コミュニケーション > 公開コーナー結節性甲状腺腫・甲状腺がん
182

No.182 男・49歳
現在英国に勤務している49歳の男性です。
1ケ月ほど前首の付け根にしこりがあるのに気付き、超音波検査、細胞診(Fine needle aspiration)を行い、結果として、Papillary carcinoma of thyroid(甲状腺乳頭癌)の診断を受け、10月17日に甲状腺全摘出の手術を受けました。
腫瘍の大きさは、3.0cm×3.5cmでした。
その後、英国の医師から、転移があった場合に備えてヨードアイソトープ(放射性ヨード;131-I)服用による治療(アイソトープ治療)を薦められています。
この事情を、日本で医者をやっている友人2人に別々にアドバイスを求めたところ、結果、両人共、甲状腺癌は進行が遅く、日本では一般的にヨードアイソトープ服用治療はやらないので、服用治療をやるとしても日本に帰ってから決めても遅くはないのではないかというものでした(半年後には日本に帰っている予定)。
一方、英国の医師からは、ヨードアイソトープ服用治療は、術後4週間程度のホルモン治療をやる前のホルモンレベルが下がった時点で実施しないと効果がなく、転移があった場合ホルモン服用で癌細胞が活性化してしまうとも言われています。
これからヨードアイソトープ服用治療をやるかどうかの話を、放射線科の医師をしていくことになっていますが、英国でヨードアイソトープ服用治療をやるべきかどうか迷っています。
アドバイスがあれば教えてください。
また、ヨードアイソトープ服用治療の副作用および治療が体に大きな負担になるものかどうかも教えてください。
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Oyaji's reply
  1. 折角、甲状腺全摘術を受けたのなら、131-I治療(アイソトープ治療)を受けるべきでしょう。何故かというと、治療に加えて全身の転移(ほとんどが肺か骨)の有無がわかります。小さな転移は甲状腺全摘していないとアイソトープが甲状腺に取り込まれるために、分かりにくいのです。日本では、一般的には甲状腺癌に対しては、亜全摘術(癌の反対側の甲状腺組織をほんの少し残す手術)が主流です。この場合は、術後の131-I治療(アイソトープ治療)は行いません。しかし、術前に肺や骨に遠隔転移していれば、話しは別です。日本でも甲状腺全摘術を行い、術後に131-I治療(アイソトープ治療)を行います。欧米では、甲状腺癌にたいして、全摘術をする場合が多いです。術後サイログロブリンという甲状腺でできる蛋白をみることで、再発の有無を知る上で有用だからです。分化型甲状腺癌(あなたのような乳頭癌や濾胞癌のこと)はサイログロブリンを作るので、再発するとこの蛋白が増えてきます。血液だけで分かり簡単ですので、欧米では甲状腺全摘を好んでやるのです。

  2. 131-I治療(アイソトープ治療)の副作用はほとんどありません。時々、服用後に吐き気を訴える人がいるくらいです。取り込みがなければ、尿に直ぐ出ていきますので体に負担をかけることはありません。また、この治療を受けたことで将来、癌や白血病にもなりません。思い切って、131-I治療(アイソトープ治療)を受けてください。わたしは、それを勧めます。日本でやるか今、英国でやるかはどちらでも良いです。慌てる必要はありません。日本に帰ってくるまで甲状腺ホルモン剤を飲んでいればいいわけですから。半年間甲状腺ホルモン剤を飲んだからといって、癌がそんなに大きくなるものでもありません。今か日本に帰ってかは、あなたご自身でお決めください。
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