、重大な問題であり、生命の危険もありますので、心房細動が続いているバセドウ病患者に対して、積極的に治療を行いました。心臓病の時にみられる心房細動と違い、治療によく反応しました。心房細動がなくなれば、ワーファリンなどの抗凝固剤を中止できますので、患者さんにとっては好都合です。甲状腺専門医と循環器専門医が連携をとって治療にあたるべきです。
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参考文献]・[もどる