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[017]
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重要な甲状腺機能低下症の研究に対する米国内分泌学会のコメント

報道関係者への声明文
  米国内分泌学会の声明論文
  質問と答え

報道関係者への声明文

妊婦は胎児の知能障害を予防するために甲状腺機能検査を受けるべきである
ベセスダ、MD、8月18日、1999年:米国内分泌学会は本日、妊娠中に甲状腺機能低下症を治療しなかった母親から生まれた子供は知能障害を起こすというNew Englang Journal of Medicineに掲載された論文の結果に基づいてすべての妊婦に対して甲状腺機能のスクリーニングを行うことの経済的な問題について発表をした。

血液研究財団のJames Haddow医師がデザインした研究が8月18日付けのNew Englang Journal of Medicine誌に掲載された。その研究から、軽度でも妊娠中に甲状腺機能低下症があり治療しないと胎児の脳にダメージを与え、学童期の知能などに影響を及ぼすということが分かった。

米国内分泌学会会長のJ Lary Jameson博士は、この論文を読んだ後で「この報告は母親と胎児の治療を十分行うためには妊娠初期か妊娠前に、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を調べるべきである」という声明文を本日出しました<注釈:甲状腺機能検査はTSHの値をみるだけで分かります>。

「甲状腺機能低下症の症状は特徴的でありませんので、妊娠のために症状が分かりにくくなっている可能性があります。血液検査は診断を付けるのに一番いい方法です。母親の甲状腺機能低下症は胎児に影響を与える治療可能な状況のリストの追加すべきであると考える」とJ Lary Jameson博士は話している。

Jameson博士は今回の研究の成果は過去の数少ない研究結果と一致すると述べています。今回の研究では、未治療の甲状腺機能低下症の母親から生まれた子供は、出産時は甲状腺機能は正常だが、学童期に知的障害を来してくることを示している。こういう状態で生まれてきた7〜9歳の子供に対して行われた15の詳しい検査では、未治療の甲状腺機能低下症の母親から生まれた子供はほかの子供と比べて劣っていることが分かった。

Jameson博士は「いつ甲状腺機能検査のスクリーニングをするのか、どのような甲状腺機能検査をするのか、母親の甲状腺機能低下症の診断基準、治療のガイドラインと費用について決めるために、さらに検討が必要である」と話しています。

「現状では、本人および家族の甲状腺疾患の既往歴を持つ女性、甲状腺機能低下症の症状のある女性は、妊娠を計画している場合や妊娠できるだけ早期に、TSHを調べるべきである。」とJameson博士は付け加えています。

Haddow医師の研究チームは、1987年から1990年まで出産した25,216人の妊婦の中から血液を調べ、甲状腺機能低下症の診断を付けた。彼らは妊娠中に62人が甲状腺機能低下症であったことを突きとめた。研究時に子供は7〜9歳になっていた。彼らが、母親のおなかにいるときに母親の甲状腺機能低下症の神経学的および心理学的な影響を受けたかどうかを調べるために、検査を受けてもらった。結果は甲状腺機能が正常な妊婦から生まれた子供の検査結果と比較した。甲状腺機能低下症の母親から生まれた子供はすべての検査において劣っていた。

米国内分泌学会は80以上の国の10,000人以上の科学者や医師から成り立っています。この学会はホルモンや内分泌の臨床的な問題を扱う世界で一番大きくて、活動している団体です。甲状腺機能低下症を持つ患者は、普通、内分泌専門医に紹介されます。彼らは甲状腺機能低下症の検査や治療に必要な特別の訓練や経験を積んだ医師です。

米国内分泌学会は、本日以下のコメントを発表しました。
  • 妊娠前および妊娠早期に甲状腺機能検査をスクリーニングすることに対する費用効率について。いつ甲状腺機能検査のスクリーニングをするのか、どのような甲状腺機能検査をするのか、母親の甲状腺機能低下症の診断基準、治療のガイドラインと費用について決めるために、さらに検討が必要であろう。
  • 現状では、本人および家族の甲状腺疾患の既往歴を持つ女性、甲状腺機能低下症の症状のある女性は、妊娠を計画している場合や妊娠できるだけ早期に、TSHを調べるべきである。
  • 妊娠中に甲状腺機能低下症であることが分かった妊婦は、胎児への甲状腺ホルモンの供給をするために、早急に甲状腺ホルモン剤による治療を開始すべきである。
  • 妊娠中には甲状腺ホルモンの必要量は25〜50%増えます。従って、甲状腺機能低下症の診断が付いている妊婦は妊娠中は甲状腺機能をチェックしなければなりません。そして、甲状腺機能を正常に保つように甲状腺ホルモン剤を調整する必要があります。
Jameson博士は「甲状腺機能低下症は比較的よくみられる病気です」と言っています。妊娠可能年令の女性では、100人に1人の頻度でみられます。もし100人に1人の頻度で甲状腺機能低下症がみられるのなら、1,000人の妊婦をスクリーニングする毎に、母親が甲状腺機能低下症と診断されていないか治療を受けていないときIQが著しく低下するであろう2人の子供を救うことができることをこの新しい研究は示していると、彼は指摘しています。

Jameson博士はNorthwestern大学医学部内分泌代謝、分子生物学の教授です。彼の専門は甲状腺と生殖腺(甲状腺ホルモン作用のメカニズム、甲状腺、脳下垂体、生殖腺の病気)の分子生物学です。

米国内分泌学会の声明論文

妊娠中の母親の甲状腺ホルモンの欠乏:子供の認識力の発達との関連について
妊娠中の母親の甲状腺機能低下症が胎児の発達に影響を与えるかどうかについては意見が一致していない。1999年8月18日付けのNew Englang Journal of Medicine誌に掲載されたJames Haddow医師らの研究は、妊婦の甲状腺機能低下症は子供の発達に悪影響を与えると報告している。米国内分泌学会はこの研究は、妊娠前、妊娠中の甲状腺疾患の管理に重要な意味を持つと信じている。

Haddow医師の研究チームは、1987年から1990年まで出産した25,216人の妊婦の中から血液を調べ、甲状腺機能低下症の診断を付けた。彼らは妊娠中に62人が甲状腺機能低下症であったことを突きとめた。研究時に子供は7〜9歳になっていた。彼らが、母親のおなかにいるときに母親の甲状腺機能低下症の神経学的および心理学的な影響を受けたかどうかを調べるために、検査を受けてもらった。結果は甲状腺機能が正常な妊婦から生まれた子供の検査結果と比較した。

妊娠中に甲状腺機能低下症であった母親から生まれた子供はすべての検査において劣っていた。甲状腺機能が正常の母親から生まれた子供と比較して、彼らのIQは平均4ポイント低かった。もっとも大きなIQの差が出たのは、妊娠中に甲状腺ホルモン治療を受けていなかった母親から生まれた子供である(IQは平均7ポイント低かった)。妊娠中に甲状腺ホルモン治療を受けていなかった母親から生まれた子供では、IQが85以下の比率が19%であるのに対し、甲状腺機能が正常の母親から生まれた子供ではIQが85以下の比率は5%であった。この研究は過去のいくつかの研究を支持するものである。今回の研究から、妊娠中の未治療甲状腺機能低下症は胎児の脳の発達に悪影響を与えることが示唆された。

甲状腺機能低下症は比較的よくみられる病気で、妊娠可能年令の女性では、100人に1人の頻度でみられます。年令が増すにつれて、頻度が高くなる。甲状腺機能低下症があれば、もっと年を取るまで妊娠を延期する女性が多いことは注目に値することである。妊娠初期には胎児は自分で甲状腺ホルモンを作ることができません。故に、妊娠中期になるまでは胎盤を通して母親から胎児に甲状腺ホルモンが補給されねばなりません。妊娠中の母親の甲状腺ホルモン欠乏の結果は重大な意味を持ち、非可逆性です。

理想的には、母親と胎児が十分な治療を受けるために、甲状腺機能低下症は妊娠前か妊娠初期に見つけるべきである。甲状腺機能低下症お症状や徴候は非特異的であり(例えば、疲労感、髪の毛が粗くなり抜けやすくなる、体重増加、便秘、生理不順など)、妊娠の症状で分かりにくくなるために、血液検査が一番信頼のおける診断方法です。母親の甲状腺機能低下症は胎児の発達に影響を与えるが治療により予防ができる病気(例えば、葉酸欠乏症、血液型不適合、妊娠糖尿病)のリストに追加することが適当と思われる。
  • 妊娠前および妊娠早期に甲状腺機能検査をスクリーニングすることに対する費用効率について。いつ甲状腺機能検査のスクリーニングをするのか、どのような甲状腺機能検査をするのか、母親の甲状腺機能低下症の診断基準、治療のガイドラインと費用について決めるために、さらに検討が必要であろう。
  • 現状では、本人および家族の甲状腺疾患の既往歴を持つ女性、甲状腺機能低下症の症状のある女性は、妊娠を計画している場合や妊娠できるだけ早期に、TSHを調べるべきである。
  • 妊娠中に甲状腺機能低下症であることが分かった妊婦は、胎児への甲状腺ホルモンの供給をするために、早急に甲状腺ホルモン剤による治療を開始すべきである。
  • 妊娠中には甲状腺ホルモンの必要量は25〜50%増えます。従って、甲状腺機能低下症の診断が付いている妊婦は妊娠中は甲状腺機能をチェックしなければなりません。そして、甲状腺機能を正常に保つように甲状腺ホルモン剤を調整する必要があります。
甲状腺機能低下症を持つ患者は、普通、内分泌専門医に紹介されます。彼らは甲状腺機能低下症の検査や治療に必要な特別の訓練や経験を積んだ医師です。

米国内分泌学会は80以上の国の10,000人以上の科学者や医師から成り立っています。この学会はホルモンや内分泌の臨床的な問題を扱う世界で一番大きくて、活動している団体です。患者教育団体やホルモン財団と伴に、米国内分泌学会は母親の甲状腺機能低下症に対する治療やスクリーニングの費用効率についても関わり合いを持っていききます。そして、この研究成果を一般住民に知らせ、教育するために情報を提供していきます。

質問と答え

甲状腺機能低下症に関する一般的な質問とその答え
[01] [質 問] 甲状腺機能低下症とは何ですか?
  [回 答] 首に位置する甲状腺という臓器が体の要求通りに甲状腺ホルモンが作れなくなった状態です。甲状腺機能低下症は活動の落ちた甲状腺という表現で説明されます。
[02] [質 問] 甲状腺機能低下症の原因は何ですか?
  [回 答] ほとんどの甲状腺機能低下症は自己免疫によって引き起こされます。この状態では、免疫機序は間違った認識をして、抗体が甲状腺を攻撃します。この病気の過程はゆっくりしています。常に甲状腺のあたりに違和感があるわけではありませんが、甲状腺の大きさが大きくなったり、縮んだりします。自己免疫機序は甲状腺内に限られています。従って、甲状腺ホルモン剤(l-サイロキシンと呼ばれています)の治療により、甲状腺の働きは元通りになります。甲状腺機能低下症の他の重要な原因は甲状腺機能亢進症(活発すぎる甲状腺)の治療後です。甲状腺機能亢進症の治療後数年経ってから、甲状腺機能低下症になることがあります。
[03] [質 問] 甲状腺機能低下症の頻度は?
  [回 答] 甲状腺機能低下症は比較的よくみられる病気です。妊娠可能年令の女性の100人に1〜3人の頻度です。男性より女性の方が多く、年令と伴に頻度が増していきます。高齢女性では、甲状腺機能低下症は5〜10%みられます。
[04] [質 問] 甲状腺機能低下症の症状は?
  [回 答] 甲状腺機能低下症は代謝のスピードを落とし、すべての体の臓器に影響を与えます。症状としては、全身倦怠感、体重増加、パサパサの髪、乾燥肌、すぐ割れる脆い爪、便秘、生理不順、筋肉痛、徐脈などです。自分の行動の変化に気づくかもしれません、例えば集中力の低下、読書や計算が遅くなったなどです。また、他人との交際や仕事にも興味がなくなってきているかもしれません。甲状腺機能低下症はうつ病を悪化させるかもしれません。
[05] [質 問] 甲状腺機能低下症の検査はどのようなものですか?
  [回 答] 血液検査です。甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測ります。
[06] [質 問] 甲状腺機能検査の解釈を教えてください?
  [回 答] TSH値の増加は甲状腺機能低下の大変敏感な指標です。おうちのサーモスタットのように、甲状腺ホルモンが不足したときに、TSH(暖房)のスイッチが入って、甲状腺を刺激し始めます。甲状腺ホルモンが長期間低下していると、TSH値は高いままです。このように、甲状腺機能低下症の場合には、高いTSH値と低いか正常下限の甲状腺ホルモン値(甲状腺ホルモンの正常値は各人で少しずつ違います)を特徴とします。主治医が甲状腺機能検査の結果を解釈するのに助けてくれるかもしれませんし、あなたが望めば、内分泌専門医に紹介してくれます。
[07] [質 問] 甲状腺機能低下症の治療は?副作用はありますか?
  [回 答] 不足した甲状腺ホルモンを補うためにL-サイロキシンという甲状腺ホルモン剤<注釈:日本ではチラージンS>を飲みます。ある製剤では、もう一つの甲状腺ホルモンであるトリヨードサイロニン(L-T3)<注釈:日本ではチロナミン>が含まれています。これらの甲状腺ホルモン剤は、あなたの甲状腺で作られる甲状腺ホルモンと全く同じものです。従って、適正な量が投与されて代謝を元通りにできていれば、副作用はありません。クスリは錠剤の形で、一日一回で飲みます。もちろん、甲状腺ホルモン剤をの飲み過ぎれば、代謝が速くなって、頻脈、不整脈、骨からカルシウムが失われます。しかし、血液を採って甲状腺機能を正常に保っていれば、クスリの効きすぎはほとんど起こりません。
[08] [質 問] 甲状腺機能低下症は治るのですか?
  [回 答] 甲状腺機能低下症の基礎疾患(自己免疫性甲状腺炎)は、治りません。しかし、甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモン剤を飲むことで治療できます。甲状腺ホルモン剤の投与量は体の代謝を正常にするように調節します。服用している甲状腺ホルモン剤の量が適正であることを確認するために、最低、年に一回、必要ならそれ以上、甲状腺機能検査を受けるべきです。
[09] [質 問] 一生涯、甲状腺ホルモン剤を飲む必要がありますか?
  [回 答] 多分、一生涯、甲状腺ホルモン剤を飲む必要があります。
[10] [質 問] 甲状腺機能低下症のために生活のスタイルを変える必要がありますか?
  [回 答] 甲状腺ホルモン剤を毎日服用する以外、日常の生活を変えることはありません。
[11] [質 問] 甲状腺機能低下症を防ぐ方法はありますか?
  [回 答] ヨード不足が甲状腺機能低下症の原因になりますが、北米ではヨードは十分に摂取されていますのでヨード不足はほとんどみられません。それ以外の甲状腺機能低下症は予防はできません。
[12] [質 問] 甲状腺機能低下症は遺伝するのですか?
  [回 答] 甲状腺機能低下症は家族内に集積する傾向にあります。あなたの家族に甲状腺機能低下症か甲状腺機能亢進症の人がいるのなら、将来あなたがそのような病気になる可能性があります。
[13] [質 問] バセドウ病と診断され、アイソトープ治療を受けました。甲状腺機能低下症になる可能性はありますか?
  [回 答] はい。多くの場合、アイソトープ治療を受けた50%の人が、また抗甲状腺剤で治療を受けた人も甲状腺機能低下症になる可能性がありますので、年に一回は甲状腺機能検査を受けるべきです。

妊婦の甲状腺機能低下症に関する一般的な質問とその答え
[01] [質 問] 甲状腺機能低下症で治療中です。妊娠中は甲状腺ホルモン剤の飲む量を変える必要がありますか?
  [回 答] 妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量は、平均して約25%増えます。故に、妊娠中は甲状腺機能検査を受けるべきです。そして、血清TSHは正常をそれも正常下限を保つように、甲状腺ホルモン剤を調整するべきです。
[02] [質 問] 妊娠を計画しています。甲状腺機能低下症の検査を受けるべきでしょうか?
  [回 答] もし甲状腺機能低下症の症状があるか、甲状腺疾患の家族歴があるのなら、甲状腺機能検査は価値があります。もし、甲状腺機能低下症について関心や疑問があれば、医師に尋ねてください。
[03] [質 問] 現在、妊娠しています。産科医に甲状腺機能低下症の検査をしてもらうように頼むべきですか?
  [回 答] 現時点では、妊婦に全員、甲状腺機能検査をすることは行われていません。しかし、主治医と症状や心配事について話し合うべきです。また、甲状腺疾患の既往や家族歴があれば話すべきです。最近の研究では、妊娠初期の甲状腺機能低下症の診断と治療は、赤ちゃんの発達にとって有益であることが分かっています。
[04] [質 問] いつも疲れた感じがします。それは、単に妊娠のためだけではないように思います。はっきりさせるためには、どうしたら良いですか?
  [回 答] もしあなたが疲労感以外に前に述べたような症状があるのなら、主治医に甲状腺機能検査をしてもらうように頼みなさい。
[05] [質 問] 治療は胎児にどのような影響を与えますか?
  [回 答] 甲状腺ホルモンはあなたの健康や胎児の発達に重要な役割をします。甲状腺ホルモン剤の治療は、あなたにとっても胎児にとっても必要であり、安全なものです。
[06] [質 問] 何故、甲状腺機能低下症は胎児に悪影響を与えるのですか?
  [回 答] 母親の甲状腺ホルモンの一部は、胎児が甲状腺ホルモンを自分で作り始めるまでは、胎盤を通過し胎児に甲状腺ホルモンを与えています。母親の甲状腺ホルモンが胎児の初期の発達、特に脳の発達に重要な役割を果たしているという証拠が見つかってきています。
[07] [質 問] 出産前に胎児のための検査を受ける必要がありますか?出産時に、どのような検査を受ければよいのでしょうか?
  [回 答] 通常、妊娠に問題がないのなら、出産前に胎児は検査を受ける必要はありません。このことについては、あなたの産科医とよくご相談ください。米国やカナダでは、全ての新生児は新生児スクリーニングによって甲状腺機能はチェックされます<注釈:日本も同じです>。この検査は退院前に行われます。しかしながら、小児科医にあなたが甲状腺機能低下症を持っていることは、話しておくべきです。小児科医は産後に、赤ちゃんのもう少し詳しい甲状腺検査をするかどうかを決めます。
[08] [質 問] 甲状腺ホルモン剤を飲んでいますが、授乳してもいいですか?
  [回 答] 大丈夫です。ほんの少量の甲状腺ホルモン剤が乳汁中に出ますが、赤ちゃんには何の問題もありません。しかし、他のクスリを飲んでいる場合は、授乳していいかどうかを主治医にお聞きください。
[09] [質 問] 甲状腺ホルモンは、今飲んでいるクスリや栄養食品に影響を与えますか?
  [回 答] 一般的に食事制限は必要ありませんし、どんな薬剤とも相互作用を起こしません。唯一の例外は鉄剤です。鉄剤は甲状腺ホルモン剤の吸収を阻害します。もし、鉄剤を飲んでいるのなら、甲状腺ホルモン剤とは違う時間に飲んでください。そして、甲状腺機能が正常であることを確認するために、血液を採取して甲状腺ホルモンを調べてもらってください。いつも主治医に飲んでいるクスリを話してください。
[10] [質 問] 甲状腺ホルモン剤は妊娠に影響を与えますか?
  [回 答] 甲状腺ホルモン剤は妊娠に影響を与えません。甲状腺機能低下症の人は、甲状腺ホルモン剤の治療で不妊が解消されます。
[11] [質 問] わたしはバセドウ病と診断され、放射性ヨード治療を受けました。甲状腺機能低下症になりやすいですか?
  [回 答] はい。放射性ヨード治療を受けた約50%の人が甲状腺機能低下症になります。また、抗甲状腺剤で治療を受けた人も、甲状腺機能低下症になることがあります。ですから、このような人たちは年一回は、甲状腺機能の検査を受けるべきです。
[12] [質 問] わたしは以前、バセドウ病でした。バセドウ病に対するアイソトープ治療は妊娠能力に影響を与えますか?妊娠に悪影響を与えるのでしょうか?
  [回 答] アイソトープ治療による卵巣への放射能の被爆は微々たるものです。妊娠前にアイソトープ治療を受けた妊婦で、奇形を生む頻度が増えたという証拠はありません。しかし、ほとんどの医師はアイソトープ治療後、最低6ヶ月間、妊娠を控えるように勧めます。妊娠中のアイソトープ治療は胎児の甲状腺機能に影響を与えます。アイソトープ治療前に、必ず妊娠していないことを確認すべきです。

新生児甲状腺機能低下症に関する一般的な質問とその答え
[01] [質 問] クレチン病とは何ですか?
  [回 答] クレチン病は、甲状腺の発達異常やヨード不足で甲状腺機能低下症になっているにもかかわらず、赤ちゃんが治療を受けないために重症の甲状腺機能低下症になっている状態を言います。もし、そのまま治療を受けなければ、将来知能障害や身体的発達遅延を来します。
[02] [質 問] 新生児の甲状腺機能低下症の治療はどのようにするのですか?
  [回 答] 世界中のほとんどの国では、食塩やパンにヨードを添加することで、クレチン病は予防できます。新生児期に甲状腺機能低下症が見つかったら、甲状腺ホルモン剤で治療すべきです。甲状腺ホルモン剤はつぶしてミルクの中に混ぜて飲ませます。産後すぐに治療を開始すれば、知能の発達は普通の子と同じです。
[03] [質 問] わたしが妊娠中に甲状腺機能低下症であれば、赤ちゃんはクレチン病になりますか?
  [回 答] 母親の甲状腺機能低下症はクレチン病の原因にはなりません。しかし、赤ちゃんの軽度の知能障害を予防するために甲状腺ホルモン剤で治療は受けるべきです。

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